GRファクトリートヨタ「GR」の秘密に迫る。
ワクワクを生み出す特別なクルマづくり

Car

トヨタ自動車のヤリスとカローラには、ベースモデルとは別に「GR」という二文字を冠した特別なモデルが存在する。

こうしたクルマたちは、製造段階からまったく別の工程をたどるのだが、それらのクルマの生産を手がけているのが、愛知県豊田市のトヨタ自動車元町工場内にあるGRファクトリーだ。

近年、トヨタ車はエモーショナルな性能と味わいが増してきたという評判がある。その答えを探し求めて、GRファクトリーを訪れてみた。

文/善福寺正文
写真/トヨタ自動車

そもそも「GR」とは何なのか?

ドリフト走行を行う高性能市販モデル、GRヤリス RZ [GR-DAT(8AT・4WD)]。

大ヒット商品である「カローラ」や「ヤリス」については、多くの人がその存在や詳細を、大なり小なり知っているはず。しかしトヨタのクルマには、同じカローラやヤリスであっても「GR」という二文字が車名の先頭に付くスペシャルモデルがラインアップされている。

そういった「GRカローラ」や「GRヤリス」とは、果たしてどんなクルマなのだろうか? いやそれ以前に、そもそも「GR」とは何なのだろうか?

結論から申し上げると、GRとは「GAZOO Racing」の頭文字であり、GAZOO Racingは、トヨタという自動車メーカーのモータースポーツ部門に相当するセクション。そんなGAZOO Racingが世界中のさまざまなモータースポーツに参戦し、極限状況で獲得してきた知見や技術を惜しみなくフィードバックした市販車が、冒頭で申し上げたGRカローラやGRヤリスなどの「GR」シリーズなのだ。

市販車メーカーであるトヨタ自動車がモータースポーツに参戦する理由

GRヤリス RZ“High performance”(6MT)(左)とGR YARIS Rally1 HYBRID(右)。

トヨタ自動車が世界中の過酷なレースに参戦し、また豊田章男会長自身が「モリゾウ」と名乗りながらレーシングカーのハンドルを握る理由は、ただひとつ。「もっといいクルマをつくりたい or モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」という願いがあるからだ。

通常のテストコースや一般道では考えられないレベルの猛烈な負荷が、クルマやドライバーに襲いかかるモータースポーツの世界。そんな極限の状況下でも信頼できるクルマを仕上げることができたならば、その知見と技術はそのまま「もっといい市販車作り」につなげることができる。

だからこそTOYOTA GAZOO Racingは世界中のモータースポーツに挑戦し続け、そこで得た知見を、多くの市販車にフィードバックしている。こうした取り組みのDNAを、もっとも色濃く反映するクルマたちが、「GRヤリス」や「GRカローラ」などのGRモデルなのだ。

一般的な工場とは桁違いの時間と手間をかけてクルマを作るGRファクトリー

愛知県豊田市のトヨタ自動車元町工場内にある「GRファクトリー」の一角。

そんなGRヤリスやGRカローラは、愛知県豊田市にあるトヨタ元町工場内に設置された特別なエリア「GRファクトリー」にて生産されている。

GRファクトリーは、なんとも特別な工場だ。一般的に自動車の製造工場では効率を重視した大量生産が行われるものだが、GRファクトリーでは効率はまったく重視されず、「クオリティーと精度」こそが最大限追求されている。

一般的な自動車の生産ラインでは、ベルトコンベアや吊り下げ式の大型搬送機を使った流れ作業にてクルマが作られる。だがGRファクトリーが採用しているのは、1人または少人数のチームが複数の工程をまとめて担当する「セル生産」という方式だ。

通常の生産ラインでは、作業員は一つの同じ工程をひたすら繰り返すことになるわけだが、GRファクトリーでは熟練の作業員が複数の工程を担当し、それぞれの工程に責任を持つ。そして一般的な自動車製造工場では、1つの工程にかける時間が60秒から90秒ほどであるのに対し、GRファクトリーのそれは9分25秒。つまり一般的な工場の6倍から10倍近くの時間をかけながら、1台のクルマを作っているのだ。

GRファクトリーでの作業風景。厳選された部品を、もっとも適切な位置に調整しながら組み付けている。

GRヤリスとGRカローラのオーナーは工場見学が可能

製造されたボディの精度は、3次元測定器で基準値とのズレが測定される。

GRファクトリーでは、製品としてのばらつきを極限まで減らす目的で「ボディの3次元測定」や「約1万通りの部品のなかから、左右のバランスが最適になる部品を選び出す」等々の、気が遠くなるほど細かな作業が繰り返される。その結果としてGRファクトリーで作られたクルマは、「そのままサーキットに持ち込んでも、いきなり問題なく全開走行できる」という、常識はずれのクオリティーに仕上がるのだ。

なぜGRファクトリーは、いやトヨタ自動車はそこまでするのかは、冒頭付近でも触れたとおり「もっといいクルマをつくりたい」という強い願いを抱いているからだ。

ただ効率的で経済的なだけでなく、いついかなるときも安全に走ることができ、そのうえで「クルマを運転し、移動することの楽しさ」を、心の底から味わえるクルマ。そんなクルマを世の中に届けるため、トヨタはTOYOTA GAZOO Racingとして世界中の過酷なモータースポーツに参戦し、そこで得た知見と技術、そして情熱を、GRファクトリーで作られる特別なクルマだけでなく、多くの市販車にフィードバックしている。

街なかで数多く走っているトヨタのクルマを見かけたとき、あのクルマたちの中にはそんな技術と熱い想いが密かに息づいているのだということを、ほんの少しでも思い出していただけたならば幸いだ。

なおGRファクトリーは、GRヤリスとGRカローラのオーナー限定で工場見学も受け付けており、MyTOYOTA(WEB)、MyTOYOTA+(アプリ)にて、該当するアカウントへ案内が配信されている。自らの愛車に込められた情熱と誇りを再確認する、絶好の機会といえよう。

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