Harmony 2015年5/6月号
開発者に聞く

ALPHARD/VELLFIRE 吉岡憲一
主査

ラージ・ミニバンの最高峰として君臨する「アルファード/ヴェルファイア」が「大空間高級サルーン」として画期的モデルチェンジ。その全貌を、開発者である吉岡憲一主査にインタビュー。

〝ミニバン〟から進化した「大空間高級サルーン」

ついに「アルファード」と「ヴェルファイア」が進化を極めた。これまでもラージ・ミニバンの最高峰として君臨し、その「唯一無二」の質感に惚れ込むファンは多かったが、今回さらに「大空間高級サルーン」として画期的モデルチェンジ。今年1月の発表時に約2万1000台、その後1カ月で約4万2000台という驚異の受注台数を達成した。ファンが待ちに待った“脱皮”の全貌とは──。

文・小沢コージ 写真・小松士郎

高級車の世界が変わりはじめている

本文を読む

小沢:モデルチェンジ発表時からすごい受注台数ですよね。しかも中心価格帯が400万円台の高級車が、でしょう。いやあ、久々にびっくりしました。

吉岡:ありがとうございます。私たちもあまりの反響の大きさに驚いています(笑)。

小沢:そもそも僕自身、世界的なSUVブームも然り、高級車市場が変わりはじめていると感じてはいたんです、ラージ・ミニバンの根強い人気も含めて。そんな折も折、試乗会で吉岡さんの、今やミニバンではなく「室内がとても広い新しい高級車」を目指すべきだという「大空間高級サルーン」宣言を聞いて、やはりトヨタはわかっていたんだなと思いました。

吉岡:私自身、じつは2002年に初代「アルファード」が発売された時に、すぐ購入したくらいですから、当時から魅力は感じていたんです。ただ、ここまで高級車としての可能性を見抜いていたかというと疑問です。やっぱり起点になったのは、10年に2代目「アルファード」の開発担当になってからでしょうね。

小沢:灯台もと暗し(笑)。

吉岡:当時、高級車というとやはり「クラウン」が圧倒的に強くて、法人ユースの台数も一番多かったんです。ところが、統計を取ってみると09年に「アルファード」が「クラウン」の法人販売台数を超えているんですね。それ以降も販売台数を上回る年が続き、法人のお客さまのニーズにマッチしたクルマに成長していったんです。

小沢:ほほう、気がつけば「いつかは『アルファード』」になっていた。

吉岡:ただし、法人のお客さまに限って……ですが。

小沢:ファミリー層の需要はちょっと違うんですか?

吉岡:もちろん、ファミリー層の需要もコアとしては大きいのですが、それ以上に“ショーファー・ドリブン”、つまり運転手は別にいるビジネス・シーンでの需要が増えてきています。

小沢:芸能人とか政治家でも、仕事用に使っている人は多いですもんね。

生まれは日本、育ちはアジア

本文を読む

吉岡:さらに10年に中国への正規導入が決まりまして、その際に現地での使用状況を調べてみて、またまたびっくりするわけですよ。

小沢:はい、はい、あれですよね、香港と中国本土のナンバーをダブルで付けた「アルファード」「ヴェルファイア」が香港から深圳、あるいは上海あたりまでガンガン遠出するという。まさしく飛行機のビジネスクラスみたいな感じの使われ方ですよね。

吉岡:ええ、ダブルライセンスですね。最初は中国本土のお客さまは、「アルファード」「ヴェルファイア」のことをあまりご存じなかったようですが、右ハンドルの大きくて豪華なミニバンがどんどん入ってくるようになると、「あれはなんだ?」と。しかも、香港の超有名アクションスターはじめ、多くのハリウッドの俳優や著名人が乗ってくださっていたので、噂が一気に広がっていったようなんです。

小沢:そりゃ効き目あるわ(笑)。

吉岡:さらにびっくりしたのはインドネシアです。空港に着くと「アルファード」「ヴェルファイア」がズラッと並んでる。町中の高級ショッピングモールみたいなところに行っても、次から次へとこの2車種がモールの駐車場に入ってくる。しかも、運転手付きで。

