Harmony 2016年9/10月号
開発者に聞く

オーリス 小西良樹
MS製品企画 チーフエンジニア

オーリス ハイブリッド “G パッケージ”

欧州で鍛え世界に羽ばたく進化形ハイブリッド車

環境・資源問題が深刻化する中、ハイブリッド車は世界のスタンダードになろうとしている。欧州で走りを鍛えてきた「オーリス」のハイブリッド版投入は、トヨタの未来戦略にどう関わってくるのか──。

文・小沢コージ 写真・小松士郎

クルマを軸にした組織再編成の目的

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小沢:まず始めに、小西さんの経歴を教えていただけますか?

小西:はい、出身は地元、愛知県でして、1991年にトヨタに入社、ボデー設計部に配属されました。以後、「セリカ」や初代「bB(ビービー)」などFF車の設計や、2000年に技術管理部に異動してからはクルマの開発手法に携わってまいりました……という感じです。

その後製品企画室に異動して「カローラ」「RAV4(ラヴフォー)」を担当し、09年から新世代プラットフォーム、つまり「プリウス」に使われたTNGA初のプラットフォームを開発し、今回再び「カローラ」と「オーリス」のチーフエンジニアとして戻ってきた次第です。

小沢:TNGAをイチから開発した後に「カローラ」と「オーリス」を担当って、これからのトヨタ自動車の命運を担う重要な方じゃないですか! “変貌するトヨタ車”のまっただ中で、「カローラ」は日本、そして「オーリス」は欧州戦略の根幹を担うクルマですもんね。大変だ(笑)。

小西:世界中のお客さまに喜んでいただくためにも頑張らないといけませんね。

小沢:今年から導入された “7カンパニー制” によれば、社内で「先進技術」「コンパクト」「ミッドサイズ」「商用車」「レクサス」「パワートレーン」「コネクティッド」と製品群ごとに分けて、それぞれに専任プレジデントを置き、責任と権限を独立させると。具体的にマインドとしては何が変わるんですか?

小西:簡単に言うと、各プレジデントのもとで商品ジャンルごとに競争力をしっかりつけていくということです。社長就任以来、豊田(章男社長)は「商品を軸にした会社にしていきたい」と一貫して表明しておりまして……。

小沢:商品軸? つまり会社都合で効率のいい商品作りをするのではなく、お客さま目線で、求められるジャンルに最適最良の商品を投入する……ということですか?

小西:ええ、お客さまに喜んでいただけるクルマ作りを通して、地域や社会にも貢献していきたいというスタンスですね。

小沢:なるほど、その視点で「オーリス」を見ると課題が見えてきますね。現状ではトヨタはアメリカや日本では強いけれど、欧州ではそれほどでもないですよね。具体的に、社長からコレをしなさい、と言われていることはありますか?

小西:はい、非常に単純明快なメッセージです。とにかく、お客さまが笑顔になる「もっといいクルマを作れ」と。

小沢:たしかに、考えてみれば今回のハイブリッド投入もその路線ですよね。「オーリス」は欧州戦略車で、日本用のハイブリッド仕様は当初考えられていなかったけど、お客さまが求めているなら、多少出遅れても、素直にソイツを出しなさい……と。

小西:今年4月に日本で「オーリス ハイブリッド」を追加しましたが、理由のひとつはお客さまのニーズでした。今では販売台数が倍増して、ハイブリッドが「オーリス」全体の半分を占めています。

TNGA=トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー。プラットフォームそのものの名称ではなく、大幅な商品力向上と原価低減を同時に達成するクルマ作りの方針を指す。

小西良樹

小西良樹(こにし よしき)

1991年トヨタ自動車入社。ボデー設計部に配属され、「セリカ」や初代「bB」などFF車を担当し、2000年に技術管理部へ異動。新世代の自動車開発手法を研究した後、05年から製品企画室で「カローラ」「RAV4」を担当。09年から新世代プラットフォームのTNGAの開発に携わり、16年から「カローラ」「オーリス」のチーフエンジニア。

燃費と加速両方いい。それこそが「いいクルマ」

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小沢:やっぱり、ハイブリッドは強いですね。昨年発売された1.2リッター直噴ターボが、もうちょっと売れると思っていましたが。

小西:それだけハイブリッド車が定着してきたんでしょうね。今や日本の“トヨタ ハイブリッド”は「オーリス」を入れて全18車種になります。ハイブリッドの方がお値段にして20万〜30万円は高いのですが、やはり燃費が断然違いますからね。

小沢:だから適材適所というか、商品を地域や人に合わせて投入するって難しいですよね。あの、他国他メーカーには真似できない「シエンタ ハイブリッド」を当てたトヨタをもってしても、欧州でハイブリッドを売るには時間がかかっているし、「オーリス ハイブリッド」の日本投入も、発売当初から、あるいはもっと早期に……とはいかなかったでしょう?

小西:「オーリス ハイブリッド」はトヨタのハイブリッド車ではありますが、欧州戦略車という位置づけが強いんですね。今や、資源や環境の問題もあって、世界的に燃費が注目されつつある一方、草食系はもういい、肉食系の要素も欲しいよね、というお客さまも増えていますから、今回の「オーリス ハイブリッド」は、燃費はもちろん加速フィーリングも大切にしています。
具体的には欧州で嫌われる“ラバーバンドフィール”、つまりエンジン回転が間延びしてしまう特性を改善して台数を伸ばしているんですよ。昨年、「オーリス」は欧州全体で14万2000台ほど売れましたが、そのうち半分強の7.9万台がハイブリッドです。オランダやイギリス、フランスを中心に好評です。

小沢:おお、それはすごい! ついに欧州にもハイブリッドの時代が到来しましたか! 正直言って、フォルクスワーゲン・ゴルフをはじめ、強力ライバルがひしめく欧州では、まだまだツラいだろうなあ……と思っておりました。

小西:もちろん、現状に満足はしていませんし、これからさらに向上させていくつもりですが、すでに「オーリス ハイブリッド」には、その後に発売された4代目「プリウス」に先行して搭載された技術も入っているんですよ。

小沢:えっ、そうなんですか?

小西:ええ。たとえば、バッテリーをリアシート下に置いて重量配分を改良し、非常に走りを重視した作りになっています。欧州で培った技術を、どんどん世界戦略に反映させていこうという狙いがあります。

小沢:とはいえ、やはり北米向けのクルマは欧州とは戦略が違いますよね?

小西:そうですね。ただ、結局のところ、運動性能という面では、欧州はクルマ作りの基点であり、走りの道場であると僕は思っています。ですから、走りとか運動性能は全体に欧州の感覚で作り込んで、仕様とかサイズに関しては、北米とか中国の感覚を優先させる……ということでしょうか。

小沢:なるほど。そういう使い分けですか。

小西:乗り心地や走りのよさは、世界共通、どなたもが求めるところだと思いますから。

小沢:今回の「オーリス ハイブリッド」は、今後登場するトヨタ車を象徴している部分があるんですね。欧州で鍛え、そこから世界に展開していくという。

小西:「オーリス」の今後を、楽しみにしていてください。

おざわ こーじ◎バラエティ自動車ジャーナリスト。 動画試乗レポートはこちら

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