時を超えて輝く、クルマと夢の記憶へトヨタ博物館で、珠玉の収蔵車を巡る旅

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愛知県長久手市にあるトヨタ博物館は、ガソリン自動車誕生から現代までの技術と文化の歴史を世界の代表的な車両約150台で紹介する自動車専門ミュージアムです。館内は「クルマ館」と「文化館」のふたつで構成され、単なるクルマの進化史にとどまらず、人とクルマがともに歩んできた歴史を、自然な流れで体験できます。クルマを入口に、その時代の空気やくらし、文化の移り変わりまで感じられるのが、この場所の魅力です。

Text:Reico Watanabe
Photo:Goki Kurimoto
Edit:Akio Takashiro(pad inc.)

クルマ館2階―自動車誕生の胎動を聞く

クルマ館2階のテーマは「自動車の黎明期から日本車の誕生」。ドイツで生まれた世界初の実用的なガソリン自動車とされる「ベンツ パテント モトールヴァーゲン(レプリカ)」(1886年)を起点に、1950年代までの世界の自動車技術・文化の歴史が8つのゾーンで紹介されています。

クルマ館2階に展示されているベンツ パテント モトールヴァーゲン(レプリカ)、1886年・ドイツ(写真右)

続く「パナール エ ルヴァッソール 6HP ワゴネット」(1898年・フランス)は、1898年に日本へ初めて持ち込まれたクルマとされる歴史的な一台。"日本初の輸入車"をめぐる長年の論争は、トヨタ博物館の学芸員がフランスで発見した古い雑誌の記事がエビデンスとなり、終止符が打たれました。

パナール エ ルヴァッソール 6HP ワゴネット、1898年・フランス(写真左)

1909年製の「フォード モデルT ツーリング」は、ヘンリー・フォードが流れ作業による大量生産を実現し、クルマを一部の富裕層のものから誰もが手にできる存在へと広げた、時代を変えた一台です。

フォード モデルT ツーリング、1909年・アメリカ。

1934年にアメリカ・クライスラー社が世に送り出した「デ ソート エアフロー シリーズ SE」は、流線型デザインを本格採用した先駆的な存在。

デ ソート エアフロー シリーズ SE、1934年・アメリカ(写真手前)

そして、ひときわ目を引くのが、豊田自動織機製作所が1936年に完成させたトヨタ初の量産乗用車「トヨダAA型乗用車(レプリカ)」です。純国産への強い意志を感じさせる流麗なフォルムは、「デ ソート エアフロー シリーズ SE」などの影響を受けながらも、日本の自動車産業の原点を今に伝えます。

トヨダAA型乗用車(レプリカ)、1936年・日本。

このフロアには自動車産業史常設展示「クルマづくり日本史」も設けられています。動く年表、4面の大型スクリーン、タッチパネルなどを駆使した包括的な日本の自動車産業史の常設展示は、世界でも例の少ない先進的な試み。70年に及ぶ日本のクルマづくりの軌跡が、鮮やかに甦ります。

クルマ館3階―モータリゼーションが花開いた時代へ

「モータリゼーションの進展と多様化」をテーマとする3階では、1950年代から現代に至る名車たちが圧巻の光景で迎えてくれます。

「トヨタ ランドクルーザー FJ25L型」(1957年)は、過酷な地形をものともしない耐久性で世界各地に活躍の場を広げ、「道なき道の伴侶」として愛されるブランドの礎を築きました。

トヨタ ランドクルーザー FJ25L型、1957年・日本。

「トヨタ 2000GT MF10型」(1967年)は、日本初の本格グランツーリスモとして誕生し、世界に“日本車の美と性能”を知らしめた伝説の一台。低く構えたロングノーズ、官能的なボディライン―半世紀以上を経た今も、その美しさは色褪せていません。

トヨタ 2000GT MF10型、1967年・日本。

「トヨペット クラウン RSD型」(1955年)には高度経済成長の記憶が、そして「トヨタ プリウスNHW10型」(1997年)には、世界初の量産ハイブリッド車として環境とクルマの関係を問い直した静かな革命が刻まれています。過去と未来をつなぐ橋として、このフロアの掉尾を飾るにふさわしい存在です。

クルマ館3階に展示されている初代クラウン(トヨペット クラウン RSD型、1955年・日本)。
トヨタ プリウス NHW10型、1997年・日本。

文化館へ―クルマが映し出す、人の営みと美の世界

文化館2階にある「クルマ文化資料室」。

文化館2階の「クルマ文化資料室」では、「移動は文化」をテーマに200,000点以上の資料から約4,000点を展示。約800台のミニチュアカー(1/43模型)が時代順に並ぶ大型ケースは圧巻で、実車ではすくいきれない時代の流れを俯瞰できます。

