ACADEMIE DU VINメルロとは?
万人に愛される黒ブドウ品種の秘密

Lifestyle

華やかな果実味と芳醇な味わいで、万人の心を掴む「メルロ」。その親しみやすさから、世界中で愛されている品種です。比較的早くから飲んでも楽しめるうえ、長熟にも耐えられるポテンシャルを持っているのが人気の秘密。今回は、カベルネとブレンドされる理由からメルロの主な産地、料理とのマリアージュまでを詳しく解説します。「個性がいまいち掴めない」という人が多いメルロも、この記事を読めばその特徴がよく分かるはずです。

万人に愛されるメルロ
カベルネとブレンドされる理由とは?

プラムやカシス、ブルーベリーといった豊かな果実味と、柔らかくまろやかな味わい。メルロはその親しみやすさから、世界中で愛されています。とりわけ極上のメルロは、ビロードにも例えられるなめらかなタンニン、熟成により加わる複雑なブーケで、飲む者を官能の世界へと誘います。

渋みが少なく、比較的早くから飲んでも楽しめるうえに、極上のものは長熟にも耐えうるというポテンシャルがあるのもメルロの大きな魅力です。メルロの芳醇な果実味とまろやかな味わいは、赤ワインが苦手な人の舌も魅了しました。

カベルネ・ソーヴィニヨンに比べると、メルロのブドウは房も粒も大きく、ジューシーです。収量制限をしないと、驚くほどたくさんの実をつけます。果皮はやや薄く、アントシアニンとタンニンの量は控えめ。酸味も控えめで、単体だとワインの色味が薄いまろやかなワインになります。

芽吹きが早いうえに、比較的早熟なブドウであるメルロは収穫期に雨が降りやすい産地でも重宝されます。ボルドーではよくカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドされますが、そのひとつの理由は、メルロはカベルネより早く収穫できるため、天候不良によるリスクを分散できるから。カベルネが不出来な年はメルロの比率を増やせるので、ブレンドの調整がきくのです。

世界の栽培面積はカベルネに次ぎ世界2位です。冷涼な場所だと青臭い香り成分が出やすくなりますが、一方で糖度も上がりやすいため、暑すぎる場所だと過熟によりジャムのような味わいになります。

フレッシュな味わいを保つためには、ブドウの熟度と酸度のバランスがとれた、適した時期に収穫することが大切になります。

日本のメルロも外せない!
世界におけるメルロの主な産地6選

それでは、メルロの主な産地を見ていきましょう。

・フランス
メルロの故郷ボルドーでは、カベルネ・ソーヴィニヨンが「王様」、メルロは「女王様」という位置付けでしょうか。

力強くがっしりとした骨格と渋みを持つカベルネに、メルロが柔らかな果実味とボディをプラスし、お互いの足りない部分を補い合う最強のパートナーです。

ボルドーの大半の生産者はカジュアルなワインを造っているのですが、カジュアル・ボルドーの基軸品種がまさにメルロ。親しみやすく早飲みにも向き、必ずしも樽で長い間熟成する必要がないためコストも抑えられるからです。ボルドーワイン委員会はこのカジュアルなボルドーワインのプロモーションに力を入れています。

・アメリカ
赤ワインブームの影響で、1990年代~2000年初頭にメルロの栽培面積が一気に増えました。特に、温暖なカリフォルニアのメルロは極めて飲みやすく、消費者の人気を集めました。しかしその後、メディアなどの影響でメルロのブームは下火になります。栽培面積も減少しました。

最近は、それまで出回っていた粗悪なメルロが一掃され、全体的に質が上がったといわれています。再びメルロの時代が来るかもしれません。

・イタリア
意外にもメルロの栽培面積が大きいのがイタリア。黒ブドウだと、サンジョベーゼ、モンテプルチアーノに次ぎ三番目に多く栽培されています。ブレンドに加えると酸を和らげ丸みを与えるメルロは、イタリアが誇る地品種サンジョベーゼのよいブレンドパートナーになるので、ブレンド用品種としても重宝されるのです。

比較的冷涼な場所で育つため、イタリア北東部(フリウリ、トレンティーノ、ヴェネト)で栽培が盛んであり、さらに中部のトスカーナや南部のウンブリアでも逸品が造られています。

・チリ
チリでもメルロは主要品種のひとつ。19世紀半ばにボルドーから苗木が持ち込まれました。「チリアン・メルロ」と呼ばれチリに馴染んでいたメルロですが、なぜか現地には「早く熟すメルロ」と「遅く熟すメルロ」のふたつがありました。熟期の違う2種類を同時に収穫すると、熟した果実味に青っぽさやスパイシーさが加わり、独特の風味を生み出していたとも言われます。

実はこの「遅く熟すメルロ」はボルドー品種のカルメネールであると判明しました。今では植え分けが進み、それぞれの品種に合った栽培がされています。

・ニュージーランド
冷涼な気候のニュージーランドでは、白はソーヴィニヨン・ブラン、赤はピノ・ノワールが2大品種ですが、黒ブドウの栽培面積は2位がメルロです。温暖な北島で上質なメルロのワインが造られています。

・日本
やや水分が多い土壌でも完熟できるメルロは、日本でも栽培の成功例が多く、欧州系品種では栽培面積トップクラスを誇ります。長野県は降雨量の少なさと夜間の気温の低さが欧州系品種の栽培に向いており、この長野県を筆頭に、山梨、山形、岩手県、大阪など日本各地で栽培されています。

実はデザートにも合う!?
メルロと料理のマリアージュ

リーズナブルなワインから高級なものまで、価格もスタイルもさまざまなのがメルロの魅力。高級ワインでも比較的飲み頃が早いメルロは、ワインセラーに長期間保管できない人にも嬉しい品種です。また万人受けするので、大勢で楽しむシーンにも最適であり、ワイン初心者へのプレゼントに向きます。

有名な産地のほか、ルーマニアやブルガリア、モルドバなど東欧にも安くて美味しいワインがたくさんあるので、ぜひ探してみましょう。

メルロには肉料理がよく合います。特に、口の中でほろりと溶けるような柔らかい肉がおすすめ。ビーフシチューなどの煮込み料理や、ジューシーなハンバーグとは抜群の相性です。

日本のメルロはどこか土っぽさを感じるものが多く、和食の煮込み料理、たとえば筑前煮とも合います。カベルネの香りが加わるボルドーブレンドであれば、ジンギスカンやラムなど少しクセのある肉とも相性がよいでしょう。

上級者には、デザートとのマリアージュがおすすめです。カリフォルニアなど温暖な地域のメルロのように、熟した果実の甘いニュアンスを持つメルロは、チョコレートやフルーツケーキなどのスイーツにぴったりです。ぜひ一度お試しあれ。


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