JAPAN MOBILITY SHOWトヨタブースレポートいろんな答えがあっていい。
トヨタが示したモビリティの未来とは?
文/ベストカーWeb編集部、写真/トヨタ自動車、ベストカーWeb編集部
東京モーターショー改め、JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー:以下JMS)が10月28日より11日間にわたって開催された。
トヨタが掲げたテーマは「Find Your Future」だ。3台のモビリティを軸に、電動化・知能化・多様化を進め、その先にある未来を見つけ出すということだが、トヨタブースの中はどうなっていたのか。驚きとワクワクがあふれる、トヨタのJMSをお伝えする。
東京モーターショー改め、JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー:以下JMS)が10月28日より11日間にわたって開催された。トヨタが掲げたテーマは「Find Your Future」だ。3台のモビリティを軸に、電動化・知能化・多様化を進め、その先にある未来を見つけ出すということだが、トヨタブースの中はどうなっていたのか。驚きとワクワクがあふれる、トヨタのJMSをお伝えする。
バッテリーEVと共に変化する未来のモビリティ
広大なトヨタブース。向かって右側からブースに入ると、まず目に飛び込んで来るのがIMV0だ。東南アジアをターゲットにしたピックアップトラックのコンセプトモデル。拡張性を重視したIMV0は、荷台部分と架装部をボルトとナットで締結することができる。
黄色でカラーリングされたIMV0は移動式のカフェになっており、その奥には荷台部分が巨大な「ガチャガチャ」になったホワイトのIMV0が登場する。ガチャガチャの中には今回のコンセプトモデルを含む、トヨタ車のミニカーが入っていた。
オーナーのアイデア次第で無限大の可能性を秘めた、ピックアップトラックEVである。
センターステージに目を向けると、SUVタイプのコンセプトモデル「FT-3e」と、スポーツタイプのコンセプトモデル「FT-Se」が輝きを放つ。
FT-3eは都市型SUVのような仕上がり。全体的に見ればボディ全高は高めだが、横から見るとプリウスのようなスタイリッシュさがある。エッジのきいたスタイルは、従来までのどのクルマとも似ていない新しいデザインだ。
ボディサイドにはインフォメーションパネルが設置されており、次世代EVならではの拡張性も感じさせる。
GRブランドが投入するFT-Seは、モータースポーツを起点にしたもっといいクルマづくりをバッテリーEVとして叶えた一台。
ロー&ワイドなスタイリングは非常にスタイリッシュ。BEVならではのフラットなフロア形状で空力性能も高まっていることを感じさせる。カーボンニュートラル時代にあっても、クルマの楽しさを忘れないという、トヨタの強い気持ちが表現されていた。
さらに奥へと進んでいくと、今度は四角いクルマが登場する。その名は「KAYOIBAKO」。企業同士や工場と店舗の間を、商品を詰め込んで行き来する箱のことを通い箱(かよいばこ)といい、このクルマのコンセプトは通い箱のように、使い手のニーズに合わせて装いを変える超拡張機能にある。
物流のラストワンマイルの効率化に貢献したり、座席を増やせば地域社会の重要な足になったりするクルマだ。IMV0同様に、使い手次第で様々なシーンで活躍できる、変幻自在なクルマである。
次世代EVになっても、トヨタがクルマを楽しみながら使う、クルマと共存する社会を目指すという姿勢がよくわかった。数年後の未来が、このトヨタブースに凝縮されている。
宇宙も舞台。どこまでも走っていく熱きクルマが集結!
センターステージからさらに奥にもステージが広がっており、ここには3台のクルマと2つのモビリティが展示されていた。
まずはランドクルーザーSe。ランクル初のBEVは、世界中の多様なニーズに対応できるランクルブランドの新たな勢力だ。ランクルシリーズとしては極めて珍しいモノコック構造を採用し、ランクルの新たな価値観を表現した。
ランドクルーザー70のように、変わらないことで生まれる価値がある。ただ一方では、変わることで価値を生み出したいランクルSeのような存在も必要だ。トヨタはランクルSeを「チャレンジ」と言い切った。
行きたいところへ行って、無事に帰ってくるというアイデンティティは変わらない。その中にEVという技術があり、それを形にしたのがランクルSeだ。ランドクルーザーの新たなチャレンジが、BEVのランクルSeから始まる。
隣に目を向けると、ハイラックスのようなスタイルのBEV「EPU」がある。ダブルキャブでモノコック構造のピックアップトラックは、走行ステージと使い勝手の良さを広げていく。
さらにクルマを降りた後の移動手段もトヨタは提案する。電動車いすの「JUU」と、3輪電動モビリティの「LAND HOPPER」が、その答えだ。
そして、ステージの最後を飾るのが「スペースモビリティ(プロトタイプ)」である。宇宙空間や月面で活躍できるモビリティを想定した実験車両。モーターを4つ、ステアリングを4つ備え、地球上では想定できない荒れた路面と過酷な環境下でも安全安心に走行できるクルマである。
スペースモビリティで磨き上げた技術は、月面探査車のルナクルーザー等で活用されるということだ。
2つに分かれたステージは、日常に寄りそうIMV0から乗用のFT-3eやFT-Seへつながる。仕事やレジャーで活躍するKAYOIBAKO、オンロードからオフロードまでをカバーするランドクルーザーSeと展開し、非舗装路で活躍できるEPU、さらに宇宙空間のスペースモビリティと、走るステージがどんどんと広がっていくイメージで1つの線になった。
未来のモビリティも、様々なステージで活躍することが手に取るようにわかる。あなたの未来もここで見つけることができるだろう。
新型ランクル250には踏まないアクセルとブレーキが付いているぞ
JMSのトヨタブースで最後に紹介するのが、先日ワールドプレミアが行われたランドクルーザー250だ。なんとこのランクル250には、足元にアクセルやブレーキといったペダルが無い。
搭載されているのは「NEO Steer(ネオステア)」と呼ばれる新しい操作機構だ。オートバイのハンドルをベースにして、アクセルやブレーキといった、従来まで足元のペダルで行っていた操作系をステアリングに集約している。
これまでよりも運転姿勢の自由度が高まり、乗り降りもしやすい。
ステアリングを握り込み、右手の親指を伸ばした先にあるのがアクセルで、ブレーキはステアリングの裏側の左右に備わる自転車のようなレバーで操作する。アクセルやブレーキは一例として、この場所に配置されているが、バイワイヤになっており、ユーザーの希望を反映することもできるというのだ。これはネオステアの大きなメリットも言える。
モリゾウこと豊田章男会長も、ネオステアには熱い視線を送っているという。市販化前提の新技術が、未来のクルマにペダルレスという革命を起こすかもしれない。
当たり前を当たり前にしないトヨタの哲学を見た
JMSのトヨタブースを総括すると、全体から感じ取れるのは拡張性と多様性という二つのテーマだった。
日常は変化を続けるものであり、変化を怖がっていては未来に向かって歩むのは難しい。これからの変化のある未来を作っていくのは、私たち一人ひとりなのだと考えさせられる。
ランクルだからこうあるべき、BEVだからこれは我慢しなければならない、クルマだからこれが普通という一種の固定観念を、根本から変えていくというトヨタのチャレンジスピリットはブース全体から感じられた。
常に広がり続ける未来に対して、私たちはどう考え、どう動くべきなのか。その一つの答えが、トヨタの魅せたJMSの中にあるのかもしれない。