吉田直樹の『アイアンショット・バイブル』
VOL.3 正しいテークバックについて(1)
主に地面の上から打つことが多く、ライや芝の状況などにショットの成否が左右されやすいクラブがアイアン。でも、ボールに対してしっかりコンタクトするテクニックを身につければ、ミスが激減し、グリーンをとらえる確率も飛躍的にアップします。谷原秀人プロ、上井邦裕プロ、小祝さくらプロ、脇元華プロらを指導する吉田直樹コーチが、テークバックの”正解”を2回にわたってお伝えします!
撮影協力/アクアラインゴルフクラブ(アコーディア・ゴルフ)
右肩と右腰を切り上げる
前回で正しいアドレスが完成しました。続いてはスイングの始動であるテークバックに移りましょう。
テークバックでは右肩と右腰を左上(左肩の上あたり)の方向に回していきます。
肩・腰を回すというと、横方向の回転をイメージする方が多いと思いますが、それではスウェイになってしまいがちです。
「左上方向に回す」あるいは「切り上げる」ことを意識すると、上体が右にずれることはありません。
このとき、「右ひざの角度を変えてはいけない」「体重移動する」といった固定観念は捨ててください。
遠くに飛ばすためには、テークバックで体が縮んでいると力が出ません。体が伸びることで、上にベクトルがかかります。そしてダウンスイングでは縮んで下にベクトルがかかり、さらにフォローではまた伸びて上にベクトルがかかる。上(伸びる)→下(縮む)→上(伸びる)とV字状にベクトル差が生まれ、より重力も生まれることで、飛距離につながります。
地面に対してどれだけV字のシャープなアングルを作れるかが大切なのです。
テークバックは右肩と右腰を切り上げるだけの意識でOKです。腰が回転するのを我慢する必要はありません。捻転差をつけようと、腰を正面に向けたままにしようとしても無理な話で、右腰は逃げてしまいます。それでも本人は、肩が回って捻転差がついた気になっている……というのがよくあるパターン。また、腰を痛める原因にもなりかねません。
右肩と右腰を切り上げることで、捻転差はできます。なので、意図して自分で作ろうとしないよう注意しましょう。
体重はアドレスの位置と同じ。左に7割なら7割、8割なら8割のまま、変わらないようにトップまで行ってください。
また、「左7:右3」が「左8:右2」になったり、「左8:右2」が「左9:右1」と、さらに左足に乗る感覚を持つ方もいるかもしれませんが、それだけより左サイドに加圧されている証なので、それで問題ありません。
正しいテークバックを体感するドリル
テークバックの感覚をつかむドリルをご紹介します。
アドレスの構えを作ったら、右足を真後ろに引きます。このとき、右足かかとが上がってもかまいません。左足体重がより強調されたこの姿勢から、さらに左にもたれかかるように、右肩と右腰を回していきます。すでに左サイドに十分乗っているので、回すというか、肩と腰を真上に上げる感じでいいでしょう。
「肩と腰のアングルが右サイドのほうが高い」というイメージを持ってください。
このアングルが崩れると、ダウンスイングで体が右側に倒れてダフリやトップになってしまいますし、距離も出ません。
窮屈そうに見えるかもしれませんが、実際には右足を引くことで右サイドにスペースができるので、やってみるとそうでもありません。右肩と右腰が高いトップができれば、あとはダウンでクラブが勝手に落ちてきて、ボールに当たります。
ボールを打つ体勢をトップでしっかり作るためにも、このドリルをぜひ試してみてください。
吉田 直樹(よしだ なおき)
幼少期から過ごしたアメリカ・ニューヨークでゴルフを始める。オーストラリアの大学で5年間、オーストラリア女子ナショナルチームのコーチに師事。その後、アジア、日本、アメリカでプロツアーを転戦しながら世界のトップコーチからレッスンを受ける。2014年、兵庫県芦屋市にインドアゴルフ練習場『ゴルフ ラ・キンタ』をオープン。現在は谷原秀人、上井邦裕、小祝さくら、脇元華など男女ツアープロを指導している。