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ACADEMIE DU VIN本当のリースリングをどこまでご存知?
その素晴らしさと美味しさに迫ります

Lifestyle

白ワイン用のブドウ品種、リースリング。日本では「高貴なブドウ」として位置づけられることが多く、馴染みのない方が多いのではないでしょうか。今回はこの品種の全貌を解説。格付けや産地など詳しくご紹介します。リースリングの「本当の姿」をご覧ください。

生まれ故郷はやっぱりドイツ!
シャルドネとは親戚関係?

「もっとも高貴な白ブドウ」「テロワールを忠実に表現するブドウ」と呼ばれるリースリング。一方で誤解を受けているブドウとも言われ、日本で積極的にリースリングを楽しんでいるのは、相当のワイン通か、ドイツワインによほどのこだわりを持つ人かもしれません。ワイン好きの方で、「これは」と思うリースリングのワインにたどり着いたことのある方は少ないのでは? 今回は、リースリングの素晴らしさと難しさを克服するヒントをご紹介します。

リースリングの生まれ故郷は、ドイツのラインガウ辺りと考えられています。片親はグーエ・ブランというブドウ。古くから存在する品種ですが、あまり知られていません。このブドウはシャルドネやトカイワインのフルミントも親子関係にありますので、お馴染みのシャルドネとリースリングは親戚関係ということになります。

リースリングは、芽吹きが遅い割には比較的早熟ですが、ドイツのブドウ品種の中では晩熟。収穫は黒ブドウのピノ・ノワールやシャルドネよりも後になります。芽吹きが遅いので遅霜には耐性があるといわれます。寒さに強く、収量が上がっても品質が急激に落ちないのは強み。品質を担保する収量は平均的には50~70hl/ha程度ですが、栽培のやさしい平地では、100hl/haを超える収量も見られます。生育期間の平均気温は13℃から17℃までと幅があるため、幅広い気候の地域で栽培されています。

甘口のイメージが大きいリースリング
ドイツでは辛口が半分を占めつつある

リースリングのワインといえば甘いという印象が先行しがち。しかし、本場ドイツでは伝統的な甘口のスタイルは減少して、辛口が半分を占めるようになってきています。

EUの規則では、辛口の場合は残糖4g/Lまでですが、9g/Lまでの残糖ならば、糖度より2度低い総酸度、つまり7g/Lの総酸度があれば辛口に分類されます。残糖4g/Lでも総酸度が低めのブドウ品種ならば、甘く感じます。しかしリースリングは、もともと非常に酸が強くてマロラクティック発酵をすることも稀なので、8g/L〜11g/L程度の酸があるのも普通。ですから9g/Lの残糖があっても辛口に分類されるのです。

目安としては、辛口(トロッケン、ドライ)であることを確認した上で、アルコール度数が10%くらいまでのものは、中甘口からオフ・ドライ、11~12%くらいならオフ・ドライから辛口、12〜13%以上なら辛口と考えてください。

リースリングは香りも特徴です。よく「白い花」「柑橘類」「青リンゴ」とたとえられますが、完熟したブドウから造られた力強いワインは、アンズや青リンゴの香りも見られます。ドイツの夏の終わりから秋頃の、優しく長い日照時間のなかで育てられたリースリングは、代謝をゆっくりしながら糖を蓄積し、酸も落ちることがなく、香りに恵まれたワインが造られるのです。

ドイツやアルザスのリースリングでは、熟成に伴い穏やかなペトロール香を感じるようになりますが、オーストラリアのイーデン・ヴァレーやクレア・ヴァレーでは、ブドウの生育環境の影響で早いうちからこの特徴的な香りを感じることができます。

ブドウを取り巻く自然環境が表れる?
リースリングはテロワールを映す鏡

リースリングはテロワールを映すブドウと言われます。エレガントで酸が高く柑橘系のモーゼル、豊満でトロピカルフルーツまで感じるラインガウ、凝縮した果実感のイーデン・ヴァレー……。しかし、もっともよく知られた土壌はドイツの粘板岩です。アルザスでは石灰岩土壌が重量感を出しているともいわれます。ワインと土壌との関係における第一人者のアレックス・マルトマンは、ドイツでは粘板岩土壌の畑のほうが石灰岩土壌の畑で育ったリースリングよりもpHも低くて高い酸に恵まれていると述べています。

