深くて広い“ギアの世界”に最適解堀越良和の「クラブ選び、もう迷わせません」Vol.7
~ウェッジのグラインド効果について~

Lifestyle

スウィング向上とともに、スコアアップに欠かせない「自分に合ったクラブ選び」。とはいえ、巷には新製品があふれていて、正解にたどり着くのが難しい。また、各メーカーが特長に挙げるクラブ用語についても、一般アマチュアは知っているようで実はあまり知らなかったりする。クラブに精通する堀越良和プロにわかりやすく解説してもらい、「自分に合ったクラブ選び」をマスターしよう。

撮影協力/クレアゴルフフィールド

同じモデルでも複数のソール形状

前々回はウェッジの替え時についてお話ししました。今回は、ウェッジのソールが持つ機能についてお伝えしていきたいと思います。

ウェッジの替え時についての記事はこちらからご覧ください。

スコアメイクの面でウェッジが重要であることはみなさんもおわかりでしょう。しかも、ウェッジを使う頻度は、プロに比べてパーオン率が低い一般のプレーヤーのほうが多いので、そういう方ほどウェッジにシビアになるほうがスコアを減らすことができます。

それでは、ウェッジはどう選べばいいのでしょうか。
各メーカーとも、1つのモデルでソールの形状が異なる数種類のタイプを揃えています。
例えばタイトリストの「ボーケイSM10」には、「Kグラインド」「Fグラインド」「Mグラインド」「Sグラインド」「Dグラインド」「Tグラインド」と6種類のソールデザインが用意されています。

「グラインド」は「磨く」「研磨する」を意味する英語で、ソールがどのように研磨されているかによって、バウンスの形状は変わってきます。大きく分けると、フェースを開かなくてもソール全面で高いバウンス効果を発揮する「フル(ソール)グラインド」。アイアンのようにフルショットがメインのロフトが立ったウェッジに多く、アイアンに近いソール形状です。

そしてもう1つが、ソール後方のトウとヒールが削られ、フェースの開き加減でバウンス効果を調整できる「三日月型」です。フェースを開いてもリーディングエッジが浮きにくく、また、バウンスが少なめでも開くことで適度にバウンスがつくというメリットもあります。

そこからさらに「砂が硬いバンカー」用、「柔らかいバンカー」用といった具合に細分化されていきます。

同じモデルでも、使い方や使う状況に応じた複数のソール形状がある

上達するとバウンスが合わなくなることも

私の考えでは「バウンス=お助け機能」。そのお助け機能をソールのどこにつけるかはグラインド次第です。

バウンスの頂点がリーディングエッジ寄りにあるのか、真ん中なのか、トレーリングエッジ側なのか。そして、あなたにはどのタイプのグラインドが合っているのか。

バウンス角の数字も大事ですが、バウンスがどこにあるかによって、使い方や使う状況も変わってくるのです。

グラインドによって、バウンスの頂点がどこにあるかが決まる

私のスクールの生徒さんが以前、フィッティングを受けたことがあります。その方は、かなり昔から注意しているのですが、どうしてもクラブが鋭角に入ってくるクセがありました。
入射角が鋭角だとバウンスを殺してしまうので、フィッティングではバウンス角がもっとも多い14度のモデルを、ロフトを1度寝かせてバウンスを15度に増やすことを勧められました。

その後もレッスンを続けるうちに、その方は上達していきます。
そして先日、再びフィッティングを行う機会があったのですが、入射角が以前よりもすごく穏やかになっていたのです。なので、フィッターに「15度ではちょっと多いんじゃないですか」と指摘されていました。

「下手=入射角が多い」「上手=入射角が緩やか(少ない)」ではないにしても、実際に入射角は緩やかなほうがミスは少なくなります。
なので、今はそのバウンスが合っているかもしれませんが、もしかしたら1年、2年練習をしていくうちに入射角が変わってくることがあるのです。

上達するにつれて、入射角は穏やかになってくる傾向があります。するといろいろな球筋がコントロールできるようになるし、アプローチの引き出しが多くなってきます。
ところが、入射角が緩やかになってきているのにバウンスが多すぎるウェッジをそのまま使っていると、球が強くなって思ったよりも飛んでしまうことが起こります。

このように「合う・合わない」の基準は変わるので、いま使っているバウンスは「一生モノ」というわけではありません。
なので、2年に1回くらいはグラインドとバウンスを見直してみるといいと思います。

ドライバーと違い、ウェッジのように小さなスウィングでは入射角が変わりやすい

「ハイバウンス=ウェッジが苦手な人向け」ではない

「ハイバウンス=ウェッジが苦手な人向けのお助けクラブ」というイメージを持っている方もいると思いますが、こんな例がありました。バンカーが苦手な方がフィッティングを受けたところ、上手に脱出できないのはヘッドが砂に潜りすぎているからだと判明しました。一般的に考えれば、ヘッドが潜りにくいハイバウンスのウェッジを使うのでしょうが、バウンスを変えるのではなく、シャフトを半インチから1インチ短くすることで潜りすぎが改善する方もいるのです。

また、私が見る限り、とくに女性に多いのですが、アマチュアの6割がインパクトでハンドレートになっているように思います。そうなるとロフトが寝るので、バウンスが強く地面に当たって跳ね返される。この場合は、先述した「強い球になって飛びすぎる」とは逆に、ボールはポコンと高く上がって、グリーンに届かずショートしてしまうのです。

バウンスのおかげでダフリにはならないので、そういう意味では助けてくれてはいるのですが、この場合はハイバウンスよりもローバウンスのほうが合うことになります。

このように、実に奥が深いのがウェッジのグラインド、バウンス選びです。最近はさまざまなメーカーがウェッジのフィッティングを行っているので、ウェッジワークを重視する方は一度試してみることをお勧めします。

PGAツアーの選手でも、地面やバンカーの硬さに応じて同ロフトのバウンス角(グラインド)違いを使い分けるケースは少なくない

堀越良和(ほりこしよしかず)

某ゴルフ雑誌社で四半世紀にわたり試打企画を行っており、「キング・オブ・試打」のニックネームを持つ。ゴルフスウィングと人体に関する研究に特化した世界有数の教育機関である「TPI(タイトリスト・パフォーマンス研究所)」の最高位「ゴルフレベル3」を取得。クラブメーカーの開発に携わった経験もある(公社)日本プロゴルフ協会会員。クレアゴルフフィールド所属。

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