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Delivery InnovationオカモチからUber Eatsまで
群雄割拠するフードデリバリー

Lifestyle

新型コロナウイルスに起因する外出自粛要請やロックダウンにより、世界中で多くの人がフードデリバリーを利用する機会が増えました。日本でも都市部で定着したUber Eatsをはじめ、多種多様なサービスが活況を見せていますが、旧来我が国のフードデリバリー産業は「出前」文化として根付いてきた歴史があります。その起源から知られざる豆知識、時代とともに変化するサービス、そして最新事情までひも解いていきます。

飛脚をルーツに江戸市中で開花した出前

日本で個人による宅配のルーツは「飛脚」といわれています。定着したのは東海道や中山道といった五街道が整備された1600年代の江戸時代。現在の物流システムと同じく地域で配達を請け負う飛脚問屋も誕生し、全国に広まっていきました。当時は主要拠点の江戸から大阪まで一往復で約10日。ひと月に3便あったことから「三度飛脚」とも呼ばれ、現在の貨幣価値に換算すると、他の荷物に同梱する手紙でも約6,000円の配送料だったという記録が残っています。

飛脚の仕事は物を運ぶだけではなく、幕府公用の「継飛脚」や諸藩専用の「大名飛脚」は他藩で見聞きした有益な情報を藩主に伝えるスパイ活動も担っていたと伝わっています。

飛脚には江戸から京都まで60~80時間で走破する韋駄天もいたという。歌川広重『東海道五拾三次 平塚・繩手道』(国立国会図書館)

江戸中期に入るとフードデリバリーの起源となる出前が始まります。市井の様子をまとめた冊子・世事談によると、江戸市中で「慳貪(けんどん)屋」と呼ばれた蕎麦やうどんの移動式店舗が広まり、大量の注文が入ると客先まで仕出しする出張販売を行っていました。その当時の様子は、古典落語の『時そば』などで描かれていますが、他にも寿司や豆腐、煮物といった多彩な移動販売が登場します。

売り歩くスタイルは、木桶を肩で担ぐ天秤棒が主流。「振売(ふりうり)」や「棒手振り(ぼてふり)」と呼ばれたこの業態では、鮮魚や野菜、納豆、さらに鍋や釜の出張修理や夏には金魚も販売し、庶民の間で生活に欠かせないものとして定着しました。

棒手振りは艶のある口上で客にアピールしていた。歌川広重『新撰江戸名所 日本橋雪晴ノ図』(国立国会図書館)

現在、高級品とされているうなぎも当時は庶民の食べ物として棒手振りで売られていました。かば焼きが冷めないように温かいご飯に挟んで届けさせたことがうな丼の起源という説もあります。

時代とともに進化し、食文化として定着

その頃から、蕎麦屋では「外番(そとばん)」や「担ぎ」と呼ばれる配達専門の職人がいました。明治、大正の頃になると平盆が普及。ねじり鉢巻きにはんてんをまとい、平盆にせいろをうずたかく積み上げた「肩持ち」で、片手ハンドルで自転車を運転し、街中を駆け巡る職人技が市井の風俗として定着しました。

片手で肩に乗せてこぼさず届ける技術は、まさに職人技。

そして昭和に入りクルマが普及すると、出前持ちの自転車との接触事故が相次いだことから、昭和30年代に東京の蕎麦店店主が自転車やバイクの荷台に付ける出前機を考案。同40年代には出前機専門のメーカーも設立され、47年に開催された札幌オリンピックでは、聖火運搬に出前機が使用されるなど普及しました。

正式名称は「出前品運搬機」。

現在でも昔ながらの蕎麦店や中華料理店の軒先で出前機を設置したオートバイを見掛けますが、料理を入れているのはアルミなど金属製の出前箱「岡持ち」。この語源は、岡=小高い山で「山のようにたくさんの食べ物を持って歩ける道具」という説や、「岡」にある家に「持ち」運ぶことなど、諸説あります。

江戸時代の岡持ちは木製で、かつては田植えや稲刈りなどの屋外作業に用いられた。

その後、高度経済成長期を経て、リーズナブルなファミリーレストランやファストフードが普及し、出前文化は一時衰退しますが、彗星のごとく現れたのがデリバリーピザです。時はバブル景気真っ最中の昭和60年。東京・恵比寿で誕生し、現在も街中で見掛ける屋根付きの三輪スクーターや保温バッグ、30分以内に宅配といった画期的なサービスを打ち出し、全国各地に普及しました。そのサービスが多彩な料理に派生し、食文化のひとつとなって現代のフードデリバリーにつながっていきます。

デリバリーピザは「30分以内に届かなければ無料」というサービスも実際にあった。

“ITフードデリバリー”戦国時代に突入

店にオーダーし、スタッフが届ける従来のフードデリバリーサービスに風穴を開けたのが「Uber Eats」です。米・サンフランシスコで始まり、2016年に日本に上陸したこのサービスは、スマートフォンアプリを活用し、第三者である登録の配達パートナーが料理を受け取り、ユーザーに届ける画期的なシステム。ユーザーは料理が飲食店から出発した際に通知を受け取れ、デリバリー状況を逐一確認できるなどイノベーティブな利便性で人気を博し、都市部を中心に32都道府県でサービスが展開されています(2020年時点)。

四角いバッグを背負って疾走する姿は、かつての蕎麦店の出前のように時代を象徴する光景に。

その成功を追うように全国展開で国内最大級の加盟店舗数を誇る「出前館」や比較的高級店が多い「fineDine」、個人店に特化した「Chompy」など国内各社の競合が激化し、新型コロナウイルスの影響でデリバリー需要が高まった今、まさに群雄割拠の様相を見せています。

そんな中、2020年より海外発の新たなフードデリバリーサービスも日本に参入してきました。世界23カ国80都市で展開し、ローカルの名店を中心とした登録店や現地在住スタッフによる丁寧なチャットサポートなどで差別化を図るフィンランド発の「Wolt(ウォルト)」が3月に上陸。9月には、シンガポールや台湾、タイでシェア1位を獲得し、飲食だけでなく日用品も提供するドイツ発の「foodpanda」、12月には、サービス料や配達料、最低注文設定が他社に比べて割安な韓国トップのデリバリーサービス「FOODNEKO」など細分化が進み、熾烈なシェア争いを繰り広げるように。

ITテクノロジーがフードビジネスに改革をもたらした。

もはや世界中の都市部で定着したアプリでのフードデリバリー産業で、今後注目を集めているのが「自律走行」です。米国では自律走行技術の利用を認める法律を制定する州が増えており、今後の法改正によっては全米でロボットが配送を行うスタイルが日常に浸透していくといわれています。

スマートフォンで注文し、AIロボットが好きな時間に美味しい料理を届ける――。
そんな近未来のライフスタイルは、すぐそこにきているのかもしれません。

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