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ACADEMIE DU VIN歴史、発酵の仕組み、泡が生まれる理由……
知れば知るほど奥深いシャンパーニュの基礎知識

Lifestyle

お祝いやパーティーに欠かせないシャンパーニュ。宝石のようなきらめきはこのうえなく美しく、気分を高めてくれます。一方でさまざまな種類があり、製造元も多いことから、敷居の高い印象を持っている方も多いかもしれません。今回は、発酵の仕組みや泡が生まれる理由、意外に知られていない作法まで、シャンパーニュの基礎知識をお伝えします。知れば知るほど奥深く、シャンパーニュを好きになること間違いなし!

泡が最大の特徴のシャンパーニュ
かつて発泡は悪者扱いだった!?

「シャンパン」の正式名称は「シャンパーニュ」ですが、泡の出るアルコールすべてがシャンパーニュと名乗れるわけではありません。フランス北東部のシャンパーニュ地方で、伝統的な製法で造られたものだけが、そう名乗れるのです。

シャンパーニュは、瓶内で二次発酵させるという伝統的製法による、きめ細やかでシルキーな泡が特徴。そして澱(酵母の残滓)とともに熟成させることで生まれる、芳醇な香りとうまみに、虜にならずにはいられません。フランス最北のワイン地方という寒冷地が育む、酸とミネラルがその味わいを生み出しているのです。

実はシャンパーニュ地方は、もともと発泡しないワインの産地として有名でした。ブドウ栽培は紀元前1世紀にスタート。17世紀半ばになると、シャンパーニュ地方のワインはパリの宮廷でも愛されるようになりましたが、まだこの頃、泡はありませんでした。むしろ、寒冷な気候により発酵途中で活動停止した酵母が春になると発酵を再開し、その炭酸ガスがワインに溶け込み泡となる現象が問題視されていたのです。

シャンパーニュ造りに大きく貢献したのが、オーヴィレール村の修道士だったドン・ペリニョンでした。「ワインが発泡しないようにせよ」という指示を受けていましたが、スパークリングワインが宮廷で好まれるようになると、方針を転換します。密閉性の高いコルク栓を使うブレンドの技術を開発。黒ブドウから透明な果汁を得る技術も取り入れ、シャンパーニュの品質を底上げしました。

その後、澱を抜く技術が19世紀初頭に開発され、ガラス瓶の強度も上がると、1860年代にはシャンパーニュ黄金期を迎えます。それまで甘口だった味わいも、イギリス市場を狙いポメリー社が辛口のシャンパーニュを生産。20世紀に入ってからはイギリス以外でも辛口の味わいが好まれるようになり、現在のスタイルに近づきました。

冷涼な気候とチョーク質の土壌が
シャンパーニュを生み出した

シャンパーニュ地方の緯度は、北部のランスで北緯49.3度。ワイン用ブドウ栽培に適しているのが南北経緯30~50度なので、まさにブドウの北限近くといえます。生育期の平均気温は14.7度で夏は涼しく冬は寒く、凍害と春の遅霜は生産者の頭を悩ませる問題です。

このような寒冷な気候ではブドウを完熟させるのが難しく、非発泡性ワインには酸の高すぎるブドウができてしまうのですが、実はそれこそが質の高いシャンパーニュを造れる理由。硬質な酸と透明感のあるベースワインに微細な泡を閉じ込めることで、シャンパーニュの唯一無二の個性が生まれるのです。

そして、シャンパーニュの味わいを形作るのに重要なのが、シャンパーニュ地方全体に広がるチョーク質の石灰土壌。石灰岩に触れると、しっとりと冷たく湿気を帯びているように感じるものですが、石灰は水はけのよさと保水性の両方を兼ね備えた湿度調整器。ブドウに必要な水分だけを補給してくれるのです。ワインの保存にも最適で、大手メゾンの地下には広大なチョーク質の天然セラーが広がっています。

