クルマとくらす、私たちの未来。家族を守る、クルマの力
災害時は「安心して過ごせるシェルター」に、日常も「もっと安心して走れるクルマ」に

Car

止まることのない進化を続ける自動車。特に、近年の「ガソリン車からハイブリッドカー、BEVへ」という電動化の流れは、クルマの社会的な価値や意味を根本から変える“大進化”といえます。クルマが単なる移動手段を超え、「家族の安全を守ってくれる、頼れる存在」となりうる理由を、渋谷ヤスヒト氏と川端由美氏に語っていただきました。

Text:Yasuhito Shibuya
Photo:Masahiro Miiki
Edit:Akio Takashiro(pad inc.)

電動化が変えた、クルマの社会的役割

クルマが一家に一台というくらしが一般化したのは、1960年代半ばの「マイカーブーム」以降のことです。それから60年以上が経ち、クルマは性能も役割も大きな進化を遂げてきました。

中でも近年の「ガソリン車からハイブリッドカー、BEVへ」という電動化の流れは、クルマの社会的な価値や意味を根本から変える“大進化”だといえるでしょう。最新のプラグイン・ハイブリッドカー(PHEV)や電気自動車(BEV)は、単なる移動手段を超え、「家族の安全を守ってくれる、頼れる存在」へと進化しています。

では、最新のクルマはどのようにして家族を守ってくれるのでしょうか。その背景には、どのような技術や社会の変化があるのでしょうか。

1990年代からモノ情報誌の編集者として活動し、デジタル機器やネット社会の進化を追いつづけてきたモノ・ジャーナリストの渋谷ヤスヒト氏が、自動車業界の最前線を取材し、AIや電動化など次世代モビリティに詳しいモータージャーナリストの川端由美氏に、今、そしてこれからのクルマがもつ「家族を守る力」について話を伺いました。

渋谷ヤスヒト(以下、渋谷):1997年にトヨタが初代プリウスを発売してから30年近くが経ちました。あのできごとを起点に、クルマの社会的な意味や価値は、時代ごとに大きく変わってきたと感じます。特に最近は、個人の移動手段から、より社会性の高い存在になっていますね。

1997年の初代の発売からEV車の進化をリードしてきたトヨタのプリウス。

川端由美(以下、川端):その傾向が一気に加速したのが、2011年の東日本大震災でした。ハイブリッドカーやBEVを、災害時の電源や電力設備として活用しようという動きが本格化したのです。

渋谷:PHEVやBEVは電源として使えるだけでなく、移動できるという強みがあります。自宅だけでなく、避難所などでも活躍できますね。

川端:自家用車は、1日のうち多くの時間は駐車しているといわれています。そう考えると、家庭用の蓄電池や発電設備を別に導入するより、PHEVやBEVを非常時の電源として活用するほうが、合理的で現実的だといえます。

BEVは高い?「コスト」の見方が変わる

渋谷:ただ、現行のPHEVやBEVはガソリン車より車両価格が高く、普及の壁になっているようにも感じます。

川端:給電・蓄電設備としての価値まで含めて考えると、PHEVやBEVは実は非常にコストパフォーマンスが高い存在です。搭載されているバッテリーは高性能で、充放電にも強く、安全性も徹底的に確保されています。

日本では高額なBEVが先行しているため「BEVは高い」という印象がありますが、海外ではより手頃な価格帯のモデルがすでに普及しています。今後は価格も徐々に下がっていくかもしれません。

渋谷:充電インフラの未整備がBEV普及の障害だという声もあります。

川端:都市部では鉄道網が発達しているため、そもそもクルマの必要性が低い。一方、地方ではガソリンスタンドの減少が深刻で、BEVのほうが便利なケースも増えています。自宅で充電でき、通勤程度であれば十分。実際に地方では、個人や企業がBEVを購入する場合に補助金を出したり、職場での充電を無料にしたりする動きも広がっています。

EV業界に詳しいモータージャーナリストの川端由美氏。「最新のクルマがどのように人間をサポートできるのかを、ぜひ知っていただきたいです」

災害時、クルマは「動くシェルター」になる

渋谷:BEVやPHEVは、災害時にプライバシーを守れるシェルターとしても注目されています。

川端:ガソリン車は排気ガスの問題があり、災害時の避難空間として使うのは危険です。実際、積雪地域では一酸化炭素中毒の事故も起きています。災害時は低体温・電欠・換気など別リスクもあるため排気ガスの心配が少ないBEVやPHEV、特にBEVのほうが安心です。

渋谷:BEVは室内空間も広く、快適性が高いですね。

川端:BEVは設計思想そのものがガソリン車と異なります。フラットな床、大容量バッテリーなどにより、災害時だけでなく日常でも、常時接続のエンターテインメントシステムと組み合わせて「プライベートルーム」として使える存在になっています。

