OGAWA COFFEEコーヒーを革新する実力派ギア「エアロプレス」とは? Photo:Fumito Kato
コーヒーには実に多彩な抽出方法があり、器具の選択によって異なる味わいが引き出せます。それが面白さである反面、初心者にとっては敷居が高く感じてしまうことも。高価なマシンも高度な抽出技術も必要なく、誰でも簡単に美味しいコーヒーを淹れられるという、そんな夢のようなコーヒー抽出器具、「エアロプレス」をご存じでしょうか?
大のコーヒーファンが生んだ新抽出法
エアロプレスの開発を手掛けたのは、コーヒーとは無縁のアウトドア用スポーツ玩具メーカーであるエアロビ社(現:AeroPress, Inc.)。創業者のアラン・アドラー氏は、これまで40以上の特許を取得し、飛距離のギネス記録を持つフリスビーの製作者としても知られるエンジニアです。
大のコーヒー好きで、何種類もの家庭用コーヒーメーカーを試しその味に失望した彼は、自らの手で新たな抽出道具の開発を決意します。約6年間にも及ぶ研究で、コーヒーの抽出過程におけるすべての変数が味にどう影響するかを分析し、理想的な抽出過程変数を定義。それを実現可能な50以上のプロトタイプを試作した末に、2005年エアロプレスは誕生しました。
空気圧で淹れるエアロプレスのメカニズム
コーヒーの粉を湯に漬け込む「浸漬式」と、ドリッパ―内の粉に湯を通す「透過式」の2つ抽出方法を組み合わせ、名前のとおり空気圧で抽出するのがエアロプレスの特徴です。
抽出の手順は、チャンバー内に粉と湯を入れパドルで撹拌し、プランジャーで密閉して押し込むことで、空気圧により液体がフィルターを通して抽出されます。ハンドドリップのような技術は一切不要。粉と湯が触れている時間が約1分と短いため、雑味のないクリーンな味に仕上がり、抽出時の圧力により豆の個性はしっかりと引き出すことができるのです。
エアロプレス最大の魅力は、エスプレッソのような濃厚さから、ペーパードリップのようなクリーンさまで、豆の量や挽き目、湯量の調整でさまざまな味を表現できる自由度の高さ。粉の量が多く、湯量は少ないほど味わいは濃くなり、挽き目が細かいほど豆の個性が出やすいですが、雑味やえぐみも多くなるもの。アドラー氏の定義した変数は絶対的なものではなく、それを変えることで好みの味わいを探究できる奥深さがこの器具にはあります。
また、水を使ったコールドブリューやミルクで抽出液を割るなど、世界中の愛好家による多様なレシピが存在する点も、エアロプレスの面白さといえるでしょう。
小川珈琲直伝。プロ推奨のホットコーヒーレシピ
近年では、その利便性の高さからカフェなどでも多く使用されているエアロプレス。日本の総代理店でもある老舗コーヒーロースター『小川珈琲』では、これまでさまざまなレシピを研究してきました。そんな同店が提唱している、最もベーシックなホットコーヒーの淹れ方をここで紹介しましょう。
必要な物
- エアロプレスコーヒーメーカー一式
- サーバー(マグカップでも可) ※上から押しても割れないものをご利用ください
- ケトル
- スケール
- コーヒー粉(中挽き~細挽き)22g
- 湯(91~92℃)
淹れ方
- キャップにペーパーフィルターをセットし、湯で紙の匂いを洗い流し密着させる
- キャップをチャンバーにはめる
- スケールの上にサーバー、チャンバー、ファンネルの順にセットし、粉を入れる
- ファンネルを外して120gの湯を注ぎ、パドルを使って10~12回ほど優しく混ぜる
- すぐにプランジャーを被せてチャンバー内を軽い真空状態に保ち、30秒ほど蒸らす
- プランジャーを垂直に一定の速度で押し下げ、空気の抜ける音がしたら抽出完了。最後まで押し切った際に出てくる泡は、苦みや雑味になるため、極力液面に落とさない
このレシピはかなり濃いめにコーヒーが抽出されるので、湯を130g足した「アメリカーノスタイル」という飲み方がおすすめです。
エアロプレスに合うコーヒー豆セレクション
“シングルは風土が造る、ブレンドは人が造る”というウィスキーの表現は、コーヒー豆にも共通しています。豆の個性を引き出すことに長けたエアロプレスで、その魅力を存分に味わいたいもの。そこで、小川珈琲で扱うコーヒー豆の中から、エアロプレスに最適な4種類の豆をセレクトしていただきました。
「ブラジル ハイーニャ」
ナッツを思わせる芳しいアロマと優しい甘さがあり“これぞブラジル”という魅力が凝縮されています。
「インドネシア ウーマン イサク オランウータンコーヒー」
クローブのようなスパイシーな風味と、キャラメルのような甘さが後味まで続く余韻の長さが特徴。
「ハウスブレンド京都」
ブラジル、グアテマラ、エチオピアの豆をブレンドし、小川珈琲が目指す“ボディ感のある飲み飽きしない味”を体現。
「ケニア ガチュヤニ」
レモングラスのようなフレッシュな香りとパッションフルーツのような華やかな酸味に、爽やかな柑橘類のフレーバーが感じられます。
いつもの家コーヒーをエアロプレスでアップデート
手軽に美味しいコーヒーを淹れることから、自分好みの味わいの探究まで、あらゆるニーズに応えてくれるエアロプレス。比較的新しい抽出方法でありながら、その使い易さと汎用性の高さから世界中に広まり、2008年からは優れた淹れ方・味わいを競う世界大会も開催されている人気ぶりです。
コーヒー1杯をたった1分ほどで淹れられ、湯の注ぎ方などのテクニックも要らず、上質な味わいを初心者から上級者までレベルに応じて楽しめるエアロプレス。これひとつ持っているだけで、コーヒーの愉しみは無限に広がるでしょう。
詳しい情報・お問い合わせ
OGAWA COFFEE LABORATORYオンラインショップ
https://www.ogawacoffeelaboratory.com/