Harmony 2017年5/6月号
スペシャルコラム

世界基準のトヨタ車が生まれる現場へ

文・サトータケシ 写真・岡村昌宏

  • ヤードではランドクルーザー、ランドクルーザー・プラドのほか、4Runner、ヴァンガード、RAV4といったモデルが船積みを待っている。

    ヤードではランドクルーザー、ランドクルーザー・プラドのほか、4Runner、ヴァンガード、RAV4といったモデルが船積みを待っている。

  • 5万トンクラスの自動車専用船には12または13のフロアがあり、約5,000台の車両を積載することができる。1日あたり、約2,500台が船積み可能。小石の跳ねキズを避けるため、車両を並べるヤードは清掃が行き届く。アメリカ西海岸なら2週間、東海岸なら4週間の船旅となる。

    5万トンクラスの自動車専用船には12または13のフロアがあり、約5,000台の車両を積載することができる。1日あたり、約2,500台が船積み可能。小石の跳ねキズを避けるため、車両を並べるヤードは清掃が行き届く。アメリカ西海岸なら2週間、東海岸なら4週間の船旅となる。

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力強い加速と、ゆったりとした乗り心地。名は体を表すというか、ランドクルーザーは長距離の自動車旅行にうってつけのクルマだった。遠州でのドライブを満喫した後で、少し足を延ばしてこのクルマの生産現場を訪ねてみた。ランドクルーザーの生産は、主にトヨタグループのトヨタ車体が担当するが、愛知県の渥美半島に位置する田原工場でも作られているのだ。また、田原工場に隣接して、海外に車両を輸出するための港もある。

同工場組立部で技術員室長を務める遠山伸治さんは、田原工場の特徴を「トヨタでフレーム車を作る工場は、ここだけです」と説明してくださった。

ここで簡単に、フレーム車について説明したい。自動車の構造は、大きくわけてフレーム構造とモノコック構造にわかれる。梯子状の頑丈なフレームにエンジンやサスペンションを取り付け、そこにボディを被せるのがフレーム車。一方、卵の殻のように車両全体が一体化しているのがモノコック車。軽くできるモノコック車が現在の乗用車の主流であるけれど、ランドクルーザーに代表される悪路も走るヘビーデューティなモデルは、耐久性に優れたフレーム構造を採る。前出の遠山さんは、田原工場で特に気を配っていることを次のように語る。

「この工場で作ったクルマは世界中に輸出され、過酷な状況で使われます。もし砂漠の真ん中でトラブルがあれば、命に関わる。だから品質の低いクルマは作れない、という意識で働いています」

遠山さんと同じ部署でグループ長を務める岩下公彦さんが担当するのは、生産現場が働きやすい環境になるようにサポートすること。岩下さんは、こんなことに配慮しているという。

「田原工場で扱う車両は、部品の一つひとつが大きくて重く、部品のボルトを締めるトルクも高い。安全かつ、身体に負担をかけずに作業ができるようにすることを考えています」

生産ラインでは、フレームとボディが一体になる工程を見せていただく。遠山さんによれば、それぞれの精度が高いのでスムーズに合体するとのこと。屈強なフレーム車は、配慮が行き届いた生産ラインで丁寧に作られるのだ。

最終チェックを受けた輸出用の車両は岸壁に運ばれ、船積みを待つ。ランドクルーザーは、その信頼性の高さから世界中で人気のあるモデルだ。田原工場を訪ねて、このクルマが全世界で支持される理由がわかったような気がした。

トヨタ自動車(株)田原工場

生産ラインでは、運搬車両が各工程に部品を運ぶ。部品の積み降ろしが負担だったが、社員からのアイデアで、荷物を積むパレットの重さと、バランサーの重さを入れ換えることで、電力も人力も使わずに部品を降ろす「からくり」という装置が生まれた。

トヨタ自動車(株)田原工場

同工場では1〜7月(GW、夏季連休、年末年始、工場休日を除く)に組立工場と専用埠頭の一般見学を実施している。3カ月前〜2週間前までに予約が必要。

トヨタ自動車(株) 田原工場 総務・広報グループ 工場見学担当 TEL:0531-23-5111

さとう たけし◎1966年東京都生まれ。自動車文化誌「NAVI」の副編集長を務めた後に、独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

おかむら まさひろ◎1968年生まれ。政府系国際協力機関のコーディネーターを経て写真家へ転身。ポートレート、スティル、クルマ、旅などの撮影で雑誌、広告等を舞台に活躍中。CROSSOVER Inc.代表。