おもちゃのハンドルの先にある未来のモビリティ社会クルマと育つ、子どもたちの可能性
クルマは移動手段であると同時に、子どもたちの成長に寄り添う大切な存在です。ここでは、クルマを通じて子どもたちの可能性を広げる、さまざまな「学び」の形を紹介します。その学びが未来のドライバーへの入り口であることはもちろん、将来の進路を考え、社会を支える人材へと育つきっかけにもなっています。
Edit & Text:Fumihiro Tomonaga
小さな手が触れる、クルマとのファーストコンタクト
子どもとクルマの関係は、驚くほど早い時期から始まります。言葉を十分に話せない幼児期でも、チャイルドシートから流れる景色を眺めたり、親が操作するハンドルやレバーに興味を示したりする姿は、多くの家庭で見られるはず。
「モンテッソーリ ビジーボード」はそんなクルマとのファーストコンタクトに最適なアイテムのひとつです。これはハンドル、スピードメーター、ギアシフトなど、クルマのダッシュボードを模してさまざまなパーツが配置され、3歳頃の子どもが安全に自由に遊べるように設計された木製の知育玩具。こうした“運転ごっこ”を通じて子どもの論理的思考や運動能力の発達が促されます。クルマへの親しみを深め、将来的に交通ルールや安全運転への意識を育てるための、最初の一歩ともいえるでしょう。
遊びながら学ぶ、交通安全とルールの大切さ
幼児期後半になり、タブレットやスマートフォンに触れる機会が増えると、子どもたちの学びは新たなステージへ。近年、注目を集めているのが、楽しみながら交通安全や社会のルールを学べる子ども向けアプリです。
例えば、BabyBusが提供する多彩なテーマの教育コンテンツ。YouTubeの映像やアプリを通じて世界12カ国の言語で展開されており、その中に「ベビーパンダのくるまワールド」や「リトルパンダのくるまのうんてん」といったクルマに関連したアプリも。かわいいふたごのパンダ、キキとミュウミュウと一緒に、前者はバスで街中を走って子どもたちを送迎したり、パトカーを運転して街の安全を守ったりと、クルマを使ったさまざまな職業体験が可能。一方、後者はレースカーで急な坂道、曲がり角などのコースを攻めてカーチェイスを繰り広げる運転シミュレーションゲーム。クルマを走らせる楽しさや感動を味わえ、ゲーム感覚でクルマ社会の全体像や基本的な運転スキルを身に付けていきます。
また、キッズスターが企業とコラボレーションをする社会体験アプリ「ごっこランド」では、NEXCO中日本と連携した「はしろう!こうそくどうろ」がラインアップ。高速道路を走りながら、散水車や標識車など「はたらくクルマ」や、点検作業をする「はたらく人」、あるいはサービスエリアの案内標識などを見つけてタップし、60種類以上もあるカードを集めていくゲーム。子どもたちは楽しみながら、高速道路が安全・安心・快適に保たれるための仕事や仕組みに触れ、興味を広げていきます。
家庭でこうしたアプリを親子で一緒に楽しむことは、単なる「遊び」以上の意味があります。「どうして信号を守らないといけないの?」「このクルマは何をしているの?」といった会話を通じて、子どもたちには多くの気づきが生まれます。そしてクルマと社会の関係性を少しずつ理解していくのです。
バーチャルからリアルへ
小学生になると、子どもたちの理解力と集中力は大きく向上し、より本格的な運転に挑戦したくなります。もちろんキッズ対応のサーキットやオフロードでの実車体験は大きな醍醐味ですが、今ではシミュレーターを活用した手軽な学びも可能です。
その筆頭といえるのが、プレイステーションで展開するリアルドライビングシミュレーター「グランツーリスモ」シリーズです。レーシングゲームの枠組みを遥かに超えて、本物のサーキットや道路、実在の車種を忠実に再現し、車両の挙動やドライビングテクニックをリアルに堪能できる最上級の体験で知られています。そこでは「ドライビングスクール」というクルマの発進・停車からコーナリング技術まで、レースに必要なテクニックを習得できるチュートリアルモードまで搭載。それ自体がひとつのゲームとしても楽しめ、何度もトライを重ね、段階的に腕前を磨けるようになっています。
ゲームで培った感覚は、リアルな運転へと自然につながっていくもの。5歳でこのゲームに出合い、のちにレーシングカートに挑戦、現在は本物のサーキットを疾走するカーレーサーになった冨林勇佑氏ほか同様のケースが複数あるなど、すでに才能あるプレイヤーを本物のレーサーへと導くキャリアパスの役割も果たしています。またレースやドライブのほかにも、クルマの収集やカスタマイズ、愛車の撮影などクルマに関するあらゆる楽しみ方を網羅しており、将来の本格的なカーライフの入り口として、まさに最適なイントロダクションといえるでしょう。
