Harmony 2016年1/2月号
開発者に聞く

CROWN 秋山 晃
製品企画本部 チーフエンジニア

CROWN 2.0 ATHLETE G-T

遊び心を刺激する大人向け、ちょっとヤンチャな「今こそ『クラウン』」

まさかの “ピンククラウン” や稲妻グリルで世間をあっと言わせた14代目から3年、マイナーチェンジとはいえ、またもや「クラウン」が勝負に打って出た。最大の注目は、今回初投入の2リッター直噴直4ターボ。また、新色「天空(ソラ)」や「茜色(アカネイロ)」などのカラーを用意し、印象的なCMとともに、日本回帰をうたう。斬新な変貌をもってしてなお、「クラウン」はなぜ“日本”にこだわるのか。

文・小沢コージ 写真・小松士郎

「クラウン」のチーフエンジニアが背負う重責と快感

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小沢:初めまして……じゃないですよね。たしか、先代チーフエンジニアの山本卓さん取材の際にお会いしてますよね?

秋山:ええ、山本が14代目「クラウン」のチーフエンジニアをしている時に、私は彼のもとで主査をしていました。実務全般を担当する係ですね。

小沢:しかし山本さん、長かったですよね。3回くらいはインタビューした気がします(笑)。

秋山:山本は11、12、14代を担当しましたからね。私も13代目を担当した寺師茂樹の時に開発チームに加わり、14代目で山本の下で主査、今回のマイナーチェンジでチーフエンジニア、15代目も担当することになりますから、3世代にわたって「クラウン」を担当することになりますね。

小沢:おお、そりゃ長い!

秋山:すでに8年経っちゃいましたねえ(笑)。

小沢:やっぱり、「クラウン」のチーフエンジニアという地位は、トヨタの中でも特別なんですね。独特のプレッシャーってあるんですか?

秋山:あります、それはもちろん。歴代の先達チーフエンジニアから言われるんです。「お前の代で絶対、終わらせるんじゃないぞ」と。徳川幕府は15代目で終わりましたが、私も天下分け目の15代目になるんじゃないかと、プレッシャーがかかりまくっています(笑)。

小沢:あ、歴代チーフエンジニア陣と話す機会がけっこうあるんですね。

秋山:じつは「クラウン」には“王冠会”という、歴代エンジニア陣が1年に1度集う会がありまして、各位に多方面から叱咤激励されます。

小沢:うわぁ、ツラいなあ、それ。名球会の張本(勲)さんや、400勝投手の金田(正一)さんに、「喝!」とか言われるようなもんでしょう? そうとう根性ないと務まりませんね。

秋山:どうやら周囲はそう評価しているようですね。私自身は繊細でナイーブな人間だと思っているんですが(笑)。

バブル世代に向けた「メイド・イン・ジャパン」戦略

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小沢:ところで本題のマイナーチェンジ版14代目「クラウン」ですが、3年前にかなり大胆に変えたと思うんですよ。アスリートシリーズに物凄い稲妻グリルを入れて、限定色ですけれど“ピンククラウン”まで投入して。ぶっちゃけ、成功だったんでしょうか? 山本さんは当時、「“ゼロクラウン”に勝ちたい」と言ってましたが。

秋山:成功と言っていいでしょう。実際、かなり売れたと思います。

小沢:“ゼロクラウン”は超えましたか?

秋山:そこは難しいですね。“ゼロクラウン”発売当時は景気がよかったですから。しかし、“ゼロクラウン”の時に比べてラージセダンの市場が6〜7割なのに、1年目に月販約6000台、2年目が4000台弱、現在も約3000台ですから、大成功だと思います。

小沢:とはいえ、ですよ。僕は今後、日本の高級車ってさらに厳しい状況に追い込まれると思うんですよ。輸入車がどんどん増えてるし、「レクサス」に加えて、高級ラージミニバンの「アルファード」と「ヴェルファイア」も人気ですよね。そんな中、トヨタ伝統の「クラウン」はどういうポジショニングで攻めるのかと。

