Harmony 2017年3/4月号
開発者に聞く

コースター 山川雅弘
CV製品企画 主査

コースター EX ロングボディ 6AT

24年ぶりのモデルチェンジに世界が騒然! トヨタが誇る商用車の先鋒

日本が生んだ独自規格のマイクロバスの原点にして、トヨタの原点ともいえる小型バス「コースター」が24年ぶりのフルモデルチェンジを果たした。世界で愛されるタフな商用車の知られざる伝説とは……。

文・小沢コージ 写真・小松士郎

トヨタが生んで育ててきた「マイクロバス」という日本独自のバス規格

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小沢:そもそも「コースター」とはなんぞや? 乗用車なのか? バスなのか……? そういう根本的なところから教えてください。

山川:マイクロバスです。今回、24年ぶりにフルモデルチェンジしまして、これが4代目となります。

小沢:なるほど。しかし、バスだったらなぜ、同じトヨタグループの日野自動車がつくらないのかという、シロウト的疑問が湧き上がったりもするのですが。

山川:じつはトヨタは、乗用車よりも先にトラック、その次にバスを製造していたんですよ。バス製造の歴史は長いんです。

小沢:ああ、そうでした! トヨタAA型乗用車の前にバスがあったんですよね。その伝統が脈々と続いていて、「コースター」は末裔にあたるわけですね。

山川:ええ、バス製造の歴史を振り返ると、1936年にDA型バスというオリジナルの大型バスを発表し、63年に「コースター」の前身である「ライトバス」を出しています。

小沢:そもそもマイクロバスって、簡単に言うとどういうカテゴリーなんですか?

山川:昔は小型トラックをベースに各地の架装メーカーがバスに改造するという、非常にニッチな存在でした。

小沢:言わば大型バスと「ハイエース」のようなワンボックスカーの中間ですね。それでいて普通免許で運転できる最大サイズのクルマだとか?

山川:以前は普通免許で運転できたらしいですが、現在は中型以上が必要ですね。しかし、中型限定免許をお持ちの方は“限定”は比較的容易に解除できるので、敷居は高くないんです。“マイクロバス”は日本独自の規格で、定員が運転手を含み11〜29名の小型バス(=中型自動車)のことを指します。世界では“ミニバス”と呼ばれるジャンルですね。ただ、日本のレンタカーで扱えるバスの規定が全長7メートル未満。生活道路などの全幅規制にかからないように、車幅は2.1メートル以下に抑えるといった日本での使い勝手を強く意識しています。

小沢:それがマイクロバスの定義で、その原点が「コースター」なんですね。

山川:そうです。前身の「ライトバス」が63年に生まれ、モデルチェンジを機に「コースター」と改称したのが69年ですから、実質的には50年以上のロングセラーなんです。

累計販売台数は55万台以上。アジア、中近東でダントツの人気を誇る

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小沢:50年超えですか。「カローラ」のずっと前から愛されてるじゃないですか(笑)。それで、どういう需要が多いんですか? 個人的には幼稚園の送迎バスのイメージが強いんですが。

山川:たしかにそちらも安定した需要はありますが、販売台数の12〜13パーセントに過ぎず、国内で一番多いのは自家用です。

小沢:ええっ……自家用のマイクロバス???

山川:いえ、自家用といっても、各種企業保有の従業員送迎用とか、飲食店のお客さまの送迎用のことですね(笑)。

小沢:もしかして、個人オーナーもいるんですか?

山川:ごくまれにいらっしゃいますよ。たとえばキャンピングカー用に改造されている方などですね。

小沢:海外輸出はどのくらいなんですか。

山川:輸出は「ライトバス」の時代から始まっていて、現在、欧米を除く110以上の国や地域で販売しています。

小沢:なるほど、欧米は大型バスで十分なんですね。となると、やっぱりアジア諸国での需要が大半ですか?

山川:グローバルで年間約1万8000台つくっていまして、国内では日野自動車さんにOEM(他社ブランドの製品を製造すること)で卸している「リエッセ Ⅱ」を含めて3500台ぐらいですね。海外での販売は順調に伸びておりまして、累計販売台数は55万台以上となっています。

小沢:……ってことは、販売台数の8割が海外か。まさしく「ランドクルーザー」「ハイエース」もびっくりの、超グローバルカーじゃないですか!

山川:ええ、そうなんです。中国では政府要人の移動手段としてもご愛用いただいていたようですし、一方で、中近東では砂漠の資源採掘現場のようなタフなシーンで人気が高いんですよ。

小沢:やっぱり“ランクル”同様に最大の魅力は耐久性であり、信頼性なんですか。

山川:ええ、24年の長きにわたってモデルチェンジしなかったのは、変える必要がなかったと言いますか、高い信頼性の証明でもあるんですよね。ゆうに15年間ご愛用くださっているお客さまや、40万キロ走破とか、なかには走行距離100万キロを超える方もいらっしゃいますので。

小沢:すごいですね、それは。

山川雅弘

山川雅弘(やまかわ まさひろ)

1985年トヨタ自動車入社。エンジン部に配属され、エンジン本体やエアクリーナなど関係部品の開発を担当。2003年に製品企画領域へ異動。「コースター」や「ダイナ」などの商用車開発に携わり、「コースター」のフルモデルチェンジを14年がかりで実現した。バス開発一筋14年、トヨタの中でもっともバスに詳しいベテランで、世界中のお客さまの生活を支えるクルマとして、よりよい製品を提供しつづけられるように開発を続けている。

最大の魅力は耐久性と安全への信頼性。車内空間も拡大

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山川:今回のモデルチェンジでは、フレームやサスペンションの部分は基本的にそのままで、いわゆるロールバーのように強化したボディの骨格を環状に強固に結合させ、国際的なバスボディの安全基準であるロールオーバー(転覆)基準に適合させています。

小沢:まずは安全性の強化。

山川:はい、最優先すべき領域です。なお、今回から運転席・助手席のエアバッグと横滑り防止装置付きの車両安定制御システムVSCを標準装備し、乗客席すべてには3点式シートベルトを付けています。シート自体はじつは2年前に新世代のものに変更しています。

小沢:室内も結構広いですよね。

山川:はい! 従来モデルと見比べていただくと一目瞭然なんですが、圧倒的に広いです。全長7メートルはそのままですが、幅で45ミリ、高さで60ミリ広げていて、室内高は60ミリもアップしています。私は身長185センチなのですが、ようやく車内でまっすぐ立つことができました(笑)。

小沢:実際、そこは海外戦略を考えても重要なポイントですよ。

山川:それから、エクステリア・デザインが24年ぶりにモダンに生まれ変わっていますし、乗り心地、静粛性も向上しています。乗っていただければ分かります。

小沢:地道な世界なんですね。老舗の焼鳥屋のタレが、長い間注ぎ足され注ぎ足されていくように、要所要所を確実に改良していく。

山川:世界のお客さまの信頼を背負っていますからね、当然です。

おざわ こーじ◎バラエティ自動車ジャーナリスト。 動画試乗レポートはこちら

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