シャンパーニュは、冷涼な気候と特異な土壌という強みを活かして成功した、世界に類を見ない飲み物なのです。

アルバンヌ、プティ・メリエ……
三大品種の他にも希少な認定品種がある

シャンパーニュの三大品種といえば、「シャルドネ」「ピノ・ノワール」「ムニエ」。シャルドネは花や柑橘系のアロマと酸味があり、ピノ・ノワールは赤い果実の風味にボディと骨格が加わったもの。ムニエはブレンドに果実味があるといわれます。

実はその他にも認定されている品種があります。その名も、「アルバンヌ」「プティ・メリエ」「ピノ・グリ」「ピノ・ブラン」。シャンパーニュ地方での栽培が難しく、この4品種合計の栽培面積は0.3%と極小ですが、いまだに古樹を大切に守っている生産者もいます。

シャンパーニュ地方の起点となる街が、ランスとエペルネ。街を取り囲む3つの地区──マルヌ県のモンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブランがシャンパーニュ生産の中心地です。モンターニュ・ド・ランスとヴァレ・ド・ラ・マルヌは黒ブドウが有名。コート・デ・ブランは直訳すると「白の丘」という名のとおり、シャルドネの聖地です。

もう2つの地区は、コート・デ・ブランの南西20㎞にあるコート・ド・セザンヌと、オーブ県に属するコート・デ・バール。シャンパーニュ最南・ブルゴーニュに近いコート・デ・バールには、シャブリと同じキンメリジャン土壌が広がります。
シャンパーニュのAOC(原産地統制呼称制度)はたったの3つ。泡のあるワインは、すべてAOCシャンパーニュです。AOCコトー・シャンプノワは非発泡の白・ロゼ・赤。AOCロゼ・ド・リセは非発泡のロゼのワインです。

シャンパーニュの格付けはユニークです。村単位で格付けが決まっており、生産されるブドウの平均的品質に応じて80~100%の21段階に格付けがされるのです。100%の村が「グラン・クリュ」と、99〜90%の村が「プルミエ・クリュ」となり、それぞれ17村と42村が認定されています。

グラン・クリュの村々は、シャンパーニュの中心地(モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブラン)に集中しています。それぞれ畑の栽培環境によってグラン・クリュのブドウの特徴も異なります。

複雑で奥深い味わいを生み出す
瓶内二次発酵方式とは

それでは、シャンパーニュの製法をご紹介しましょう。

・一次発酵(ベースワイン造り)とブレンド
シャンパーニュのアルコール発酵は2段階で行います。まずはブドウを絞り、ベースワインと呼ばれる泡のないワインを造ります(一次発酵)。ブドウを絞る際は“すばやく優しく”が高品質の条件で、最初に絞る一番搾りは高級品に使われます。

そしてシャンパーニュ造りの肝が、フランス語で「アッサンブラージュ」と呼ばれるブレンド作業。ベースワインは品種別、地区別など細かい単位で仕込み、さまざまなベースワインをブレンドすることで、品質を均一化し生産者のスタイルを作り上げていきます。

・二次発酵
その後、ベースワインに酵母とリキュールを加え、瓶詰めします。酵母はリキュール(糖分)を食べ、アルコールと二酸化炭素に変換します(二次発酵)。栓をした瓶の中では二酸化炭素の逃げ場がないため、ワインの中に溶け込み、シャンパーニュの泡が生まれるのです。

・熟成
酵母が二次発酵を終えた後は、瓶をセラーで熟成していきます。ヴィンテージ表記のないものでも、15カ月以上の長い熟成期間が必要です。この熟成期間に役目を終えた酵母(澱)からアミノ酸が溶け出し、うまみや香ばしい複雑な香りとなります。

・動瓶と澱抜き、仕上げ
出荷前に行われるのが、澱を瓶口に集める「動瓶(ルミアージュ)」作業。職人が毎日少しずつ瓶を回します。一方で、ジャイロパレットと呼ばれる機械で効率的に行うメゾンも増えてきています。

