迫力と癒しを求めて。海の王者たちのいる楽園へ海獣のいる水族館

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城崎マリンワールドのゴマフアザラシ「あずき」。

広大な海の青を前に、底知れぬ存在感に圧倒される瞬間。それは、海の中にこの地球上で最大の生態系が息づいているからかもしれません。今回は、海という別世界にくらしながら、私たち人間と同じ哺乳類である「海獣」に注目します。スポットを当て、彼らの力強さや優雅さ、そして人間とは異なる“生命のリズム”にふれる少し特別な旅へご案内します。

Text:Sei Igarashi
Edit:Akio Takashiro(pad inc.)

海獣たちの知られざる魅力

思わず「怪獣」と呼びたくなるほど巨大で、圧倒的な存在感を放つ海の生きものたち。その素顔を少しのぞいてみましょう。

「海獣」とは、海にすむ哺乳類の総称で、大きく3つに分類されます。クジラやイルカ、シャチなどの「鯨(げい)類」、ジュゴンやマナティーといった「海牛(かいぎゅう)類」、そしてアシカやアザラシ、セイウチなどの「鰭脚(ききゃく)類」。これらにラッコやホッキョクグマを含めて、広く“海獣”と呼ばれています。

魚類などとの決定的な違いは、母乳で子を育てる「哺乳」の機能をもつこと。乳を吸うために発達した頬や唇は、表情筋によって支えられています。その結果、海獣たちは目や口元を動かし、まるで笑ったり困ったりしているかのような豊かな表情を見せてくれます。ふとした瞬間の愛らしい顔つきや、意志を感じさせる眼差しに私たちが親近感を覚えるのは、同じ哺乳類として通じ合うものがあるからなのかもしれません。

興味深いのが、彼らの“進化の道筋”です。祖先は海から陸に上がった哺乳類だといわれていますが、それが長い時間をかけて、再び海へと帰っていった・・・。水族館で深い水槽の中をゆったり泳ぐジュゴンやマナティーを見ていると、「陸よりも安心してくらせる」と判断したのだろうか、と想像がふくらみます。そんな神秘性もまた、海獣たちの魅力です。

一方で、彼らは海洋生態系の上位に位置する存在でもあります。例えば、「海の王者」と呼ばれるシャチは、生態系の頂点にたつ捕食者でありながら、決して無秩序にほかの生物を襲うことはなく、海の食物連鎖を制御して生態系のバランスを保つ役割を担っていると考えられています。海獣を知ることは、美しさや迫力を楽しむと同時に、海という巨大な生態系のしくみを垣間見ることでもあるのです。

心洗われるひとときを求めて、水族館へ

普段は陸上でくらす私たちにとって、野生の海獣に出合う機会はそう多くありません。そこで訪れたいのが、日本全国に点在する水族館です。

近年の水族館は、単に生きものを見せるだけでなく、生息域を再現して本来の野生味や美しさを引き出す展示が増えています。まるで海の中に身を置いているような没入感のある空間は、子どもたちの発見・驚きの場であるだけでなく、大人が日常の喧噪を忘れて心を解き放つサンクチュアリでもあります。

また、環境問題などのテーマを通じて知的好奇心を刺激する企画展示や、飼育員との対話を通じて海獣たちの生態や環境に想いを馳せる時間は、私たち自身のくらしを見つめ直すきっかけにもなるでしょう。

海獣のいる水族館4選

次の休日は、家族や大切なパートナーを誘って、海獣たちの息づかいを感じる旅へ。日本を代表する4つの「海獣の楽園」をご紹介します。

北海道・おたる水族館
荒波とともに生きる、北の海獣たち

日本海に面した国定公園内に位置し、北海道ならではの雄大な自然を感じられる水族館。セイウチ、トド、アザラシ、イルカ、さらには世界的に見ても飼育例の少ないネズミイルカまで、全8種類もの海獣が勢揃いしています。

なかでも、天然の入り江をそのまま取り込んだ「海獣公園」は必見。荒波が打ち寄せるダイナミックなプールで、数十頭のアザラシやトドが限りなく野生に近い姿でくらしています。

アザラシの飼育頭数は日本一。日本近海に生息する5種類のうち、ゴマフ・ゼニガタ・ワモン・アゴヒゲという4種類のアザラシが揃うのは珍しく、ワモンアザラシは世界ではじめて繁殖に成功した実績をもちます。

