アップサイクルにしてハイパフォーマンス、そしてバリュープライス!廃ヘッドランプを再活用!プラスチックの可能性を広げるウチダプラスチックのサステナブルサングラスへの挑戦

トヨタファイナンスのカード会員さま限定のオンラインショッピングサイト「TS CUBIC SHOPPING」で今、大人気となっているのが、福井県鯖江市のウチダプラスチックが手がけているサステナブルなサングラスです。本作が生まれてきた背景には、どのような歴史や想いがあるのでしょうか。その熱いストーリーを解き明かします。
Text:Kiyoto Kuniryo
Photo:Takao Ota
Edit:Akio Takashiro(pad inc.)
祖父が興した「工房勝治郎」に始まるものづくりの系譜
福井県鯖江市は、国内生産シェアの9割を占める眼鏡産業、繊維王国福井の中核を担ってきた繊維産業、1500年もの歴史があって国内の業務用漆器生産の8割を占める漆器産業といった伝統産業が盛んで、そこにITなどの最先端産業が集積した「ものづくりのまち」として名を馳せています。
この地において、類いまれなる情熱と技術、環境対策の先進的な取り組みで異彩を放っているのがウチダプラスチックです。同社は、ペットボトルをリサイクルした軽量で実用強度のある眼鏡フレームの開発に日本で最初に成功しました。また、トヨタグループのアップサイクルプロジェクトの一環として、廃棄されるヘッドランプのカバー部分を使用したサングラスを生産しています。代表取締役社長の内田栄時氏にお話を伺いました。
「歴史をさかのぼると、ウチダプラスチックのものづくりは、私の祖父である内田勝治郎が1926(大正15)年にスタートさせた木製漆器工場『工房勝治郎』が原点となります。旺盛な起業家精神を携えていた父の時男が祖父の会社から独立して1959(昭和34)年に立ち上げたのが、内田プラスチック(現ウチダプラスチック)です。父は、『プラスチックの漆器風業務用食器』という新しい産業を創造しました」

「先代社長である父は、昭和の高度経済成長期に『元禄膳』という大ヒット商品を生み出しています。全国各地の温泉旅館などで宴会時に使われる一人用折り畳み式膳が売れに売れました。ウチダプラスチックの祖業であるプラスチック製業務用食器の生産は、現在も続いています。例えば、日本で知らない人はいないであろう牛丼や回転寿司のチェーン店などで、私たちが生産する食器が使われています」

環境に配慮した商品づくりに本腰を入れてきた
プラスチック成形業一筋で一時代を築いてきた父親の背中を見て育った内田氏は、ウチダプラスチックならではの「研究と創造の精神」を受け継いでいます。さらには、大学で経営学を学び、平成から令和の時代を生きる経営者として「プラスチック成形業者に求められる真摯さや社会的責任の重さ」を心に刻み付けています。
「今、地球環境を考えたときにプラスチックによる影響が大きな課題となっています。ウチダプラスチックは創業以来、『プラスチックをとおして豊かな社会づくり』を目指してきました。21世紀のウチダプラスチックは、プラスチックのライフサイクルである開発・生産・使用・廃棄のすべての段階において、環境に配慮した商品づくりに取り組んでいます」
この言葉は、伊達ではありません。内田氏は、父の跡を継いで2004年に代表取締役社長に就任したあと、2007年には食洗機対応の業務用樹脂箸の開発を指揮し、成功に導いています。その契機となったのは、割り箸の原料となる木材の伐採により、現地(中国)の森林が破壊されているというメディアでの報道でした。
「当時、食洗機対応の業務用樹脂箸は世の中に存在していませんでした。開発に成功すると、大手外食チェーンや大企業の社内食堂などへの納入が決まり、大ヒット商品となりました。21世紀のウチダプラスチックは、地球にとっても人類にとっても有益な存在でなければならないと考えています」
この思想は、リサイクル素材を利用したエコ商品の開発にもつながっています。21世紀のウチダプラスチックは、先代の時代にも増して研究開発型の企業へと舵を切っているのです。
「福井の海岸には海外から流れ着いたものも含めて多くのプラスチックごみが漂着しています。海岸や家庭から集めたペットボトルをフレークにしてリサイクルする商品の開発についても、ウチダプラスチックは比較的早期といえる2000年代から取り組んできました」

トヨタグループのアップサイクルプロジェクトに参画
1959年に創業して以来、先代の先導によってウチダプラスチックに蓄積されてきたプラスチック成形の技術やさまざまな素材に関するノウハウ。二代目の内田氏が社長に就任した2004年以来、強い想いで積み上げてきたリサイクル技術。これらが渾然一体となり、3万本ものフレーム試作、約2年半の開発期間を経て、ペットボトルをリサイクルした眼鏡フレームは2019年の秋に完成しました。
「遂に、日本初のペットボトルをリサイクルした軽量で実用強度のある眼鏡フレームを開発することができました。眼鏡やサングラスといったアイウェアに使用される素材には、頭の形に沿うしなやかさが求められます。それと同時に強度も必要で、耐久性にも優れていなければなりません。欠くことのできない条件がいくつもあるのです。しかし、循環型で持続可能な提案をすることが私たちの使命だと考えているので、開発の途中でギブアップするわけにはいきませんでした」
ペットボトルを再利用したサングラスは、日本で前例のない技術的な取り組みとして環境省と日本財団から正式に評価され、海洋ごみの対策で優れた事例を発信する「海ごみゼロアワード2020」のイノベーション部門で「日本財団賞」を受賞。サステナブルなものづくりにおける先駆的事例として、大きなインパクトを放つことになったのです。
「今、トヨタグループのアップサイクルプロジェクトに参画できているのは、こうした実績がウチダプラスチックにあったからこそ。フレームの素材には、トヨタグループの販売店から届いた廃棄材を再利用しています。ヘッドランプのカバー部分に使われているポリカーボネートですね。そもそも、ポリカーボネートは硬くて丈夫ながら弾力性にも富んでいる素材なのですが、トヨタ車のヘッドランプカバーに使われているポリカーボネートは特に優れています。一般的なポリカーボネートよりも弾力性と耐衝撃性があり、紫外線による劣化にも強いという高機能素材なのです。すなわち、サングラスにとても適した素材といえるでしょう」

「これらのサングラスには偏光/調光レンズを採用しているので、ドライブはもちろんのこと、さまざまなアウトドアスポーツに最適です。おかげさまで『TS CUBIC SHOPPING』で2023年12月に約200本完売、2024年7月に180本完売、累計で1,000本以上を販売するほどの人気を博し、2025年7月に追加販売されることが決定しました」
購入者へのアンケートでは、「商品の品質が良い」65%、「トヨタの取り組みを評価」69%という結果が出ており、「商品のストーリーに共感」という項目に至っては、実に86%が同意している。人気の秘訣はどうやらこの辺りにあるようです。
今回の取材では、まさにその追加生産の現場をキャッチしました。




「鯖江の眼鏡産業は分業制で知られていますが、ウチダプラスチックでは塗装を除いたすべての工程を自社工場で一貫して行っています。細部にまで気配り・目配りを効かせた丁寧なものづくりを心がけながら、今の時代の価値観に適合したアップサイクルかつハイパフォーマンスな商品を、手頃な価格にて、トヨタオーナーの皆さまのためにエクスクルーシブで生産しています。どうかお手にとってみてください」