小沢:なるほど。日本で生まれて、アジアで育った、大きくて快適で豪華な高級車、ヨーロッパでも、一部プレミアムセダンをも超えてますよね。

吉岡:ちなみに、タイでもご好評いただいています。

小沢:それで今回のモデルチェンジでは「脱・ミニバンをやるしかない!」と。具体的にはどう煮詰めていったんですか。

吉岡:香港から中国本土へ渡る機会が2度ほどありまして、ドイツ製の某高級セダンと乗り比べてみたんですが、セダンは乗り心地もいいし、スピードも出るんですが、やっぱり狭いし、長距離となるとちょっと辛いんですね。

小沢:乗り降りも面倒くさいし。

吉岡:特に頭回りの圧迫感がかなりありまして、運転手と後ろに座っている自分の距離が結構近かったりする。つまり「パーソナルな空間」が狭いんです。その点、「アルファード」「ヴェルファイア」は圧倒的に有利ですから、あとは高級サルーン並みの乗り心地や操縦安定性などが両立できれば、新しい世界が切り開けるだろうなと。そうして生まれたのが、「大空間高級サルーン」というキーワードです。

小沢:明快ですね。

吉岡憲一

吉岡憲一(よしおか けんいち)

製品企画本部 主査
1967年生まれ。92年大阪府立大学工学部大学院電気工学科卒業後、トヨタ自動車に入社。「カローラ」「カムリ」など、グローバルモデルの現地調達部品の開発担当をした後、6代目「カムリ」の製品企画、制御システム開発を担当。2010年から「アルファード」「ヴェルファイア」の開発責任者。趣味はスキーと空手とマラソンで、全日本スキー連盟認定指導員、空手道2段指導員の資格をもつ。愛車は初代「アルファード」。

「グランデラックス」の本質

本文を読む

吉岡:ただ、ひとつだけ腑に落ちないことがあったんです。

小沢:と、言いますと?

吉岡:香港だと「ロールス・ロイス」と「ヴェルファイア」が肩を並べて駐車されていたりするわけですよ。ちょっと不思議な光景なんですね。推察するに、いくら高級でも「使い勝手がよくなければ価値がない」ということなのかな、と。たとえば、腕時計の「G-SHOCK」と同じ現象ですよね。

小沢:どんなにカッコよくても、実用性がなかったらダメだと。

吉岡:やっぱり自分が使ってみて、その価値を体感できなかったら高級じゃないよね……と。それが今回キーワードになっている「GRANDELUXE」(グランデラックス)という考え方なんです。大きな、高い、という意味のスペイン語「GRANDE」(グランデ)と、質的なぜいたくを重んじるという考え方を表すフランス語「LUXE」(リュクス)を組み合わせた造語です。

小沢:なるほど、「高級」と「実用」の両立ですね。

吉岡:その通りです。たとえば、子どもを学校に送った後、スーパーに立ち寄ったら駐車場が混んでいる。ようやく見つけたスペースに駐車しようとしたら、車体が大きくてなかなか入れられず、後続車からクラクションを鳴らされて「うわー、しまった!」と、お客さまに冷や汗かかせるようではいけない。だからスイッチひとつでスマートに駐められる駐車支援システム「インテリジェントパーキングアシスト2」を装備しました。

小沢:何度も切り返したり、あたふたするのはたしかにカッコよくない。

吉岡:また、走りの質感も、まずは2列目の乗り心地をしっかり向上させようと。そうすれば、おのずと1列目もよくなりますから。

小沢:それから、何と言っても「エグゼクティブラウンジ」ですよ。あれ本当にすごい。一番高いハイブリッド仕様だとなんと700万円超え! まさに「グランデラックス」。

吉岡:でも、その分ちゃんと設えています。2列目の独立シートは新幹線のグランクラス並みですし。

小沢:おおっ、「もはやクルマには敵なし」の勝利宣言ですね(笑)。

おざわ こーじ◎バラエティ自動車ジャーナリスト。 動画試乗レポートはこちら

アルファード/ヴェルファイアの詳しい情報・お問い合わせはtoyota.jpへ

toyota.jp