水槽という境界線を超えた大自然のドラマとの遭遇も醍醐味のひとつです。野生のアザラシがすぐ近くの岩場で休息していたり、トドが外海から防波堤を乗り越えてプールに入ってきたり。運がよければ、上空を舞うオオワシやハヤブサに出合えることもあります。

冬季は積雪のため「海獣公園」はお休みになりますが、館内ではこの季節ならではの感動を味わえます。流氷をイメージした「凍るど!プール」の中をゴマフアザラシが元気いっぱいに泳ぐ姿を間近で観察できるほか、「イルカスタジアム」では、バンドウイルカやオタリアが水中でエサを食べたり遊んだりする様子を解説付きで楽しめます。季節ごとの出合いを求めて、足を運んでみてはいかがでしょうか。

おたる水族館

近くの岬から望む「海獣公園」とおたる水族館本館。まさに海を仕切っただけ。高波や吹雪など、自然そのもの。
ジェンツーペンギンには雪がよく似合う。冬は「ペンギンの雪中さんぽ」で来館者の目を楽しませてくれます。
海とつながった展示プールのゴマフアザラシ。お客さまが少なくなる夕暮れどきにはこんな表情も見せます。
トドの母子。新しい命の誕生は誰から見ても感動的です。
ワモンアザラシの「ルル」の生まれた当時の写真。自分で雪洞を掘って身を隠します。まさに野生の本能です。

住所:北海道小樽市祝津3-303
電話番号:0134-33-1400
冬期営業期間:2025年12月13日(土)~2026年2月23日(月・祝):10時~16時(最終入館 15時30分)
休館日:2026年2月24日(火)~2026年3月13日(金)
※時期により営業日・営業時間が異なるため公式WEBサイトでご確認ください。
冬季営業期間 入場料:大人(高校生以上)1,300円、小中学生500円、幼児(3歳以上)300円(いずれも税込み)
アクセス:札樽自動車道・小樽I.C.から約20分
駐車場:あり
URL:https://otaru-aq.jp


千葉県・鴨川シーワールド
圧巻のパフォーマンスが伝える生命の輝き

アザラシ、アシカなど10種もの鰭脚類(ききゃくるい)やシャチを飼育する「海獣の聖地」。鴨川シーワールドが掲げるのは、「生命の輝きとありのままに向きあい、心とからだでふれあう歓び」を来館者と分かちあうことです。太平洋を望むロケーションを活かし、岩礁帯や砂浜など海の世界をリアルに再現した展示エリアでは、海獣たちのくらしぶりを、海辺を散策するような気分で眺めることができます。

ここを語るうえで欠かせないのが、海獣たちの高い知能と運動能力を引き出したパフォーマンスです。体長5メートル、体重2トンを超える海の王者シャチとトレーナーが一体となって繰り広げるパフォーマンスは圧巻の一言。迫力満点のジャンプやターンに、思わず息をのみます。また、ベルーガのパフォーマンスでは、イルカの仲間が使用する、音を使ったコミュニケーションについてモニター映像でわかりやすく解説。“海のカナリア”と呼ばれる澄んだ鳴声を聞いていると、大人も童心に帰ってしまいそうです。

想い出に彩りを添えるなら、シャチが泳ぐ姿を水槽越しに眺めながら食事を楽しめるレストラン「オーシャン」へ。家族でのランチやナイトプランなどで少し贅沢なディナーに利用すれば、海の世界に招かれたゲストになったような至福の時間を過ごせます。

迫力満点のシャチの「スカイロケット」。
ガラス面に向かって泳いでいるワモンアザラシの「マル」。
ゴマフアザラシの「みらい」のくつろぎタイム。茶柱のようにも見える立ち泳ぎ。
アゴヒゲアザラシの「バンク」のお昼寝姿。
ベルーガの「ナック」。ベルーガはカナリアのような高い鳴き声が特徴的です。

鴨川シーワールド

住所:千葉県鴨川市東町1464-18
電話番号:04-7093-4803
営業時間・休館日:時期により異なるため公式WEBサイトにてご確認ください。
入場料:1DAYチケット:大人(高校生以上)3,300円、小人(小中学生)2,000円、幼児(4歳以上)1,300円、60歳以上3,000円(いずれも税込み)
アクセス:館山自動車道・君津I.C.より約60分
駐車場:あり
URL:https://www.kamogawa-seaworld.jp


