Aerial Outdoors子どもの頃、夢見た空想の世界観。
ツリーハウスの魅力がここに

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うららかな春の訪れを感じるこの季節は、アウトドア・アクティビティを満喫するのに絶好の時期。そこで、常に好奇心にあふれるアクティブな皆さまにおすすめなのがツリーハウスです。ログハウスから文字通りワンステップあげた秘密基地で過ごす至福のひと時の魅力を、日本のツリーハウスカルチャーの第一人者であり、これまで国内外で200棟以上のツリーハウスを制作してきた小林崇さんに聞きました。

自然と一体になり、木の上で寝る――
非日常のアウトドア体験

進化しながら現代に紡がれるツリーハウスの文化

ツリーハウスは、密林地区などで狩猟の拠点としての住居や倉庫、外敵(敵部族や猛獣、危険な昆虫)から身を守る見張り台として建てられていた長期利用を目的としない仮設建築が起源。
「パプアニューギニアのイリアンジャヤ地域のネイティブであるネオコロアイ族は“樹上の部族”として有名な部族。現在でもツリーハウスで暮らしていますが、大航海時代に現地を訪れたイギリスの艦隊が彼らのツリーハウスを発見し、本国に帰った後、宮廷の庭師に造らせたことでヨーロッパに伝わったといわれています」

パプアニューギニアのコロアイ族がツリーハウスで生活している様子

その後、ヨーロッパ各地に普及し、1960年代後半から70年代に起こった戦争と文明へのカウンターカルチャーであるヒッピームーブメントの中でアメリカに広まり、1990年代頃から日本でも注目を集めるようになりました。
「工業製品や資本主義に頼らないエコブームが起こり、当時流行した“ロハス”というライフスタイルの象徴として、ツリーハウスがポピュラーになりました」

そこから、ツリーハウスカルチャーは、学校や公園といった公共施設の遊具やレジャー施設、アトリエや書斎といった個人の秘密基地まで広がり、ユニークな進化を遂げました。近年では定番のホテル宿泊の旅行では飽き足らない一部のツーリストたちに、非日常を楽しむためアウトドアキャンプのスタイルのひとつとして人気が高まり、“人とは違う体験”を目的とした人に、ツリーハウスの需要も高まっているようです。

小林さんが製作した「茶室」がコンセプトのツリーハウス。画像提供:TREEHOUSE CREATIONS

「僕はツリーハウスの作り方講座も開催していますが(※2021年4月現在休止中)、コロナ禍になり家族単位で安心して楽しめるアクティビティのひとつとして、小さいお子さんがいるファミリーからの依頼が増えましたね」

五感を刺激し、自然と深く繋がる体験

30年近くツリーハウスビルダーとして活動している小林さんが考えるツリーハウスの魅力は「感性を刺激する非日常体験」
「まずなにより、子どもの頃に空想した物語の世界の中にいるような非日常体験が魅力です。ツリーハウスは人間の創造物でありながら、生きている巨木でもある。現代はインターネットが当たり前になり、どこにでも行ったような気になれますが、実際に登って木肌に触れ、風や木漏れ日を全身で浴びて森の匂いを感じると、同じ高さの建物から見る景色と感じるものがまったく違う。社会と自然界を繋ぐハブ的な位置にあり五感が刺激されて、より深く自然と一体化する感覚はツリーハウスならでは」

重度の障害者のためのキャンプ場に小林さんが製作したバリアフリーのファンタジックなツリーハウス。画像提供:TREEHOUSE CREATIONS

そこでの滞在は「自由にあふれている」と続けます。
「日本はいい意味でも悪い意味でもオーガナイズされ過ぎている国。法律やルール、基準、マナーがあり、特に今は『あれに触ってはダメ』とかセンシティブな風潮ですが、ツリーハウスはそういったものから解き放たれた自由な空間です」

「ツリーハウスは子どものクリエイティビティも刺激します」。幼児と楽しむ場合は必ず傍らで見守ろう。画像提供:TREEHOUSE CREATIONS

とりわけ子どもが自然の大切さを体感するのに最適だとか。
「もちろん高い場所なので最低限の注意は必要ですが、干渉せずに見守るくらいがちょうどいい。本来子どもの遊びにルールはありませんから。本能のままに遊んで、冒険する楽しさを全身で味わってもらえたら嬉しいですね」

既成概念にとらわれない
自由なツリーハウスのスタイル

日本のツリーハウスは、平均すると地上から5〜6メートルの高さで、広さは四畳半から6畳くらいが一般的とのことですが、そのスタイルは多種多様。今回、小林さんが手がけたツリーハウスの中でも、利用用途や目的、そして楽しみ方が異なる作品をいくつか紹介していきましょう。

●集落に建つ『どんぐりのやぐら』

依頼主が他界し、役目を終えたツリーハウスも解体された。「ツリーハウスの背景には心に響く物語があります」。画像提供:TREEHOUSE CREATIONS

「鹿児島の日置市の集落で、かつて子どもたちが遊んでいた情景を取り戻したいという夢を語った年配の依頼者のオーダーで建てました。エノキの木で木の枝と枝の間の窓から景色が見られるように角度をずらした構造になっています」

