「やってみたい」を叶えるKINTOの新たな挑戦サーキット体験からチューニングカーレンタルまで モータースポーツへの扉を開く「MOTORSPORT by KINTO」
所有にとらわれないクルマの利用スタイルを提案する「KINTO」。そのKINTOが2025年8月、新たに「MOTORSPORT by KINTO(モータースポーツ・バイ・キント)」を始動しました。
「一人ひとりの『移動』に『感動』を」というビジョンのもと、これまでハードルが高いとされてきたモータースポーツの世界への入り口を、誰もが気軽に体験できる形で提供します。この挑戦の背景を、サービスの立ち上げを担当した布川康之氏に聞きました。
Text:Michi Sugawara
Edit:Akio Takashiro(pad inc.)
究極のモビリティ“筋斗雲”を目指して
「KINTOの会社の設立目的そのものは、『移動をもっと気楽に楽しんでいただく』ということにあるんです」
そう話すのは、KINTOの布川康之氏。KINTOという社名は、孫悟空が乗る「筋斗雲」に由来し、トヨタグループ内で語られる「究極のモビリティは筋斗雲である」という思想に基づいています。どこかへ行きたいと思ったときにすっと現れ、目的地まで連れて行ってくれる。そんな手軽でエコな移動体験の理想形がKINTOの目指す姿と重なり、トヨタの当時の豊田章男社長(現:会長)が命名しました。
これまでもKINTOは、旧車コミュニティ(Vintage Club by KINTO)やキャンプイベント(モビリティキャンプ)など、移動を楽しむための多彩なサービスを展開してきました。そして、新たな挑戦の舞台として選ばれたのがモータースポーツの世界でした。
「トヨタが長年モータースポーツに力を注いでいる中で、トヨタグループである私たちKINTOなりにできることはないかと考えていました。そんな折、あるモータージャーナリストの方から『所有以外の可能性を提示するKINTOとモータースポーツはすごく親和性がある』というお話をいただきました。その着想にヒントを得て、2023年頃からこの企画が本格的にスタートしたのです」
KINTOとモータースポーツの親和性について、布川氏は2つの観点を挙げます。
ひとつは、近年モータースポーツの“エントリー層”が着実に拡大していることです。トヨタが展開する「ラリーチャレンジ」のように、市販のナンバー付き車両で一般の人も参加できるイベントが増え、レース専用車両ではなく“マイカーの延長線上”で走りを楽しむ人びとが増加しているといいます。
もうひとつの理由は、モータースポーツにかかる初期コストを抑えられる点です。エントリーレベルであっても、車両購入や改造、ライセンス取得、練習費用、ヘルメットやレーシングスーツなどの装備を含めると、数百万円規模の出費になることもあります。
「興味はあっても、未経験の段階でその金額を投じるのは難しい。だからこそ、気軽に始められる仕組みが必要なのです」と布川氏は語ります。
この「やってみたい」という気持ちと、「始めるためのハードルが高い」という現実のギャップ。そこにこそ、 KINTOが提供できる価値がありました。モータースポーツへの第一歩を手軽に体験できる機会を提供する。それが「MOTORSPORT by KINTO」の原点となりました。
初心者から経験者まで
ステップに合わせた4つのサービス
プロジェクト始動後、チームはまず自分たちでモータースポーツの世界を体験することから始めました。「現地・現物で、お客さまがどういうところで楽しまれ、あるいは悩まれているのかを知る必要がありました」と布川氏が話すように、自らサーキットを走り、参加者の声に耳を傾ける中で、サービスは具体化されていきました。そうして生まれたのが、利用者のレベルや目的に合わせた4つのサービスです。
1つ目のサービスは、「走行・体験イベント」です。初心者にとって、いきなりサーキットを走るのは不安がつきもの。そこで、プロレーサーが基本的なスポーツ走行の作法や安全マナーを丁寧にレクチャーし、楽しみながら一歩を踏み出せるイベントを開催しています。モータースポーツへの憧れを“体験”へと変える、最良の入り口です。
「一番サービス導入に苦労した」と布川氏が語るのが、2つ目のサービスとなるサーキットレンタルです。このサービスでは、千葉県の袖ヶ浦フォレスト・レースウェイと愛知県の幸田サーキットyrp桐山において、フリー走行枠でサーキット用車両をレンタルできます。これまで現金払いが主流だったサーキット業界に、クレジットカードによる事前決済などDXを導入。ヘルメットやグローブの有料レンタルも用意し、“手ぶらでサーキット走行”を可能にしました。サーキット走行に新たな選択肢を提供し、今後は提携サーキットも拡大予定です。
サーキットでレンタルできる車種の一例。
FRスポーツの代表格にTOM’Sのサスペンションなどを搭載し、誰もがサーキットで「操る楽しさ」を存分に味わえる一台です。
TEIN製サスペンションやENDLESS製ブレーキを搭載。FFならではの軽快な走りに、本格的な足回りが安心感をプラスします。
馬力以上に曲がる楽しさで驚きをもたらします。TOM’Sの技術が実現した、安定性の高い異次元のコーナリング性能を体感できます。