三重県・鳥羽水族館
海の“やさしき巨人”ジュゴンに出合える

一度は見てみたい魅惑の海獣、ジュゴン。人魚伝説のモデルともいわれるその姿に、日本で唯一出合えるのが鳥羽水族館です。同館では1977年からジュゴンの飼育研究に取り組み、世界長期飼育更新中の雌のジュゴン「セレナ」が来館者を出迎えます。ゆったりと海草を食べる姿は、まさに“やさしき巨人”という言葉がぴったり。悠々と泳ぐ姿が心を和ませてくれることでしょう。

ジュゴンと同じ海牛類(かいぎゅうるい)のアフリカマナティーの飼育にも成功し、2つの種を見比べられるのも世界で唯一の展示です。彼らの姿から大きな癒しを享受するとともに、環境変化がもたらす藻場の減少などにより、生息数が減って絶滅が危惧される現状に想いを馳せることも、この場所ならではの貴重な体験です。

もちろん、愛くるしいラッコも見逃せません。「ラッコのお食事タイム」では、お腹の上に貝やおもちゃを乗せる仕草に加え、ガラス面にジャンプしてイカをとる軽快な姿が見られることも。さらにアシカショーやセイウチとのふれあいタイムなど、海獣たちの魅力を間近で感じられるプログラムも充実しています。

伊勢志摩観光や伊勢神宮参拝とあわせて訪れれば、旅程にやさしい海の時間が加わります。

ジュゴンの「セレナ」。
ガラス面にジャンプしてイカをとるラッコの「メイ」。
アシカショー。ミナミアフリカオットセイやカリフォルニアアシカ、オタリアなどのアシカの仲間が登場します。
アフリカマナティーの「みらい」。

鳥羽水族館

住所:三重県鳥羽市鳥羽3-3-6
電話番号:0599-25-2555
営業時間:9時30分〜17時00分(最終入館16時)※時期により変更あり
休館日:年中無休
入場料:大人2,800円、小中学生1,600円、幼児(3歳以上)800円(いずれも税込み)
アクセス:東名阪伊勢自動車道・伊勢I.C.より約15分
駐車場:あり
URL:https://aquarium.co.jp


兵庫県・城崎マリンワールド
日本海を背に繰り広げられる“自然の劇場”

断崖絶壁の日本海を背に、アシカやアザラシが泳ぎ、潜り、鳴く。海と地形を活かした立体的な展示により、まるで“自然の劇場”のような臨場感を味わえるのが城崎マリンワールドです。

「水族館以上、であること」をコンセプトに掲げる同館は、2025年7月に大規模なリニューアルを完了。海獣たちが目の前で躍動するアスレチックフィールド「TUBE」やショーエリアが一新され、よりダイナミックな空間へと進化しました。12メートルの巨大横長チューブでは、アシカが目の前を飛ぶように泳ぎ回り、トドプールではトドの豪快なダイビングを間近で目撃することができます。

ここでの体験は、観るだけにとどまりません。潮の干満を演出したプールで行われる「アザラシのロッククライミング」など、海獣たちの驚くべき身体能力や生態の特徴を、発見と驚きをもって知ることもできます。

また、飼育員と来館者の距離が近いのも魅力のひとつ。水族館の裏話などを聞けるトークイベントや、青い魚のはてなマークをつけたスタッフに気軽に質問できるサービスが充実しており、双方向のコミュニケーションを通じて知的好奇心を存分に満たしてくれます。

名湯・城崎温泉からもアクセス良好。温泉情緒とあわせて“海獣たちとの特別な時間”を楽しむ旅へでかけてみませんか。

2025年7月にリニューアルを完了したアスレチックフィールド「TUBE」。
アザラシのロッククライミング。
「TUBE」でくらしているアシカの「トイ」。
なかよく過ごすトドの「ハマ&コノハ」。
愛くるしいペンギンたちのお散歩。

城崎マリンワールド

住所:兵庫県豊岡市瀬戸1090
電話番号:0796-28-2300
営業時間:9時30分〜16時30分(最終入館16時)※時期によって異なります。くわしくは公式WEBサイトをご確認ください。
休館日:不定休(公式WEBサイトをご確認ください)
入場料:大人2,800円、小中学生1,400円、幼児(3歳以上)700円(いずれも税込み)
アクセス:北近畿豊岡自動車道・豊岡出石I.C.から約25分
駐車場:あり
URL:https://marineworld.hiyoriyama.co.jp


ご紹介した施設についての共通の注意事項

イベントなどは日によって異なることがあるため、来館前に公式WEBサイトで最新情報をご確認ください。

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