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Race report華やかなレースの影でスタートした水素エンジン研究の第一歩 Text:Daisuke Katsumura

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車両にとってもドライバーにとっても過酷なレースと言われるSUPER耐久の富士24時間レースが5月21日(金)〜23日(日)に行われました。FIA GT3参戦車両に近いレース専用マシンから、市販車に近い車両までさまざまなカテゴリーの車両が混走する同レースに、実はガソリンではなく水素を燃料とした車両が参戦していたのをご存知ですか? 今回はレースの概要とともに水素エンジンで24時間に挑んだチームにもスポットを当ててみましょう。

速さだけでなく耐久力が問われる24時間レース

レースといえば一定のレギュレーションのもとサーキットをいかに速く走るかを競うのが一般的なイメージだと思います。約300kmまでの規定距離をいかに速く走りきるかを競うSUPER GTなどのスプリントレースはその典型例と言えるでしょう。

一方で、規定の時間内にいかに長い距離を走るかを競うレースが耐久レースと呼ばれ、ル・マン24時間レースなどが有名です。今回富士で行われた「スーパー耐久シリーズ2021Powered by Hankook 第3戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」は国内の耐久レースとしては非常に珍しい24時間という長時間走り続ける過酷なレースです。

5月22日(土)の15時にスタートした決勝レースは、夜明け前後に約40分間セーフティカーが導入されたものの順調に進み、ST-Xクラスの#81DAISHIN GT3 GT-Rが763周(3,481.569km)を走破して総合優勝となりました。単純に走破した距離を24で割ってみると、セーフティカーが入ったにも関わらずなんと平均速度はおおよそ145km/hであることが判ります。いかに過酷なレースだったかが判りますね。

ちなみにレース期間中はFCバスやMIRAIによる給電で中継した映像の配信を行ったり、トヨタの協賛による野外映画館「スピードウェイシネマ」での映画上映が行われる、などさまざまなイベントが行われました。

トヨタが挑戦する水素エンジン車での24時間レース

そんなSUPER耐久シリーズに、今年からメーカー開発車両が走行できるST-Qクラスが新設されました。このクラスに今回トヨタ自動車から「ORC ROOKIE Racing」として水素燃料エンジンを搭載したカローラスポーツ「ORC ROOKIE H2 Concept」が投入され、ゼッケン#32を装着した市販車に限りなく近いカローラスポーツが参戦しました。6名の登録ドライバーの中にはMORIZO、つまり豊田章男社長も名を連ね、実際にステアリングを握ってレースに挑みました。

MIRAIに搭載される燃料電池が水素を燃料に酸素との化学反応で電気を発生させてモーターを駆動するのに対して、水素エンジンは、ガソリンのかわりに圧縮気体水素を燃焼させることで動力を発生させています。既存のエンジンの燃料供給系や燃料噴射装置を変更することでそのまま使用できるにも関わらず、ごく微量なエンジンオイル燃焼分以外CO2を発生しないというメリットがあります。また水素はガソリンと比べて燃焼スピードが速く、応答性が高いという特徴があり、優れた環境性能とクルマを操る楽しさを両立する可能性を秘めており、今後の発展が期待されています。

文字通り水素を燃料とするエンジンを搭載したこの車両は、会場内に今回のために特別に設置された移動式水素ステーションにピットストップを繰り返し、24時間で358周(1,633.554km)を走り切り見事完走しました。燃料電池を搭載した電気自動車とは全く異なるアプローチですが、モータースポーツという厳しい環境で水素エンジンを鍛えることもまた来たる水素社会の発展に貢献しているのです。

2021 Summer

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