気になるトヨタ車これぞ毎日乗れる「エブリデイEV」だ！
bZ4X

2023.06.23

トヨタが送り出した初の本格的バッテリー電気自動車（BEV）、bZ4X。車名のbZとは「beyond ZERO」の意。社会や個人が抱える課題ゼロを目指し、さらにそのゼロを超える新たな価値を創出・提供しようという強い意志を表す。その新しい価値とは何か。モータージャーナリストの小沢コージ氏が、海を目指すロングドライブで、その走りを試してみた。

EVを意識させないトヨタ流の「クルマ味」

2022年5月のデビュー以来、久しぶりに乗ったトヨタ入魂のオールニューバッテリーEV、bZ4X。かつてのガソリン車派生のEVとは違い、プラットフォームのe-TNGAからアッパーボディまで新開発。前回は「EVとしての新しさ」に着目して乗ったが、今回「クルマとしての新しさ」に注目するといろいろ見えてくる。

第一にスタイリングの新しさであり、狙いだ。一見、トヨタの代表的エンジンSUVであるRAV4の延長線。しかし、今までにはない新しさが随所に散りばめられている。グリルサイズやライトの厚さをあえて抑えたシャープなハンマーヘッドな顔つきもさることながら、サイドの鋭いプレスライン、抑揚が凄い。ずばりレクサスレベルの造形美だ。これだけでも過去のトヨタ車にはない高付加価値性能を狙っているのがわかる。それでいてガソリン車から乗り換えても違和感が少ない。このあたりがなんともトヨタらしい。

内燃機関SUVにはないずっしりした重厚感

さらに当初は気付きにくかったドアのしっかり感や剛性感も素晴らしい。開けた瞬間から今までのガソリンSUVにはないずっしりした重厚感が伝わってくる。海外の新興ブランドEVが盛り込んでくるわざとらしいプレミアム感ではない。長らくクルマを作り込んだトヨタだからできる本当の「クルマ味」が凄い。

インテリアもそうだ。例えば初導入のトップマウントメーター。一見、突飛で新しさを追い求めたものと思うかもしれないが違う。ちゃんとしたドライビングポジションを取ると、今までのデジタルメーター以上に自然に見え、逆に上半身を寝かせた不自然なポジションだと見にくくなる。

加えて不思議なのがフチ取りを廃したメーターパネル。いわゆる光よけのひさしがないのに画面からの反射が少なく、驚くほど目が疲れない。地味だが、なかなかのアイデアだ。

濃厚さというよりも染みるようなうまみ

肝心の走り、まずは加速性能である。パワースペックは２種類あり、FFモデルが150kW/266N・m、4WDモデルが前後モーター合わせて160kW/338N・m。これまたこれ見よがしな、加速時に首が痛くなるようなものではない。もしくはモーターのレスポンスのよさを極端に活かし、アクセルを踏んだ瞬間、驚きを伴うようなものでもない。

しかし、確実にガソリン車より力強く、なおかつ発進レスポンスがよい。ある意味、SUVの姿をしたちょっとした電動スポーツカー的。これ見よがしではない、毎日乗って楽しいEV「エブリデイEV」としての魅力に満ちあふれている。過剰に濃厚で最初の一口でガツンとくるラーメンスープではなく、毎日食べても飽きない染みるようなうまみのスープ。このあたりの絶妙なサジ加減がbZ4Xの真骨頂だ。

悩ましいのはアクセルオフ時の回生ブレーキの減速力を、兄弟EVのスバル・ソルテラのように微調整できない部分。このあたりはトヨタ車らしく変にユーザーを悩ませないように省いたのだろうが、ユーザーの要望によっては付けるのもアリだ。

クルマに詳しい人ほど、よさと凄さが実感できる

絶妙な加速力にさらにうまみを重ねてくるのが、かつてないレベルでクイックかつ骨太なステアリングフィール。ステアリングギアレシオが高く、手首をひねるぐらいの感覚でノーズがグイグイとインを向くだけじゃない。根本的なボディ剛性とステアリングコラム周りの剛性が高いのだろう。真っすぐ走っているだけでいいもの感がヒシヒシ伝わってくる。このあたりはEVならではというよりも、クルマとしての基本性能のよさでありレベルの高さだ。

同様に室内も全長4.7m弱のサイズ感でありながら、ホイールベースは2,850mmとクラウン並みに長い。フロア高こそバッテリー積載の関係で浅めな部分はあるが、前後長は今までのガソリンSUVレベルを完全に超えている。特に助手席を後ろにズラしたときの広々感は素晴らしい。見た目はSUVなのに乗ると高級リムジンのようとでもいうべきか。

bZ4XはEVとしての新しさを追ってもすべては見えてこない。純粋にクルマとして見ると、随所にかつてないよさを感じ取れる。

クルマに詳しい人ほどそのよさ、凄さを実感できる。そういうトヨタらしい本物のEVなのである。