仕立ては、ギュイヨなどの垣根仕立てで栽培されるのが一般的ですが、急斜面に畑が拓かれているモーゼルでは、作業者の利便性や安全性の面からワイヤーを使わない長梢をハート型に曲げた棒仕立てが用いられます。他にも、短梢剪定が使われる場合もあります。

醸造では、トレードマークである酸が落ちないようにスキンコンタクトには慎重です。しかし一部の生産者は、酸は高いが成熟度が余り高くないという場合に、発酵前にスキンコンタクトを用いて、果皮からアロマを抽出しています。マロラクティック発酵を避けるために、亜硫酸を添加する生産者が多数派。ドイツやアルザスでは過去、伝統的には大樽を使用していました。近年ではフレッシュさ、クリーンさを念頭にステンレンスタンクを使う醸造が主流です。また、リープフラウミルヒと呼ばれる軽い甘口ワインやバルクワインを除けば、ブレンドも稀です。

果汁糖度による分類と
品質に注目した格付けがある?

ドイツワインの原産地呼称にはクヴァリテーツヴァインと、その上位としてプレディカーツヴァインがありますが、補糖が許されない高品質ワインのプレディカーツヴァインにはさらに果汁糖度によって6種類の分類があります。

その中でもっとも果汁糖度の高いのは、トロッケンベーレンアウスレーゼ。以下、果汁糖度の順に、ベーレンアウスレーゼ、アウスレーゼ、シュペートレーゼ、カビネットとなります。アイスヴァインは凍結したブドウを使いますが、果汁糖度ではベーレンアウスレーゼと同程度です。

まとめると、プレディカーツヴァインに分類されている高級ワインはおおむね、貴腐ブドウや過熟、完熟ブドウが使われた甘口や、辛口といっても日本市場で見かけるものは、残糖が高めのワインが大半となっています。

ワインの品質に注目した格付けはどうでしょうか。1910年に設立されたVDPドイツ高級ワイン生産者協会はドイツ全土で200程度の生産者の民間団体に過ぎませんでした。しかし、指定した畑で造られるワインで、厳しい条件を満たした辛口ワインをグローセス・ゲヴェックスと名付けて、「GG」というマークを付けることとしたのです。

この格付けが徐々に定着し、2012年からは、ブルゴーニュの方式に類似した広域地方名ワインのグーツワイン、村名ワインに相当するオルツワイン、1級エアステ・ラーゲ、そして特級グローセラーゲという4段階の階級を定めました。このVDPの階級が取り入れられ、2021年1月に1971年のドイツワイン法が改正されました。2026年のヴィンテージから適用になる予定です。2002年からはオーストリアでも、糖度に基づく分類に加えて産地の個性を重んじた原産地呼称による区分、DACが導入されました。

これだけは押さえておきたい!
リースリングの最重要産地と生産者

冷涼な大陸性気候のドイツでは約24000ha、全世界の約4割を占めるリースリングが栽培されています。2017年国際ブドウ・ワイン機構(OIV)のデータでは、ドイツの栽培面積の25%ほどを占めています。

モーゼルは栽培の北限にあり、モーゼルの気候はラインガウと比べても気温が低く降雨量も多いので、十分な日照が必要です。ルクセンブルクとの国境沿いを流れ、蛇行するモーゼル川沿いの急斜面で太陽の恵みを一身に受けるブドウ畑は世界的にも有名です。

ドクター・ローゼンはモーゼル中流のベルンカステル村に居を構える高名なワイナリーです。現当主エルンスト・ローゼンは、ドイツでもっとも知名度の高い醸造家。1999年からはアメリカ・ワシントン州の大手ワイナリー、シャトー・サン・ミッシェルとの合弁で、『エロイカ』という名のワシントン産リースリングも生産しており高い評価を受けています。今日では台木を使った栽培がされていますが、粘板岩の土壌のおかげでフィロキセラの被害が限定的で自根の古木も見つかります。モーゼル川下流のヴィンニンゲン村の銘醸畑ウーレンが良い例。同じく下流のブレーマー・カルムントは斜度60度を優に超える、急斜面の畑です。世界でもっとも急こう配のぶどう畑とされています。

モーゼル川の上流のザールは、ドイツでももっとも繊細でエレガントなワインを生むといわれている場所。この地にはエゴン・ミュラーが最大の所有者であるシャルツホーフバーグがあります。そのワインはリースリングの究極として、最高の評価を受けつづけています。