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さらに、社会で人と共存するために必要なクルマのルールの学習には、ナビタイムジャパンが提供する「運転免許の学習アプリ」が効果的です。最新の道路交通法に対応した約2,000問の問題が解説付きで掲載され、交通標識・標示一覧も搭載して利用料は無料。さくさくとゲーム感覚で交通ルールに親しむことができます。こうして早い段階から、将来の安全運転への意識の土台が築かれていくのです。
子どもたちがシミュレーターやアプリを通じて学ぶのは「速く走る技術」だけではありません。それは、スピードをコントロールする責任、他者への配慮、そして予測と判断の大切さ・・・運転には「命に関わる危険」も伴う面があることを、自然に理解していくはずです。
クルマを“つくる”未来へ
子ども時代にクルマへの興味を育んだ若者たちが、やがて選ぶ進路のひとつが、クルマづくりの現場。その最前線の学びの場といえるのが、東京都八王子市にある「トヨタ東京自動車大学校」です。中でも「スマートモビリティ科」は、従来の整備技術に加え、電動化、自動運転、コネクティッド技術といった「未来のクルマ」を支える最新の知識を学べる点が大きな特徴。「CASE」の技術革新が進む自動車業界では、機械工学や電気⼯学への深い理解をもつ⼈材が求められており、まさにその時代の要請に応えるカリキュラムとなっています。
そのため実習の充実度も秀逸。校内には電動⾞両が62台配備され、MIRAI、プリウスPHEVや超⼩型EV「C+pod」など最新の環境対応⾞に直接触れながら学べ、また3DCADを使った電動レーシングカーの設計製作といった実践的なプロジェクトも⽤意。3年生時の兵庫・淡路島のリチウムイオン電池の研究所や4年生時の静岡・富⼠スピードウェイなどでの研修、3年生以降でインターンシップや展示会見学などを行い、こうした「本物に触れる」体験こそが、卒業後の現場で即戦⼒となる技術者を育てる⼟壌となっているのです。
その一方で、「スマートモビリティ科」では大学併修によって学士号も取得でき、専門性と広い視野を両立させた人材の育成も目指しています。同科の鈴⽊秀明講師は学生たちに向け、こう語りかけます。「この学科は、校外授業を通したさまざまな経験ができることも魅⼒。幅広い知識と経験を得ることで、視野が広がり柔軟な考えがもてるようになります。あなたの夢はなんですか。スマートモビリティ科でともに学び、夢を実現してみませんか」
「クルマが好きだから、クルマで社会をもっと便利にしたい」─ そんな想いを抱いた学生たちが集い、学び、実習に取り組む日々。卒業後は、整備士のほか開発部門や販売エンジニアなど、さまざまな形でクルマ社会を支える人材として活躍していくそうです。彼らの中から次世代のモビリティ社会をリードする逸材が登場することが楽しみです。
次世代へ、受け継がれる責任と楽しさ
最後に気になるトピックをひとつ。それが「Japan Mobility Show 2025」で発表された「TOYOTA Kids mobi」コンセプトカーです。トヨタが10年後の未来を見据えて開発中の子ども向けのパーソナルモビリティで、「ともだち」として子どもの成長を促すUXを提供するとのこと。この「キッズ専用自動運転車」というコンセプトは、世界的にも珍しい試みといえます。詳細は明らかになっていませんが、これが実現した未来は、子どもとクルマの関係に、楽しく前向きな予想もつかない変化がもたらされるのでは、と今から期待が膨らみます。
クルマと子どもの関わりは、決して特別なものではありません。日常のドライブ、親子の会話、そして遊びや学びの中に、自然と存在しています。大切なのは、その時間を意識して大切にし、クルマがもつ本当の楽しさ・素晴らしい価値を伝えていくこと。
運転免許を取得できる年齢に達し、若者が初めてハンドルを握る瞬間。そのとき彼らが思い出すのは自分自身の原体験かもしれません。幼い頃に車窓から眺めた景色。ゲームを通じて身につけたコーナリングの感覚。そして、家族を乗せて運転する親の背中・・・ハンドルの先に広がるのは、単なる道路ではなく、クルマを介して広がる家族との大切な時間、安全で便利なモビリティ社会を支える力。子どもたちの未来そのものなのです。
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