約800台のミニチュアカー(1/43模型)が時代順に並ぶ大型ケースは圧巻。

フランスのガラス工芸家ルネ・ラリックが製作したガラス製カーマスコット全29種類の常設展示は世界でも珍しく、光を受けて輝くその造形は、クルマが美の媒体でもあった時代の粋を伝えています。

カーマスコットとは、1910年頃から1930年代前半にかけて、目印、お守り、ファッション、自己表現の一環として流行した、クルマを飾るアクセサリー。

文化館3階の「クルマの図書室」は、開架式の書棚に書籍・雑誌・カタログが約13,000点(うちカタログ約3,500冊)揃い、閉架書庫を合わせた蔵書は約250,000点。

文化館3階の「クルマの図書室」。

お子さま向けの「のりもの・えほん・としょしつ」も併設され、子どもから大人まで世代を問わずクルマへの知的好奇心を育める場です。なお、文化館1階・3階は入館券不要の無料ゾーンです。

お子さま向けの「のりもの・えほん・としょしつ」

五感で楽しむ―レストラン、カフェ、ショップ

クルマ館1階のミュージアムレストラン「AVIEW」では、洋食を中心としたランチを楽しめます。長年愛される名物「トヨタ博物館カレー」や月替わりの「シェフのこだわり旬ランチ」、「2000GTドッグ」などオリジナルメニューも充実。入館券なしでも利用できます。

クルマ館1階のミュージアムレストラン「AVIEW」。

文化館1階のミュージアムカフェ「CARS & BOOKS」は、こだわりの名店のコーヒーと紅茶、焼菓子とともに、クルマを新たな視点で楽しめる書籍が並ぶ心地よい空間です。

文化館1階のミュージアムカフェ「CARS & BOOKS」。

文化館1階のミュージアムショップでは、名物カレーのレトルト版やトヨダAA型のダイキャストモデル(1/43)、スパナ型の「スパナスプーン・スパナフォーク」など、オリジナルグッズが揃います。一部の商品はオンラインストアでもお買い求めいただけます。

文化館1階のミュージアムショップ。

クルマの歴史とともに、自分の時間を歩む

トヨタ博物館をめぐる時間は、単なる観覧ではありません。一台一台の前で立ち止まるたびに、設計者たちの情熱、時代の鼓動、次の時代への希望が静かに伝わってきます。知れば知るほど、クルマは深い。その奥行きに触れる一日を、ぜひトヨタ博物館でご体験ください。

企画展「熱狂を生む技術者たち-'80-'90年代 日本のクルマとオートバイ-」

企画展メインビジュアル。

1980〜1990年代の日本車をテーマとした企画展の第二弾が、2026年4月10日(金)から2026年7月12日(日)まで、文化館2階 企画展示室にて開催されます。この時代の若者を熱狂させたクルマとオートバイ。その誕生の裏には、「世界に追いつけ」「真の世界一に」と、立ちはだかる壁を前にしても情熱を燃やしつづけた技術者たちの姿がありました。

今回の企画展では、当時の車両開発に関わる“中の人”=技術者に焦点を当て、国内自動車メーカーとオートバイメーカー8社の協力のもと、車両17台を展示。トヨタ博物館として初となる本格的な四輪・二輪の同時展示です。四輪ではトヨタ スープラJZA80型(1993年)、ホンダ NSX(1991年)、日産 スカイライン GT-R Vスペックll(2000年)、など、二輪ではカワサキ GPZ900R(1984年)、ホンダ VFR750R RC30(1987年)、ヤマハ YZF-R1(1998年)など、あの時代を彩った名車が一堂に集います。

トヨタ スープラ JZA80型、1993年。

関連イベントとして、1980〜1990年代の日本車オーナーズミーティング「第2回 Classic Car Meeting」(2026年5月16日(土)開催)や、元開発責任者をゲストに迎えた特別講演会「榊原館長が聴く!」(第1回:2026年5月16日(土)、第2回:2026年6月6日(土)開催)も予定されています。クルマとオートバイ、双方の開発秘話に触れる、またとない機会です。

トヨタ博物館

住所:愛知県長久手市横道41-100
電話番号:0561-63-5151(代表)
開館時間:9時30分~17時(入館受付は16時30分まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
入場料:大人1,200円、シルバー(65歳以上)700円、中高生600円、小学生400円、未就学児無料(いずれも税込み)
※文化館1階、3階は無料でご入場いただけます。
※TS CUBIC CARDをご提示のうえ、カードでお支払いいただくと、入場料が200円引き(小学生は100円引き)となります。(割引対象外期間あり)
公式WEBサイト:https://toyota-automobile-museum.jp/

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