検索エンジン『ワインサーチャー』の世界高額ワイン・ランキングでは、エゴン・ミュラーのシャルツホーフベルガー・トロッケンベーレンアウスレーゼが世界的に有名。最近では2017年、2019年、2020年に白ワイン世界第1位に輝いています。この地のシュロス・ヨハニスベルクは、1720年からリースリングに特化した栽培を始めた世界最古の畑とされています。1775年に収穫を遅らせたことで、シュペートレーゼを生み出したという事でも有名です。

アルザスは空気が乾燥しており年間日照量も多い大陸性気候。その山裾にあたる丘陵地の、南を向いた斜面に植えられたリースリングから良質のワインが生まれます。ドイツの軽い甘口スタイルのワインよりは残糖が少なく、鋼のような厳格さがあります。一方で近年では、地球温暖化の影響もあり、アルコール度数が上昇、残糖のあるワインも増えてきています。また、リースリングはこの地で定められている高貴ブドウ品種の一つでもあります。

トリンバックは1626年に創業の、アルザスきっての家族経営の名門大手ワイナリーです。40haの自社畑ではすべて手摘みでブドウを収穫して、ワインは8割以上を輸出に回しています。トリンバックと並び称されるヒューゲル・エ・フィスも、大手名門ワイナリー。ヒューゲル一族がワイン造りを始めたのは 1639年に遡ります。やはり8割以上を輸出して国際的に評価されています。

オーストリアのリースリングの栽培面積は5%にも届きませんが、ニーダーエスターライヒ州が銘醸地です。ヴァッハウはその中でも素晴らしい産地でドナウ川を臨む急斜面でブドウが栽培されています。この産地の主要ブドウ品種であるグリューナー・ヴェルトリーナーを押しのけて、一等地の斜面で片麻岩や花崗岩の土壌に根を伸ばします。ヴァッハウでは残糖9g/L以下の辛口でアルコール度数とスタイルに応じたヴィネア・ヴァッハウの格付けが、良く知られています。エメリッヒ・クノルはヴァッハウを代表するワイナリーのひとつ。家族経営のワイナリーで、15haほどの畑からクラシックで複雑なワインを造ります。

オーストラリアでは、リースリングは栽培面積全体のたった2%程度しか占めていません。それにもかかわらず、クレア・ヴァレーとイーデン・ヴァレーは銘醸地として世界の市場で存在感を放っています。

クレア・ヴァレーは温和ですが夏場の日較差は30度にも達します。高い酸を保ったまま、ゆっくりとブドウを熟させ複雑な味わいになるのです。1981年にジェフリー・グロセットが設立したワイナリーのグロセットは、オーストラリア随一の造り手です。イーデン・ヴァレーは高度と風の影響で、冷涼な気候です。辛口で高い酸を持ち、ステンレスタンクで残糖を低く抑えたワイン造りが主流です。

アメリカのワシントン州のコロンビアヴァレーは、太平洋側から来る湿った空気が遮断されて乾燥した大地が広がっています。秋に入ると日は急に短くなり、日較差も大きくなり、リースリングに必要な高い酸が保持されます。シャトー ・サン・ミシェルは単独企業としては世界最大のリースリング生産者です。

リースリングは子だくさん?
複雑な交配品種を生み出してきた

リースリングはさまざまな交配品種を生み出したことでも知られています。リープフラウミルヒの爆発的な売り上げで一躍有名になったミュラー・トゥルガウは、リースリングとマドレーヌ・ロイアルとの交配で19世紀後半に生まれました。生育も容易で収量も多く、ドイツでは最大品種になったこともあります。

ケルナーは黒ブドウのトロリンガーと交配させて生まれた白ブドウです。ショイレーベはブッケトローブの交配種で、1916年に生み出されました。

近年には、ピーヴィと呼ばれるカビ菌耐性品種が注目を集めています。黒ブドウ品種のレゲントがもっとも有名ですが、リースリングとの交配品種としては、ヨハニターが白のピーヴィ品種として挙げられます。グラウブルグンダー(ピノ・グリ)とグートエーデル(シャスラ)の掛け合わせにセイヴ・ヴィラール12481(ハイブリッド)を掛け合わせたものを、さらにリースリングと掛け合わせたものです。

日本において、本当に辛口のリースリングを見かけるのは稀なこと。この高貴なブドウが再評価されることは間違いないといわれながら、なかなか爆発的なブームには至りません。海外におでかけの際などに、ぜひさまざまなリースリングを試してみてください。



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