サーキットレンタルのサービスを提供している2つのサーキット
幸田サーキットyrp桐山
住所:愛知県額田郡幸田町大字桐山字立岩1-100
アクセス:東名高速道路・岡崎I.C.・音羽蒲郡I.C.より約30分、伊勢湾岸自動車道豊明I.C.より約40分
袖ヶ浦フォレスト・レースウェイ
住所:千葉県袖ケ浦市林348-1
アクセス:アクアライン 圏央道木更津東I.C.より約10分、館山自動車道・姉崎袖ケ浦I.C.・木更津北I.C.より約15分
3つ目のサービスは、そのコンプリートカーを気軽にお試しできる公道レンタルです。サーキットで楽しさを知った次の段階として、公道でコンプリートカーのパフォーマンスを気軽に体感したいと考えるお客さまは多いと思います。そうした思いに応え、コンプリートカーの公道での貸し出し (サーキット走行は不可)も始めました。貸出拠点は東京・お台場のTOM'S TOKYO SHOWROOM。日本を代表するスポーツカーを味わうドライブや近隣へのショートトリップなど、特別な体験が叶います。
そして、これらのサービスを体験して、すっかり魅了されてしまった人には、4つ目のサービスとして、コンプリートカーのサブスクリプションサービスも用意されています。TOM’Sが手がけるチューンドモデルがラインアップされ、GRヤリスは340馬力、GRスープラは460馬力にまでチューンアップ。「乗れば違いがわかる」と布川氏が語る圧巻の仕上がりで、サーキットはもちろん、ワインディングロード(山岳道路)での走行も視野に入る、本格派向けのサービスです。
「MOTORSPORT by KINTOの一番のポイントは、やはり『クルマの提供』を軸にしているところ。ハイエンドなユーザーさまはもちろんのこと、『ちょっとやってみたい』と考えているお客さまに、少しでも気楽にモータースポーツを楽しめる機会を提供したいのです」
サービス開始後、多くの反響をいただいています。はじめてサーキットを走ったお客さまの中には、あまりの楽しさに走りながら思わず笑ってしまう方もいらっしゃいました。
“安全”と“気軽さ”を両立したモータースポーツへの入口
モータースポーツという非日常体験を提供するうえで、KINTOがもっとも重視しているのが“安全”です。メカニックによる万全な車両メンテナンスに加え、走行前の丁寧なブリーフィング、インストラクターとして参加するプロドライバーからのアドバイスなど、利用者が安心して楽しめる環境を整えています。
この徹底した安全管理があるからこそ、MOTORSPORT by KINTOが目指す“気軽さ”を実現できているのです。まずはWEBサイトで手軽にお申し込みいただき、走行・体験イベントに参加することでプロから基礎を学べます。そこからサーキットや公道でのレンタルへと駒を進め、さらに深くモータースポーツの世界を探求していく選択肢も用意されています。クルマ好きの「やってみたい」という気持ちに寄り添い、それぞれのペースでステップアップしていけることも、 MOTORSPORT by KINTOの大きな魅力なのです。
そして、MOTORSPORT by KINTOでは、単なる体験サービスの提供にとどまらない、その先にあるより大きなビジョンを見据えています。
「私たちのサービスを通じて、クルマって楽しいな、と思っていただける方がひとりでも増えたらこれほどの喜びはありません。そして、その中から将来のプロレーサーやメカニックが生まれるかもしれない。そんな夢も見ています」
モータースポーツの裾野を広げ、次世代の人材を育むこと。それは、長年にわたりモータースポーツ界を牽引してきたトヨタグループだからこそ描ける未来像なのです。MOTORSPORT by KINTO は、その壮大なビジョンを実現するための重要な一歩となるはずです。
「レースの世界は、コンマ1秒を競う非常にシビアな世界です。でも、最初のステップは『楽しい』という気持ちから始まるはず。走行後に仲間と『あそこはどうだった』と語り合う時間も、その楽しさの一部です。MOTORSPORT by KINTOはその楽しさや喜び、ワクワク感をひとりでも多くの方に届けたいと考えています。身近に非日常体験ができるメニューをご用意しましたので、ぜひ一度体験していただいて、その魅力を肌で感じて、一緒にモータースポーツを楽しみましょう」
今後は、2025年12月27日(土)には東京お台場のシティサーキット東京ベイでEVカートイベントも開催します。また、将来的にはトヨタの垣根を越えて他メーカーの車両導入も検討しています。さらには、「ラリーチャレンジ」のような入門レースへ、車両やメカニックなどをフルパッケージで提供するサービスの実現も構想しており、挑戦はまだ始まったばかりです。
誰もが気軽に「モータースポーツの楽しさ」という非日常へ、筋斗雲のように飛び乗れる。MOTORSPORT by KINTOは、そんな未来を実現していきます。
EVカートイベントの詳細:https://motorsport.kinto-jp.com/event/cctb-20251227/
MOTORSPORT by KINTO:https://motorsport.kinto-jp.com/
