Harmony 2018年5/6月号
開発者に聞く

ALPHARD/
VELLFIRE
吉岡憲一
製品企画 主査

文・小沢コージ 写真・小松士郎

  • HILUX
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ALPHARD/VELLFIRE

「豪華勇壮」「大胆不敵」 至高のミニバン、参上

発売1カ月で、それぞれ1万台超えという驚異の販売台数を記録した新「アルファード」と「ヴェルファイア」。今回のマイナーチェンジで何がどう変わったのか? 進化を続ける“ラグジュアリー・ミニバン”に迫った。

端正かつ〝オラオラ感〟。「売れるミニバン」の掟

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小沢:先日、たまたま「ノア」「ヴォクシー」の開発者の方とお話しする機会がありまして、その時に「ミニバンの8割は〝顔〟で決まる」と言われたんです。けだし名言!と、思わず膝を打ったんですが、今回の「アルファード」と「ヴェルファイア」にしても、たしかに顔の重要性は増していると思いました。特に、エアロボディのフロント両サイドの縦ヒゲみたいな部分とか、本当にすごく迫力ありますよね(笑)。

吉岡:あれは社内では「ダンベル」と呼んでいます(笑)。はい、顔のよさは大事です。とくにバランスは重要だと思います。

小沢:あ、メッキの美しさやグリルサイズではなく?

吉岡:それも含めた全体的な顔のバランスですね。

小沢:でも、押しの強さとかも重要ですよね。

吉岡:ええ。人間の場合は小顔がウケますよね。でもクルマには独特の価値観があって、端正かつ〝オラオラ感〟も求められるんです。

小沢:なるほど、バランスのよさとオラオラ感の両方が必要だと。やっぱり「ノア」「ヴォクシー」も含めて、トヨタが一番わかっていますよね。「売れるミニバン」とはなにかを。

吉岡:大切なのは存在感です。でも、ブサイクな存在感じゃダメということですね。

小沢:デザイナー陣には、具体的にどういう指示を出すんですか?

吉岡:例えば開発当初、「ヴェルファイア」にはもっとゴツゴツの意匠案もあったんです。グリルの下の部分を全部ギザギザにしちゃうような。

小沢:えっ、ダメなんですか?

吉岡:ダメですね。存在感はあるんですけどカッコがよくない。あまりゴツゴツにして尖りすぎると、美的バランスが崩れるんです。

小沢:かたや「アルファード」ですが、じつは僕、少し残念に思っていて、マイナーチェンジ前はグリルが全面メッキでしたよね。あれが〝走る腹筋〟みたいで、インパクトあってよかったなあと。

吉岡:これまでの「アルファード」の意匠を分析したところ、ふたつの方向性がありまして、それは「豪華絢爛」と「ダイナミックでアグレッシブ」なんですね。3代目開発の際に豪華絢爛に偏りすぎたので、今回は少し武骨路線に戻そうと思いまして。

小沢:なるほど、かなり微妙なサジ加減があるんですね。

吉岡:ちなみに今回、「アルファード」は「豪華勇壮」、「ヴェルファイア」は「大胆不敵」と、それぞれコンセプトが決まっています。

小沢:なんだか、ほとんど戦国武将というか、三国志みたいな世界ですね。劉備(りゅうび)と呂布(りょふ)とか(笑)。

吉岡:言わば甲冑のような世界観です。「ヴェルファイア」は甲冑とはちょっと逆方向に、少し未来的な味つけをして引き戻した感じですね。

小沢:うん、やっとわかってきた。今のミニバンってキャラ作りであり、性格づけが大切なんですね。

吉岡:それはたしかにありますね。前回のフルモデルチェンジで「アルファード」は順調に販売台数を伸ばしましたので、こちらはこのまま進化していけばいいだろうと。一方、「ヴェルファイア」は台数の伸びが少なかった。そもそも〝ヴェルファイアネス〟とはなんだろう……と熟考しました。

小沢:で、結局なんでしたか?

吉岡:僕は、〝非現実性〟ではないかと思ったんですよね。ライトが上下ふたつ、目が4つあるような顔ですから、最先端テクノロジーを感じさせるというか。

小沢:ええ、わかります。少し宇宙船っぽいですものね。

吉岡:つまり、戦国武将っぽい有機的なものに、宇宙船みたいなイメージをうまく融合させたら、カッコいい「ヴェルファイア」になるんじゃないかと。

吉岡憲一

吉岡憲一(よしおか けんいち)

1992年大阪府立大学工学部大学院修了、トヨタ自動車入社。「カローラ」「カムリ」などグローバルモデルの現地調達部品の開発に携わった後、6代目「カムリ」の製品企画、制御システム開発などを担当し、2010年から「アルファード」「ヴェルファイア」の開発主査。趣味はスキーと空手とマラソン。

