Harmony 2016年3/4月号
バラエティ自動車ジャーナリスト 小沢コージの

ウェルキャブ ここがポイント!

介助を受ける人や高齢者の気持ちに真摯に寄り添い、かゆいところに手が届く開発を手がけてきた中川主査。トヨタ独自開発の車いす「ウェルチェア」など、信念のエンジニアの真骨頂に触れた。

なんとオリジナルの車いす「ウェルチェア」まで開発!

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中川主査のすごさは、いちエンジニアとしての開発能力の高さだけに留まらない。慈愛に満ちた豊かな想像力にある。健常者でありながら、介助を受ける人や高齢者の気持ちに真摯に寄り添い、かゆいところに手が届く開発を手がけてきた。

ウェルキャブ専用の車いす「ウェルチェア」はまさにその真骨頂と言えるだろう。

車載可能な車いすを数々テストしてみたところ、納得できる製品がなく、役員を粘り強く説得して、独自で「ウェルチェア」まで作ってしまったのだ。ある意味、管轄外の開発である。

ポイントは車載に耐える強度や軽量化はもちろん、それまでにない座面の沈み込み機構。一見なんてことないが、小沢も体験してみて違いにビックリした。

通常の車いすだと車両に乗り、左右にちょっと曲がったり、ブレーキを踏んだだけで上半身が大きく揺さぶられる。しかし座面を沈み込ませたウェルチェアならば、背もたれに上半身が固定され、驚くほど安心して座っていられる。これが上半身を支える力の弱いご老人ならば、なおのことだろう。

開発のきっかけは「車いすに乗って出かけたがらないおばあちゃん」の存在。遠慮深いその方は、自分のために車いす仕様車スロープタイプを買ってくれた子ども夫妻の気持ちを考えると、とても口には出せなかったらしいが、「通常の車いすで長距離座って出かけるのがあまりにツラかった」らしい。それを中川さんは自らの多様な体験と想像力で察し、トヨタ独自の車いすの開発につなげた。とはいえ、大きな利益を生み出す商品にはなり得ない。

さらに驚いたのが、昨年7月に発売以来、大人気の新型「シエンタ」。ルーフが高いのは中川さんが「車いすの乗せやすいスロープタイプを作りたくて切望した」から。同様に中川さんはトヨタ車全ラインアップの開発スケジュールを把握し、適切なタイミングで熱心に要望を出すという。予め寸法や設定を指定するだけで驚くほど良質なウェルキャブバージョンが作れるからだ。なんと、「シエンタ」にはコンパクトカー初のストレッチャー仕様まである。まさに心の底から頭が下がる信念のエンジニアである。

ウェルキャブの詳しい情報・お問い合わせは、toyota.jp へ。

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おざわ こーじ◎バラエティ自動車ジャーナリスト。
1966年神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、某自動車メーカーに就職するも半年後に退職。「NAVI」編集部を経て、フリーに。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『ドライブ上達読本』『クルマ界のすごい12人』など多数。