モノ全般に詳しいジャーナリストの渋谷ヤスヒト氏。「これからのクルマは、確実に『単なる移動手段』以上のものになっていくと感じます」

日常で家族を守る「サポカー」という選択

渋谷:最新のBEVやPHEVでなくても、日常の足として使われる軽自動車などにも、家族を守る進化はすでに実装されていますね。

川端:はい。国が推奨する新しい自動車安全コンセプト「サポカー(セーフティ・サポートカー)」です。衝突被害軽減ブレーキを備えた「サポカー」と、さらにペダル踏み間違い時加速抑制装置なども加えた「サポカーS」の2種類があります。

渋谷:高齢者事故の対策としても注目されています。

川端:実際、高齢者の事故の多くは、こうした安全装備のない古いクルマで起きています。最近は軽自動車のベーシックモデルでも、「サポカーS」の機能が標準装備されています。運転を続けることで元気を保てる高齢者の方も多い。だからこそ、「サポカーS」への乗り換えは、ご本人にもご家族にも大きな安心をもたらします。

高齢のドライバーによる事故を減らすため、国は「安全運転サポート車」の普及を進めています。自動でブレーキがかかる機能などを備えたクルマを、「サポカー」「サポカーS」という愛称で呼び、官民一体となって広く知ってもらう取り組みを行っています。
※1:マニュアル車は除く。
※2:車線維持支援装置でも可。
※3:自動切替型前照灯、自動防眩型前照灯又は配光可変型前照灯をいう。
※4:作動速度域が時速30キロメートル以下のもの。

高齢ドライバーの事故では、アクセルとブレーキを踏み間違えてしまうケースが少なくありません。そこで、自動ブレーキに加えて、踏み間違いによる急な加速を抑える機能を備えた「サポカーS」は、事故を防いだり、被害を小さくしたりする効果が期待され、高齢の方に特におすすめされています。「サポカーS」には、搭載されている安全機能の内容に応じたいくつかの種類があり、クルマ選びの目安として活用できます。

もしものときも、ひとりにしない。進化するロードサービス

渋谷:「家族を守る」という視点では、万が一のトラブル時にどう支えてくれるかも重要ですね。

川端:そのとおりです。近年は、クルマ本体の進化と並行して、ロードサービスの役割も大きく進化しています。故障や事故の際に24時間365日対応してくれる存在は、家族にとって非常に心強い“見えない安全装備”です。

渋谷:バッテリー上がりやパンク、キー閉じ込みなど、日常のトラブルは意外と多いですね。

川端:特に小さなお子さまを乗せているときや、ご高齢の方が運転している場合、路上で立ち往生する不安は大きなストレスになります。ロードサービスがあれば、専門スタッフが現場まで駆けつけてくれるという安心感があります。


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渋谷:BEVやPHEVならではのサポートもあるのでしょうか。

川端:はい。電欠時のレッカー移動や、最寄りの充電スポットまでのサポートなど、BEV特有のトラブルに対応したロードサービスが整備されつつあります。最近は、アプリと連携して現在地を自動送信できるなど、デジタル化も進んでいます。

渋谷:自分で状況を説明しなくても、ボタンひとつで助けを呼べるのは心強いですね。

川端:トラブル時は誰でも冷静さを失いがちです。「必ず助けが来る」という仕組みがあること自体が、家族を守る力になります。クルマ選びでは、車両性能だけでなく、付帯するロードサービスの内容まで含めて検討してほしいですね。

渋谷:走っているときだけでなく、止まってしまったときまで守ってくれる。それも現代のクルマの価値ですね。

川端:そうです。最新のクルマは、技術とサービスが一体となった「安心のパッケージ」へと進化しています。「家族を守る」という視点で見れば、その違いはとても大きいと思います。

お話を伺ったひと

川端由美氏

プロフィール
モータージャーナリスト。自動車専門誌や一般メディアでの執筆・解説を通じて、長年にわたり自動車技術と社会の関係を取材。電動化、コネクティッド、自動運転など次世代モビリティ分野に詳しく、政府の有識者委員を務めるなど、日本のモビリティ政策立案にも関わっている。技術を生活者の視点でわかりやすく伝える論考に定評がある。

渋谷ヤスヒト氏

プロフィール
モノジャーナリスト、編集者。1990年代にモノ情報誌の編集者として活動をスタート。以降、ジャンルを問わず、モノづくりの現場とつくり手たちを取材しつづけている。国内外の自動車メーカーの開発・製造現場を取材した記事も多数。1980年代後半のパソコン通信に始まるデジタルメディアの変遷の取材も続けてきた、“最初のオタク世代”。


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