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気になるトヨタ車ヤリスの人気の理由は、
“新二刀流”の個性にあり
text:Koji Ozawa photos:Toyohiro Zenita

Car

2020年2月に発売し、4、5月と連続して国内登録車販売でトップに躍り出た新型車「ヤリス」(※)。かつてのヴィッツの名前から、グローバル名に統一されたトヨタの新型コンパクトハッチバックはなぜ売れるのでしょうか。今までありそうでなかった“新二刀流”戦略を自動車ジャーナリスト、小沢コージが読み解きます。
(※)一般社団法人日本自動車販売協会連合会「乗用車ブランド通称名別順位」による

“スペース系”全盛の国内市場で一体なぜ?

正直、驚いた。新型車ヤリスのあまりの人気の高さにだ。2月に国内で発売されるや否や、4月と5月は軽自動車を除く全乗用車マーケットで2カ月連続1位。ここ数年、トヨタ・プリウスやアクアなど、登場したばかりのコンパクトSUV・ライズが1位になることはあっても、ヤリスの前身であるヴィッツがトップに近付くことはほとんどなかったのに。

なぜなら現在の日本の乗用車マーケットは完全に、“スペース系”を中心に動いている。要はボディサイズのわりに車内スペースが広いクルマだ。具体的には、ミニバンのノア、ヴォクシー、エスクァイア兄弟や、ラージミニバンのアルファード、ヴェルファイアなど。軽自動車も背が高くて中が広いスーパーハイトが大人気だし、4月の登録車ランキング(日本自動車販売協会連合会)にしろ、各ブランドにまたがる車名違いの兄弟車を集約すると驚くべき結果となる。

1位は前述ヤリスだが、2位はトールワゴンのトヨタ・タンク&ルーミー、ダイハツ・トール、スバル・ジャスティ兄弟で、3位は前述ノア、ヴォクシー、エスクァイア兄弟。4位はホンダ・フィット単独で、5位は再びトヨタ・ライズ、ダイハツ・ロッキーの兄弟。ライズ&ロッキーのコンパクトSUVをスペース系と見なすかどうかは判断が分かれるが、4月の実質ベストを見ると7車種がスペース系。スタイルと走りに振ったクルマは正直人気とはいい難い。

だが、新型車ヤリスは明らかにスタイルと走りに振りきったクルマだ。新車発表会場で末沢泰謙チーフエンジニアを直撃してみたところ「サイズはあくまでも小ささにこだわり、軽く作りました。全長もはじめて現行をキープし、5ナンバーを守りました。既成概念を突破したいというか、コンパクトというクラスを突破したいんです」と語った。

今までとは一線を画す爽快なコンパクト

事実、全長3,940mm×全幅1,695mm×全高1,500mm(2WD車)と、旧型比で全長は5mm短く、アンテナ分を除くとルーフは約30mmも低くなる。車内はホイールベースを40mm伸ばしたおかげで足元がゆったりしており、その他車内スペースは旧型同等。ラゲッジも同様だ。

その一方、見た目のパーソナル性やスポーツ度は明らかに増している。フロントフェイスは旧型ヴィッツとの共通性を残しつつ、目ヂカラが増し、フロントノーズがより際立つスタイリングに。後ろ姿はリヤコンビネーションランプ間が棚のようなガーニッシュでつながれ、ちょっとしたスポーツカーのようだ。

さらに圧倒的なのは走りの質感である。現行カローラやプリウスなどに使われている新世代骨格のコンパクトカー版、TNGA GA–Bプラットフォームを初採用。これまでより剛性が高いのはもちろん、重心も低くなり、乗るとドライバーとの一体感がもの凄い。

小沢は最初に新設計の1.5Lダイナミックフォースエンジン車に乗ったが、乗るなり「コイツはスポーツカーか?」といいたくなるほどのダイレクト感だ。足回りがほどよく締まっていて、それでいて余計な振動が入って来ないのと同時に、ステアリングを切った瞬間のレスポンスがいい。まさに思った通り、ノーズが左右を向いてくれる。

さらに1.5Lエンジンだが、ノンターボでピークパワー&トルクは120PS&145N・mとスペック的には特別パワフルではないが、プラットフォームの軽量化でほぼ1tという車重と、発進用に1速ギアを設けたダイレクトシフトCVTが効いている。アクセルを踏んだ瞬間、間髪入れずにボディが加速し、従来のCVTのイメージは皆無。ちょっとしたMT車にでも乗っているような加速感が味わえるのだ。