「エグゼクティブラウンジ」に見る静粛性能向上の徹底

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小沢:そうかぁ……戦国武将とか宇宙船とか、やっぱりこのクラスのラグジュアリー・ミニバンは、〝憧れ〟や〝夢〟のカテゴリーに入るってことですかね。

吉岡:顔も当然、大切な要素なんですが、その存在感であったり、所有する優越感であったりも必要不可欠な要素なんです。それも、輸入高級車にはない、日本発だからこそのラグジュアリーです。しっかり最後列まで使える3列シート、しかもそのうち2、3列目はフルフラットになるからゆったり座れて、寝ながらでも移動できちゃう居心地のよさなどですよね。

小沢:顔に加えて、セダンではできない居心地のよさや圧倒的な広さも重要なんですね。そのあたりはどう改良したんですか。

吉岡:このクルマは2・5リッターハイブリッドと2・5リッター直4、3・5リッターV6の3つのパワートレインがあります。売れるのは前者2タイプですが、V6も根強い人気があります。こちらは経済性も重要だろうと燃費を上げました。それからもうひとつ、トップグレードの「エグゼクティブラウンジ」はサスペンションをチューニングして、ショックアブソーバーを微低速からしっかり減衰感を出すように改良しました。具体的には2列目シートのブルブルっとした振動などをきっちり抑えていこうと。

小沢:たしかに、音や振動対策は重要ですよね、この手の高級ミニバンは。

吉岡:ええ、そうなんです。「エグゼクティブラウンジ」は今回からウインドシールドにアコースティックガラスを採用して静粛性を向上させていますし、シート自体にもダイナミックダンパーという振動を吸収する制振装置を付加し、チューニングしています。

先進予防安全技術を標準装備。名実ともにアジアの最高級車に

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小沢:そういえば、前回のフルモデルチェンジで登場した、ほとんど飛行機のビジネスクラスのような2列目シートをもつ「エグゼクティブラウンジ」、あれは売れたんですか?

吉岡:おかげさまで。月販平均で700〜800台は出ています。

小沢:すごい! たしかお値段は700万円超えでしたよね。

吉岡:今回のマイナーチェンジでは、それにいろいろプラスαで750万円ぐらいになっています。

小沢:えーっ、そりゃまたすごい! やはり2列目で殿様キブンを味わいたいということですか。

吉岡:それが意外に、3列目の需要もありましてね。お子さまが独立され、お孫さんもいらっしゃる祖父母世代のお客さまなどは、シートのスライドが電動だけだと時間がかかる……ということで、今回、ワンタッチで2列目が素早く動くように改良しました。

小沢:本当にきめ細かいなぁ。結局、全グレードでどれくらいトータルで売れたんですか?

吉岡:マイナーチェンジ前のモデルで言いますと、「アルファード」「ヴェルファイア」合わせて国内で月7000〜8000台ぐらい売れています。お客さまは法人の方が多く、自営業の方でもご自分で車両登録されたり……。

小沢:なるほど、今や完全に日本の社長が乗るクルマなんですね。

吉岡:アジアでも販売台数は伸びていまして、中国や一部のASEAN地域で販売していますが、こちらを合わせると月販1万台ほどになります。

小沢:参りました(笑)。アジアでも高級車の代名詞になっちゃったわけですね。しかも「エグゼクティブラウンジ」が人気なわけで。

吉岡:ええ、あれは純増ですね。

小沢:さらに新しい上級顧客も獲得したと。平均価格はいかほどですか?

吉岡:以前は約400万円でしたが、今回は約500万円ですね。

小沢:そういえば! トヨタの先進予防安全技術も進化したんですよね。

吉岡:プリクラッシュセーフティなどを含む「トヨタセーフティセンス」の最新世代が入って、レーントレーシングアシストなどの新機能も標準装備に加わりました。 今までのようにセーフティセンス「P」「C」の区分けもなくなりまして、今後、順次他の車種にも装備される予定です。

小沢:進化を続けるラグジュアリー・ミニバンの真打ち、登場ですね。

小沢コージ

おざわ こーじ

バラエティ自動車ジャーナリスト。1966年神奈川県横浜市生まれ。「NAVI」編集部を経て、フリーに。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『ドライブ上達読本』『クルマ界のすごい12人』など多数。TBSラジオ「週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ」出演中。

ALPHARD

「エグゼクティブラウンジ」の2列目シートは極上の特等席。上質なプレミアムナッパ本革シートを採用。前後140mmの伸縮調整可能なパワーオットマンで、ゆったりとした時間を……。

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