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NIPPON地域のとりくみ【1】美しい海山に恵まれた 「環境モデル都市」水俣 熊本県・水俣市 text:Mimi Murota photos:Hiroshi Mizusaki

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公害の歴史を教訓に環境意識の高い街へ成長を遂げた水俣市。 自然の大切さを伝える村おこし事業、無農薬栽培で育てる和紅茶、 画期的なリサイクルシステムなど、各地域の取り組みを グラフィックデザイナーの小坂和子さんが訪ねた。

巡る人
グラフィックデザイナー
小坂和子さん

1972年熊本県生まれ。武蔵野美術大学短期大学部卒業後、東京の広告代理店、フリーランスなどを経て、2017年に移住先の熊本県山都町で「みずたまデザイン」設立。山都町を中心に熊本県の商品パッケージ、ブランディングを手掛ける。

久木野地区に広がる自然林を前に森を保全する大切さを説明する館長の沢畑 亨さん。
森林に咲く、葉緑素を持たないギンリョウソウ。
1日3,000tを湧出する寒川水源。寒川地区15軒の生活用水を賄う他、水俣川の水源となっている。
石垣積みに囲われた棚田。集落の風景、暮らしのすべてが展示物となる。

地域の生活学芸員が案内してくれる「村丸ごと生活博物館」の活動

村の暮らしと知恵を学び、自然保全の大切さを知る

熊本県の最南端に位置する水俣市。西側の海岸線には夏の限られた時期に蜃気楼が沖合に現れることから不知火海(しらぬいかい)とも呼ばれる八代海(やつしろかい)が広がり、グラフィックデザイナーの小坂和子さんは到着するなり、青く澄みわたる海の美しさに目を奪われた。

水俣市では公害の歴史を教訓に1992年、日本ではじめて「環境モデル都市づくり宣言」 を行い、環境に配慮した街作りに取り組んできた。八代海も再生事業で浄化され、太刀魚を名産とする豊かな漁場へよみがえり、穏やかに波打つ景色が人びとの目を楽しませている。

小坂さんが訪ねたのは、その八代海に流れ注ぐ水俣川上流に佇む久木野地区。この地区は水俣市元気村づくり条例に基づく「村丸ごと生活博物館」に指定された地域で、「水俣市久木野ふるさとセンター 愛林館」を拠点に、地域の生活文化や自然、産業を、訪れる人へ案内する活動を行っている。

館長の沢畑 亨さんは、「集落全体を屋根のない博物館と見立て、市から認定された村の住民が生活学芸員と生活職人となり、土地の風土や暮らしの知恵と技術を紹介する取り組みです。村の魅力を伝える活動を通して、住民自身もまた魅力を掘り起こす地域作りに意識を傾け、村全体を元気にするのが目的です」と説明する。

沢畑さんの案内で向かったのは、村内一の絶景を誇る棚田。用水路を勢いよく流れるのは川から引いた水と聞き、小坂さんは「水の豊かさに驚きます」と感想をもらす。その源を探る遡上の旅へ出るように寒川水源から村の産業資源である森林へ足を踏み入れ、沢畑さんが解説する「森林の持つ公益的機能」に耳を傾ける小坂さん。

「森林が良質な水を生み、その水が川へ流れて豊かな海を作る。村の素朴な風景に癒されながら人びとの暮らしに潤いをもたらす棚田や森林の役割をわかりやすく教えていただき、自然環境保全の大切さを学ぶことができました」

昭和63年に廃線になったJR山野線久木野駅の跡地を活用した村おこし施設。生活学芸員に習う豆腐作り体験なども実施。

施設情報

水俣市久木野ふるさとセンター 愛林館
住所:熊本県水俣市久木野1071
Tel:0966-69-0485
http://airinkan.org/

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