瓶口に澱が集まったら、瓶口を冷やして澱を凍らせて澱抜き(デゴルジュマン)をし、目減りしたワインを補充し糖分調整(ドサージュ)をしてからようやく出荷です。スパークリングワインの製法には、炭酸ガスを注入する手軽な方法もありますが、段違いに手間と時間がかかる瓶内二次発酵方式は、奥深い味わいのあるシャンパーニュを生み出します。

覚えておくと便利!
シャンパーニュの用語あれこれ

シャンパーニュには辛口から甘口まであり、ワイン中に残った糖分の量(残糖)により下記のように分類されます。瓶詰直前に糖分を追加しないスパークリングワインは「ブリュット・ナチュール」「ドサージュ・ゼロ」「ノン・ドサージュ」などと呼ばれ、残糖は3g/ℓ未満と極辛口です。最近は、残糖度の少ない辛口タイプのシャンパーニュも人気があります。

シャンパーニュでよく使われる用語もご紹介します。

<ノンヴィンテージ(NV)>
どのメゾンでも基本となる、ヴィンテージ表記のないNV。現行の収穫年をベースに、必要に応じてリザーヴワインをブレンドし、そのブランドの味わいを均一に保ちます。瓶内熟成期間は15カ月以上。

<ヴィンテージorミレジメ>
当たり年のみに造られる年数表記のシャンパーニュ。瓶内熟成期間は36カ月以上。

<プレステージ・ワイン>
造り手が自信をもって少量生産する高級品。

<ブラン・ド・ブラン>
「白から造った白」という意味で、白ブドウのみから造られるシャンパーニュ。

<ブラン・ド・ノワール>
「黒から造った白」という意味で、黒ブドウのみから造られるシャンパーニュ。

<RD (Recemment Degorge)>
「最近澱引きされた」という意味。ヴィンテージワインを通常とは別に長期間澱と接触させ、出荷直前に澱抜きしてリリースしたもの。澱引きの時期によって味わいも全く異なるため、最近ではラベルの裏にデゴルジュマンの年月がかかれたものも増えています。

シャンパーニュの生産量の7割を占めるのが、モエ・エ・シャンドンのような大手メゾン。原料の大半を栽培農家から購入して自社ブランドのシャンパーニュを造る、ネゴシアン・マニピュラン(NM)です。一方で、自社畑のブドウのみを使い、栽培から醸造まで一貫で行うのがレコルタン・マニピュラン(RM)。ブルゴーニュのドメーヌにあたり、小規模の家族経営のところがほとんど。生産本数も少なめですが、最近のRMブームにより日本にも品質の高いシャンパーニュが入ってきています。

また、組合員が栽培したブドウで共通ブランドを造ることで、コストを抑えられる協同組合のコーポレート・マニピュラン(CM)もあります。

ポンと音を立てるのは実はNG!?
シャンパーニュのマナーとは

シャンパーニュを開ける際の注意点をお伝えしましょう。何より大切なのは、コルクを抜栓する時にしっかりと親指で栓を押さえて、栓が勝手に飛び出さないように注意すること。シャンパーニュの内圧は約6気圧あり、これは水深50mの水圧と同じぐらいです。

少しずつ栓が上がってきたら、引き続き栓をギューッと抑えつつ瓶を少しずつ回します。ポンと音を出すのはマナー的にはNGで、シューと静かに、“乙女のため息”のように抜栓するのがエレガントといわれています。ただし、お祝いやカジュアルな席などは、わざと音を出すこともあります。TPOに合わせてマナーを使い分けましょう。

グラス選びはどうでしょうか。泡をきれいに見せたいならフルートグラスがおすすめ。白ワインのように香りと味わいをしっかり楽しみたいなら、ぷっくりとボウル部分が大きめのグラスを選びましょう。すっきり系のシャンパーニュは冷やして飲むとよいですし、ヴィンテージや樽熟成のシャンパーニュは温度を高めにしてみてください。

晴れの場や乾杯の際に、さりげなくシャンパーニュの知識を披露してはいかがでしょうか。

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