10年後のモビリティ社会を見据えたトヨタの“くらしそのもの”を動かすビジョンとは?「Japan Mobility Show 2025」でトヨタが描いた「移動」と「くらし」の新しいかたち
2025年10月30日(木)から11月9日(日)まで、一般社団法人 日本自動車工業会主催による「Japan Mobility Show 2025(ジャパンモビリティショー)」が東京ビッグサイト(東京都・有明)で開催されました。今回トヨタは、モビリティショーの会場で10年後の社会を先取りする未来像を披露し、自動車メーカーの枠を超え、「モビリティ・カンパニー」としての進化を遂げつつあることを印象付けました。
Harmony DIGITALでは「『Japan Mobility Show 2025』でトヨタが描いたモビリティの未来と覚悟」と題して、トヨタの展示をレポートしました。今回はそれに引き続き、「Tokyo Future Tour 2035」で展示されたモビリティの可能性を広げる取り組みを中心に、トヨタグループのLEXUS、ダイハツの展示についてもご紹介します。
「Japan Mobility Show 2025」でトヨタが描いたモビリティの未来と覚悟。はこちらをご覧ください。
Text:Fumihiko Ohashi
Photo:Masahiro Miki
Edit:Akio Takashiro(pad inc.)
トヨタが提示する10年後の未来とは
モビリティショーの会場内でひときわ注目を集めたのが、「Tokyo Future Tour 2035」と名づけられた10年後の生活や景色を体験できるエリアです。ここでは、自動車メーカーをはじめとする企業が、モビリティを軸に未来の生活を提案しました。
トヨタグループもさまざまな技術を出展したので、いくつかご紹介します。まずはLEXUSが出展した「LEXUS Real×Virtual Driving Concept powered by VR Cockpit」です。これは、日本初公開となったコンセプトカー「LEXUS Sport Concept」の実車に乗って人気レースゲーム「グランツーリスモ7」をプレイできる、リアルとバーチャルが融合したドライブ体験です。
映像では富士スピードウェイが再現され、約1.5キロメートルのストレートを時速300キロメートルオーバーで疾走します。クルマが映像や振動と連動しており、コーナーを回るたびにステアリングが重くなり、本物のサーキットを走っているような臨場感があります。その目的は、バーチャル体験だけではありません。自動車は使用する時間よりも停まっている時間のほうが長いため、その時間を有効活用する狙いもあるそうです。
未来に向けた取り組みとして面白いのは「マザーシッププロジェクト」です。これは大型の高性能凧(カイト)で、全長8メートルほどの実物が会場に展示されました。R-フロンティア部マザーシップグループ長の板倉英二氏によると、カイトは、上空の強い風を活用した風力発電を目的に開発がスタートしたそうです。
カイトは制御技術により、風速30m/hほどの強風にも耐えられるため、ドローンなどほかの飛行物が飛べない環境下でも飛行を続けることができます。また、100キログラムほどのものを載せられるため、将来的には空中運輸としての活用が期待できるそうですが、まずは、気象観測や災害時などの際の通信基地としての実用化を目指しています。
また会場では、ポケモンとのコラボレーションにより誕生したモビリティ「トヨタミライドン」もお披露目され、家族連れをはじめとする多くの人の注目を集めていました。
気軽に街中を移動するためのパーソナルモビリティも展示されました。トヨタグループであるトヨタ紡織は、「水素アシスト自転車」を参考出品。トヨタが燃料電池車(FCEV)「MIRAI」で培った技術を活用し、燃料電池(FC)でモーターを稼働させます。ボトル1本の水素で80キロの走行が可能だそうで、一般的なリチウムイオン電池を搭載した電動アシスト自転車を上回ります。
一方でトヨタ本社は、次世代モビリティ「Swake」を出品しました。電動キックボードのような外見ですが、三輪のため、安定した走りを実現。しかも後輪にはサスペンションが搭載されており、カーブをスムーズに曲がります。まさに未来の街乗りモビリティといえるでしょう。
10年後の社会を描くことは、単に技術の進化を語ることではありません。そこには、人がより自由に、より豊かに生きるためのビジョンがあります。トヨタが目指すのは、「移動の進化」を通して人と社会の可能性を広げること。
クルマづくりの枠を超えた挑戦が、次の時代の“日本のものづくり”の姿を映し出しているのかもしれません。
今回のモビリティショーでは、トヨタグループが南館の1フロア一帯を使って、トヨタ、ダイハツ、LEXUS、センチュリーのブースを構えました。レポートの締めくくりに、ダイハツとLEXUSのブースを紹介します。
ダイハツブースでは、三輪だった初代を彷彿とさせながらも、フェイスのかわいらしいデザインが特徴的なコンセプトモデル「ミゼットX」が公開されました。同モデルはコンパクトEVであり、未来のくらしに寄り添うモビリティの姿を示しました。また、軽オープンカーながらFR(後輪駆動)を実現した「K-OPEN(コペン)」の次世代モデルも公開しました。
LEXUSブースで目を引いたのは、「六輪」というこれまでの自動車の常識を覆すミニバンのコンセプトカー「LS CONCEPT」です。「LS」は「ラグジュアリー・セダン」ではなく、「ラグジュアリー・スペース」と再定義されています。そのスペースを確保するための最適解が、六輪なのです。
より広い車内空間を確保するためには、後輪を小さくする必要があります。しかし、小さなタイヤ二つでは荷重に対する安定性が十分に得られない。そこで後輪を四輪にするという発想に至ったそうです。その工夫によって、シート周りは飛行機のファーストクラスのように広く、2列目の座席を倒さずに3列目に乗り込むことができるほどの空間を実現しました。
LEXUSブースでは、エモーショナルな運転体験を追求した「LEXUS SPORT CONCEPT」や「LEXUS LS COUPE CONCEPT」も公開されましたが、展示したのは自動車にとどまりません。トヨタが出資する、米国スタートアップJoby Aviationと共同開発した空飛ぶクルマ「Joby S4」も展示されました。登壇したハンフリーズCBOは「移動が、陸上だけに縛られなくなる時がくるでしょう」と展望を示しました。
最後に、日本RV協会(JRVA)が企画する「キャンピングカーゾーン」を紹介します。ここでは、キャンピングカーやアウトドア仕様のクルマが展示されました。
その中でも特に目を引いたのが、トヨタグループのトヨタ・コニック・プロが手がけるスタイルドカーブランド「CORDE by(コーデバイ)」が出品した「LAND CRUISER PRADO “NEWSCAPE”」でした。
同社CXデザインユニットの伊藤永恭氏によると、「CORDE by」は、「中古車をアップデートすることでクルマを長く使ってもらい、サステナブルな社会を実現していきたいという思いで始めた事業」とのことです。
今回出品されたモデルはランドクルーザープラドの中古車をベースに、アウトドアブランド「THE NORTH FACE」と、同ブランドを手がけるゴールドウインと共同で素材開発を進めるバイオベンチャー「Spiber」とのコラボで製作されました。ボディは、THE NORTH FACEのイメージカラーであるグラファイトグレーを基調とし、シートカバーには、Spiberが開発する環境負荷の少ない次世代繊維素材「Brewed Protein™(ブリュード・プロテイン™)ファイバー」が使用され、サステナビリティを追求しています。