●地上19メートルの秘密基地『beach rock village』

台風の影響を面で受けないようにドームスタイルを採用。画像提供:Peter Nelson

「沖縄本島の北部に広がるやんばるの森に、物書きの後輩が自給自足のヴィレッジをつくった時、その象徴として地上19メートルのリュウキュウエノキの上に造ったツリーハウス。アルミやタイルを取り入れて空と海が一望できるだけでなく、床がスケルトン構造なので、手つかずの森がスリリングかつダイナミックに見下ろせます」

●都心にあるアーティスティックなダビデの星

現代アートのようなデザインがツリーハウスの自由度を物語る。画像提供:TREEHOUSE CREATIONS Nelson

「東京・白金のライフスタイルやファッション、フードの複合ショップ『BIOTOP(ビオトープ)』の中庭に建てました。場所に合わせてモダンなデザインで、土台は三角形を組み合わせてダビデの星をイメージしたものです」

●コアラも登る南の島の遊び場

宿営室や校長室から中がよく見える構造になっている。画像提供:TREEHOUSE CREATIONS

「南オーストラリア州のキングズコートという小さな島にある学校の遊具。アートに力を入れている学校で、タコの足をイメージして造りました。人間より動物の数が多い環境なので、足になっているユーカリの木にコアラも登ってくるんです」

世界中で親しまれているツリーハウスは子どもだけが楽めるものではありません。そこには現代社会に暮らす大人だからこそ得がたい体験があります。
「僕が思うツリーハウスでの最高の滞在は、誰にも邪魔されない自分だけの空間を楽しむこと。そういった意味では車と同じかもしれません。ツリーハウスに登り、情報やメディア、携帯電話など高度な文明社会をシャットダウンして“なにもしない”という体験は、まさに贅沢の極み。忙しい日々を送る都市部のビジネスマンがリフレッシュするのにも最適なので、ぜひ一度体験してみてください」

夜はロマンティックな夜景の世界に没入できる。画像提供:TREEHOUSE CREATIONS

紹介してくれた人

ツリーハウスクリエーター
小林崇さん

1957年静岡県生まれ。ツリーハウスクリエーター。スタイルとデザイン、感性をコンセプトにしたツリーハウスを創作する日本のツリーハウス第一人者。世界中のツリーハウスビルダーや樹木医と交流しながら最先端の技術やデザイン、樹木学等を学び、ツリーハウス情報を共有・発信。2005年に株式会社ツリーハウス・クリエーションを設立し、日本全国だけでなくアジアやオセアニア、アメリカなど国内外で各地の風土・樹木に適したツリーハウスの製作を行う。

【取材協力】
TREEHOUSE CREATIONS
http://www.treehouse.jp/news_thc/

ツリーハウスで滞在できるおすすめのキャンプ場

現在では、ツリーハウスのあるキャンプ施設も多く点在するようになりました。
こちらのサイトなどを参照に、ぜひツリーハウスを堪能してみてはいかがでしょうか。

●北軽井沢スウィートグラス

群馬と長野の県境に位置するキャンプ場。浅間山の豊かな自然環境を背景に、森や小川を抱く美しいフィールドの中にある多彩な施設の中でも、ツリーハウスは木立の中にある高床式ときのこをモチーフにしたファンタジックなスタイルの2タイプ。最小限の家具と薪ストーブ、電気だけのミニマムな滞在は、まさに森と一体化できる非日常が満喫できます。
https://sweetgrass.jp

●ホウリーウッズ久留里キャンプ村

千葉県君津市の樹齢100年を超える森の中にある人気のキャンプ場。神聖な空気感が漂う森林は、四季折々のありのままの表情をのぞかせ、都会の喧噪を忘れさせてくれます。場内に建つ5.5畳のツリーハウスはカーペットのみで寝具も照明もない原始的なスタイル。朝陽を浴びながら起床し、澄んだ空気を体中で浴びながら自然とともに「なにもしない」贅沢な時間を過ごし、日暮れとともに1日の幕を閉じる。そんなネイチャー体験をぜひ。
https://holywoodscamp.jimdofree.com

●アメリカキャンプ村

東京を感じさせない大自然が広がる奥多摩のキャンプ場。本格的なアスレチックや釣り堀、川遊びなど、子どもから大人まで楽しめるアクティビティスポットが充実する中で、バラエティ豊かな宿泊施設が点在。8棟あるツリーハウスは4人向けのファミリータイプで、冷蔵庫やエアコンが完備されているのでビギナーにおすすめです。都心から車で約1時間半のアクセスの良さも魅力的。
https://www.americacampmura.jp

重力から解放された浮遊キャンプ
“テントサイル”とは?

地上から解放されたキャンプは、ツリーハウスだけに限りません。イギリスで誕生した“空中テント”の愛称で知られる「テントサイル」も昨今、人気が高まっているキャンプスタイルのひとつです。こちらは、周辺の木々にロープを括りつけて宙に浮いた状態でテントを張って、その中で過ごします。地上では味わえない独特な無重力感は、まさにこれまでにないアウトドア体験。こちらも機会がありましたらぜひ一度体験してみはいかがでしょうか。

【取材協力】
https://tentsile-japan.com/

2021 Autumn

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