緑と摩天楼に包まれる贅沢な時間もうひとつのシンガポール。緑の楽園へ
スカイラインが水面に映える夜景、世界中の逸品が集まるグルメやショッピング。シンガポールといえば、そんな洗練された都市のイメージを思い浮かべる人も多いでしょう。しかしこの小さな国には、熱帯の自然に育まれたもうひとつの魅力が、今も力強く息づいています。
Text & Edit : Fumihiro Tomonaga
Special Thanks : Singapore Tourism Board
シンガポールは東南アジアの中でも早くから開発が進み、現在は世界有数の先進的な国際都市として発展を遂げています。世界中の料理が揃うグルメシーンでは、屋台文化のホーカーセンターから高級レストランまで多彩な味覚を楽しめ、最新の流行がウィンドウを彩るモールやマーケットが軒を連ねます。また、中国系、マレー系、インド系など多様な文化が交錯する街並みは歩くだけでも刺激に満ち、昼夜を問わず活気にあふれています。
右:ラオパサのホーカーセンター(屋台街)で食事をする人びと。衛生的で安価なローカル料理を提供するホーカー文化は、2020年にユネスコ無形文化遺産に登録された。
一方、この国のもうひとつの魅力も見逃せません。街中でも至るところで植栽や街路樹、壁面緑化を見かけるなど、国土の40パーセント以上が緑に覆われ、世界屈指の動物関連施設や大規模な植物園もオープン。最先端のアーバンライフとともに、豊かな自然を手軽に満喫できるのです。今回はそんな贅沢なシンガポールへの旅へ、ご案内します。
進化する「マンダイ・ワイルドライフ・リザーブ」で野生と対話
シンガポールで動植物を間近に感じたいなら、まず訪れたいのが北部に広がるマンダイ地区。ここには世界でも類を見ない大規模な野生動物パーク・観光施設「マンダイ・ワイルドライフ・リザーブ(Mandai Wildlife Reserve)」が整備され、5つのパークが集結しています。
写真提供:Mandai Wildlife Reserve
そのひとつ、アジア最大級の鳥類園「バードパラダイス(Bird Paradise)」は、世界中から集められた400種・3,500羽以上がくらす鳥の楽園。放し飼いの鳥たちが広大な施設内を自在に飛び交い、訪れる人の目の前を軽やかに横切ります。「リバーワンダー(River Wonders)」では、世界の七大河川をテーマにした展示を展開。珍しい淡水生物に加え、2頭のジャイアントパンダ(カイカイとジアジア)にも出合えます。また中心施設である「シンガポール動物園(Singapore Zoo)」では、徒歩やトラムで園内を巡りながら、動物たちを至近距離で観察できるのが魅力。さらに夜間動物園「ナイトサファリ(Night Safari)」においては、月明かりのもと900匹以上の夜行性動物が息づく、静寂と緊張感が交錯する不思議な世界を体感できます。
中:「リバーワンダー」には、メコンオオナマズやマナティーなど川辺の生き物からジャイアントパンダまで、珍しい動物たちが集合。
右:「ナイトサファリ」は、真夜中に園内をウォーキングトレイルやトラムで巡る夜中の探検ツアー。
写真提供:Mandai Wildlife Reserve
そして2025年春、「マンダイ・ワイルドライフ・リザーブ」に新たに加わったのが「レインフォレスト・ワイルド・アジア(Rainforest Wild ASIA)」。洞窟や崖、滝が連なるルートを自らの足で巡りながら、58種の動物と出合う行程は、まさに“探検”と呼ぶにふさわしいもの。リアルなジャングルの息遣いが、都市にいることを忘れさせてくれるでしょう。
写真提供:Mandai Wildlife Reserve
そのほかにも子どもを対象とした体験型学習空間「キュリオシティー・コーヴ(Curiosity Cove)」や、自然をテーマにしたマルチメディアアトラクション「エクスプロリア(Exploria)」が新設。次世代へ自然の大切さを伝える教育・文化施設も充実しています。
写真提供:Mandai Wildlife Reserve
都心のオアシスで胸いっぱい深呼吸
緑豊かな自然を感じたいなら開園から160年以上の歴史を誇る「シンガポール植物園(Singapore Botanic Gardens)」へ。同園は82ヘクタールの広さを有し、2015年には同国初のユネスコ世界遺産に登録されています。MRT「ボタニック・ガーデンズ駅」から徒歩数分で、入園は無料(「ナショナル・オーキッド・ガーデン」のみ有料)。熱帯雨林の豊かな植生、穏やかな池のほとり、数千種のランが咲き誇る「ナショナル・オーキッド・ガーデン」など、朝霧に包まれる早朝から、夕陽が木々を染める黄昏どきまで、異なる表情を見せてくれます。散策を楽しむ市民も多く、都市と自然が日常の中で共存する、シンガポールの象徴的なスポットのひとつです。
