全国で3,000以上もの温泉地がある温泉王国、日本。
その中から、クルマでなければ行きづらい名湯・秘湯をご紹介します。

2016年3月記
クルマで行く名湯・秘湯【第3回】 福島県奥会津温泉郷

春の只見川に個性派温泉を訪ねて

文・山崎まゆみ(温泉エッセイスト)

奥会津エリアは福島県西部、会津地方の山間地域を指し、このエリアを流れる只見川沿いに、実に個性的な温泉が点在します。飽きることなく楽しませてくれるエリアなのです。

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奥会津エリアは福島県西部、会津地方の山間地域を指し、このエリアを流れる只見川沿いに、実に個性的な温泉が点在します。神社のある浴場あり、絶景露天風呂あり、ずっしりと重たいと感じる温泉あり、炭酸泉ありと、景色もロケーションも湯もさまざま。全国を温泉行脚している私も飽きることなく、楽しませてくれるエリアなのです。

神様が見守る「西山温泉 老沢温泉旅館」

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板張りの壁に神様が祭られており、コンクリートむき出しの床に長方形の湯船が3つあります。簡素というか、素朴というか。神様に見守られ安らぎを与えてもらっている反面、神様の前で裸になっているという気恥ずかしさが入りまじった複雑な心情は、このシュールな浴場に入った者にしかわからないものです。こちらは混浴で、脱衣場もひとつのみですので、混浴に入り慣れていないと困惑するかもしれません。湯は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。少し硫黄が香り、無色の湯には白い糸状の湯の花がふんわりと浮いています。

絶景露天風呂なら「早戸温泉 つるの湯」

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只見川を見渡せる渓谷沿いにある、共同浴場の露天風呂です。春には露天風呂からも桜を眺めることができます。私はいつも日帰り入浴で利用していますが、ここは自炊施設もあるので、のんびり3泊くらいしたら、もう社会復帰できなくなりそう。最近、すぐ隣におしゃれなカフェができたようです。湯はナトリウム-塩化物泉。塩っ辛くてねっとりとした、両手ですくい上げるとずど〜んと重たい湯です。湯上りはほかほか。

宿泊を考えるなら「湯倉温泉 旅館鶴亀荘」

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奥会津で宿泊を考えるなら「旅館鶴亀荘」がおすすめです。湯倉温泉の一軒宿で、造りはいわゆる秘湯の宿らしい素朴さを醸し出していますが、器と料理は想像以上に本格的。春なら山菜、秋にはキノコなどが洗練された料理に変わり、美しい器に盛りつけられて供されます。器を選ぶ女将と料理を作るご主人のセンスの賜物です。湯はナトリウム-塩化物泉。黄土色と褐色がミックスしたような色合いで、翡翠色をした川の色と対照的。特に露天風呂を写真におさめると絵になります。

上質の炭酸泉「玉梨温泉 恵比寿屋旅館」

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宿がいくつかある小さな集落という雰囲気の金山町は、玉梨温泉など炭酸泉が湧き出る貴重なエリアです。「恵比寿屋旅館」さんの湯は鉄分の匂いがして、口に含むとしゅわしゅわっと微炭酸を感じることができます。炭酸泉は血行をよくし、飲泉すれば胃腸を整えるといわれています。

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奥会津は温泉だけでなく、只見川沿いをクルマで走れば川の色に見惚れます。三島町には3つの橋を同時に眺められる「みやしたアーチ橋3兄弟」という見どころもあります。日本の古き良き田舎である秘境・奥会津には、一生に一度は入りたいと思うほどの秘湯があります。長閑な風景にのんびりとした空気が流れ、日常から解放されたい方におすすめしたい湯巡りです。

コラム原稿は2016年3月現在の情報を元に執筆しています。

やまざき まゆみ◎1970年新潟県生まれ。駒澤大学文学部卒業。世界31カ国1,000カ所以上の温泉を訪ねる一方、日本の温泉の魅力を世界に発信している。近著に『バリアフリー温泉で家族旅行』がある。