スポーティなエコの顔を持つハイブリッド車

かたや、意外にもそれに輪をかけてスポーティだったのが本来エコなキャラクターであるはずの新作1.5Lハイブリッド車だ。こちらもエンジンは基本前述と同じダイナミックフォースエンジンで単体では91PS&120N・mのピークパワー&トルクを発揮する。だがそれ以上に80PS&141N・mのモーターと組み合わさるともの凄く速い。合算出力は未公表だが体感的には150PSぐらいありそうな勢いで1tちょいの軽量ボディをグイグイ引っ張る。しかも今まで以上に発進時の電動加速感が凄く、特にバッテリーが充電され、エンジンが動いてない状態だと、ちょっとしたEV並みの感覚で走れるのだ。

さらにこの新作ハイブリッドが凄いのは、実燃費も恐ろしくいいこと。WLTCモードのカタログ燃費で最良36km/Lを記録するだけでなく、小沢が時速60km程度で環状線を走ったところ、実測32.5km/Lを記録。このままゆっくり走ればもっとよくなりそうだった。正直、小沢はいくらハイブリッドとはいえ、普通に走って30km/L台を記録する乗用車に今まで乗ったことがない。これはまさしく新時代の到来だと思った。

そしてこのあたりから感じていたのだ。新型車ヤリスの魅力は一面では語れないことを。怪人二十面相ではないが、二面、三面といくつもの魅力を備えたクルマなのである。これは“新たな二刀流”といえる。

パッと見は、今時の日本向けコンパクトとして主流とはいい難い欧風のスタイリッシュ・ハッチバックだ。スペースより凝縮感あふれるスタイリングが自慢の個性派で、下手をするとイタリア車やフランス車ユーザーが乗り換えてもおかしくないほど。乗り心地とハンドリングの両立度は欧州コンパクト顔負け。

その一方でハイブリッド車は違った客層にも訴求する。ハイブリッドマニアであり、低燃費カーを求める客層だ。事実、楽に実燃費30km/Lをたたき出す実力は、現行のプリウスやアクア、他社製ハイブリッドの比じゃない。マジメな話、この低燃費性能だけでも欲しくなる! といいたくなるレベルだ。それくらい圧倒的で、事実、実燃費40km/Lも夢じゃない。

加えて新型車ヤリスが凄いのは、小排気量の1.0Lエンジン車も用意していること。こちらは69PS&92N・mと速さには期待できないが、ボディは全車共通なので乗り心地や衝突安全性、先進安全性は十分以上なうえ、それでいて約139万円(税込み)スタートと超お手頃。これなら速さや広さが要らなくなった年配客をも狙えるのだ。それこそ長い時間をともに過ごしたヴィッツから乗り換えるようなオールドファンを。そう、新型車ヤリスは見た目からは想像もできないくらいに一粒で2倍、3倍と美味しいクルマなのである。

YARIS Specifications

サイズ
全長3,940mm×全幅1,695mm×全高1,500mm
乗車定員
5名
燃料消費率

1.0Lガソリン車
20.2km/L(WLTCモード)国土交通省審査値

1.5Lガソリン車 X 2WD CVT
21.6km/L(WLTCモード)国土交通省審査値

ハイブリッド車 HYBRID X 2WD
36.0km/L(WLTCモード)国土交通省審査値

エンジン

1.0Lガソリン車
型式:1KR-FE
総排気量:0.996L
最高出力(ネット):51kW(69PS)/6,000r.p.m.
最大トルク(ネット):92N・m(9.4kgf・m)/4,400r.p.m.

1.5Lガソリン車
型式:M15A-FKS
総排気量:1.490L
最高出力(ネット):88kW(120PS)/6,600r.p.m.
最大トルク(ネット):145N・m(14.8kgf・m)/4,800〜5,200r.p.m.

ハイブリッド車
型式:M15A-FXE
総排気量:1.490L
最高出力(ネット):67kW(91PS)/5,500r.p.m.
最大トルク(ネット):120N・m(12.2kgf・m)/3,800〜4,800r.p.m.

モーター
ハイブリッド車 2WD フロントモーター
型式:1NM
最高出力:59kW(80PS)
最大トルク:141N・m(14.4kgf・m)
メーカー希望小売価格
139万5千円〜249万3千円(税込み)
詳しい情報・お問い合わせ

トヨタ自動車株式会社 お客様相談センター
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プロフィール

小沢コージ KOJI OZAWA

神奈川県横浜市出身。自動車メーカー勤務を経て1990年に二玄社に入社し、自動車情報誌『NAVI』の編集に携わる。1993年にフリーランスとして独立後、現在は「バラエティ自動車ジャーナリスト」という肩書きももつ。

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