右:最大の見どころは「ナショナル・オーキッド・ガーデン」。1,000以上の原種と2,000以上の交配種が約60,000株も栽培され、まさに圧巻。
ちなみにもうひとつ、近未来型の植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」が2012年、有名ホテル「マリーナベイ・サンズ」の目の前にオープン。興味があれば、ぜひこちらものぞいてみてください。
大自然とテクノロジーが融合した、新たな海体験
国内有数のリゾート地として知られるセントーサ島。その中心に広がるアジア最大級の統合型リゾート「リゾート・ワールド・セントーサ」に2025年7月に誕生したのが、次世代型海洋施設「シンガポール・オーシャナリウム(Singapore Oceanarium)」。旧施設(S.E.A. Aquarium)から約3倍のスケールへ、大規模なリニューアルを遂げた館内は22のテーマゾーンで構成され、総延長約5キロメートルに及ぶ展示空間で没入型の体験が楽しめます。
例えば「エインシェント・ウォーターズ(Ancient Waters)」ゾーンでは、先史時代の壮大な海の進化の物語に思いを馳せ、「オープン・オーシャン(Open Ocean)」ゾーンの幅36メートル、高さ8.3メートルの巨大パネル越しには、何千匹もの海洋生物とともにリーフマンタやトラフザメが悠然と泳ぐ姿を観賞できます。海の歴史と生態系の全体像に触れる—そんな知的好奇心を満たしてくれる空間です。
右:最先端のデジタル演出と自然に近い展示を融合して、海洋生態系への理解と保全意識を育む。世界水準の海洋教育・研究・保全拠点でもある。
写真提供:Singapore Oceanarium, Resorts World Sentosa
プラウ・ウビン島〜時が止まった楽園〜
そして日程に余裕があれば、ぜひ足を延ばしたいのが「プラウ・ウビン島(Pulau Ubin)」。本土北東のチャンギ・ポイントから小舟で約10分。上陸した途端、そこには現代のシンガポールとは異なる、悠然とした時の流れを感じるはず。
「カンポン(村)」の面影を残すこの島は、開発の波を免れた貴重な場所。自転車を借りて島内を巡れば、マングローブ林の静寂、チェックジャワ湿地帯の豊かな生態系、熱帯の鳥たちのさえずりが五感を満たします。かつて全土に広がっていた農村の風景が今も息づき、この国の原点に触れるような懐かしさを味わえるでしょう。
写真提供:cherry-hai/ shutterstock
右:島内には旧採石場跡地にできた美しい湖や池が点在する。
自然とともに眠る、贅沢なステイ
最後に、この旅にこそふさわしい最新の宿泊施設をふたつご紹介します。ともに野生動物の聖地「マンダイ・ワイルドライフ・リザーブ」内に位置し、開業からわずか1年足らずです。
まずひとつ目の「レザバー・リトリート(Reservoir Retreat)」はオールインクルーシブのグランピング施設。サファリテントに滞在し、夜明けの野生の気配とともに目覚める体験は、従来のホテルとは異なる感動をもたらしてくれるはず。
ふたつ目が「マンダイ・レインフォレスト・リゾート by バンヤンツリー(Mandai Rainforest Resort by Banyan Tree)」。立地を活かし、自然と人工物の境界をあえて曖昧にしたバイオフィリックデザインを採用。細部にまでサステナブルな設計思想が行き届き、緑に包まれながらも洗練された滞在が叶います。高い美意識とシンガポールの豊かな自然が融合した、旅の締めくくりにふさわしい一夜を過ごせるでしょう。
写真提供:Mandai Wildlife Reserve
右:ジャングルとの共生を目指した再生型リゾート「マンダイ・レインフォレスト・リゾート by バンヤンツリー」。独特の建築は、熱帯雨林に自生するつる植物に着想を得て設計されたという。
写真提供:Mandai Rainforest Resort by Banyan Tree
「ガーデン・シティ」から「シティ・イン・ア・ガーデン」へ。巨大な庭園の中に、魅力あふれる“街”の創出を掲げるシンガポール。都市の洗練さと自然の豊かさがこれほど近接して共存する場所は、世界を見渡してもここだけかもしれません。2026年の旅先として、その奥深い緑の中へ足を踏み入れてみませんか。
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