秋山:ひとことで言えば、「日本専用開発」でしょうか。じつは前回のモデルチェンジは、購買層の若返りを狙ったんですが、意外とうまく行かなかった。それまでアスリートシリーズの購入年齢中央値は56歳だったんですが、逆に人気が出すぎて、ロイヤルシリーズの主要購買層である60代のお客さまの買い替えが進んだ結果、59歳になったんですよ。

小沢:うーん、稲妻グリルとピンクのイメージがよすぎたのか(笑)。でも、まあいいんじゃないですか。今どきの50〜60代って、実年齢と心の年齢が必ずしも比例してなくて、気持ちはヤンチャというか、20代よりアクティブだったりしますもん。

秋山:ええ、たしかに。ただ、他社・他車種からの買い替えのお客さまがイマイチ増えていなくて。現状では乗り替えのお客さまが75パーセントぐらいなんですね。

小沢:お客さまの防護はしっかりできた一方、攻撃は思うようにできてないと。

秋山:だから、45歳〜55歳ぐらい、つまり私世代のお客さまにも、もっと「クラウン」のよさをわかってほしいと思い、日本専用開発を打ち出したんです。私たちは“バブル世代”とも呼ばれて、海外の有名ブランドになじんできた世代でもある。だからこそ今、「メイド・イン・ジャパン」に回帰しているところがあって、それを打ち出そうと。東京オリンピックも控え、海外の目が日本に向いていますしね。

小沢:なるほど、それであのトヨエツ(豊川悦司)のCMなんですね。パリを舞台に「これ、日本でしか売ってないんですよ」とフランス語で言うという。

秋山:また、「ディスカバー・クラウン・スピリット・プロジェクト」という活動を始めています。歴代の「クラウン」を修復して再び走らせようというもので、フロンティア精神に直接触れて「クラウン」スピリットをもう一度取り戻そうというのが狙いです。

保守的な「クラウン」のイメージを一新するモデルチェンジとなった12代目のこと。

秋山 晃

秋山 晃(あきやま あきら)

1986年入社の52歳、山口県出身。実験部に配属されたのち、2001年に先行車両企画部に異動。ここで「カローラ」「RAV4」などに使われているコンパクト系プラットフォームの先行開発を担当した。07年、当時「クラウン」のチーフエンジニアだった寺師茂樹氏に見込まれて製品企画本部へ。以来、「クラウン」開発一筋。今回のマイナーチェンジからチーフエンジニアを務める。趣味は、犬と走ること。愛車は14代目「クラウン ハイブリッド」のアスリート。

日本の創作料理と日本のシェフが作った洋食との違い

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小沢:ところで今回の2リッターターボの「クラウン」、いいですね。もちろんアイドリングストップはしますけど、イグニッションを入れるとエンジンがしっかりかかって、なにより走りがいい。前回本格投入された「クラウン ハイブリッド」もいいけど、やっぱり普通のガソリンエンジンのほうが「クラウン」らしいのかなぁと思ったりします。

秋山:そうでしょう⁉ ボデーも足回りもやり直してるんです。街中だけでなく山のワインディングロードを走っても楽しめると思います。だから、見るだけでなく、販売店でぜひ、試乗していただきたいんです。

小沢:「レクサス」ではなく、なぜ「クラウン」なのか……をですね。

秋山:僕はいつも言っているんですよ。「『レクサス』は日本のシェフが作った洋食です」と。一方「クラウン」は、「日本の料理人が作った日本の創作料理」。「レクサス」はいくらでも車体を大きくして、グラマラスなフルコースになってもいいわけですが、「クラウン」は違う。満腹感を追い求めるのではなく、一品一品に丹精を込め、お客さまにそのうま味を全身で感じてもらえるようなクルマだと。

小沢:だいぶ秋山流「クラウン」が見えてきましたね。輸入車を追いかけて作る必要はない。日本人の日本人による、日本の道のための高級車である!

秋山:まさしくおっしゃる通りです。そのための「日本専用開発」なのですから。

おざわ こーじ◎バラエティ自動車ジャーナリスト。 動画試乗レポートはこちら

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