たかが酒、されど酒。その一献にまつわる蘊蓄と、
美酒をさらに美味しく楽しむコツとレシピを利き酒師が紹介します。

2016年9月記
至福の一杯【第4回】 豊かな風味と高い満足度が魅力

国産クラフトビールをとことん味わう

文/写真・塩澤雄二

小規模、手作りの味、個性が楽しめることから職人の工芸品になぞらえて「クラフトビール」と呼ばれる国産の銘柄が人気を集めている。「とりあえずビール」から脱却し、「自分に合った一杯」を見いだしてみよう。

「とりあえずビール」からの脱却

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キンキンに冷えたビールをゴクゴクと飲み干す。イメージしただけでも「プハッ」と言いたくなる、ビール好きには異論のない至極の一杯。しかし、この定番のイメージが、近年、ビール離れの一因となっている。「冷たくて体が冷える」「すぐにお腹がふくれてしまう」……、そうした声に「いや、それがビールだから」と言ってしまいそうだが、実はそれだけがビールではない。

実際、ビール敬遠派にも「これなら飲める! おいしい!」と評価される銘柄が続々現れ、注目を集めている。「クラフトビール」と呼ばれる一群がそれだ。ビールの「造り」に関する蘊蓄は割愛するが、長らく日本のビール市場の主流を占めていたのは「ラガーという発酵方法を用いたピルスナー」という1ジャンルのビールだった。日本の気候風土に合わせて清涼感が追求され、キンキンに冷やすことで苦味とキレが最大限に味わえる。その意味では、日本は世界でもトップレベルのピルスナーが手軽に飲めるとも言える。

しかし、ビールには、発酵方法、原料の比率などによるさまざまなジャンルがある。近年、国内でも小規模醸造所(マイクロブルワリー)が多ジャンルのビール銘柄で競い合うようになった。職人による手工芸品同様に、手作りの味、個性があることから「クラフトビール」と呼ばれ、その中から「自分に合った一杯」を見いだす新たなビールファンが増えているのだ。

クラフトビールのジャンル

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ピルスナー

低温で長時間発酵させるいわゆる「ラガー」。従来の国内大手メーカーの銘柄はほとんどがこれで飲みやすさを追求。クラフトビールのピルスナーは、芳醇さや余韻など飲みごたえも魅力だ。

ペールエール

常温に近い約20度で短時間の発酵をさせたもの。原料の香り、醸造酒のコクが個性を表現する。ゴクゴクではなく、コクリと飲んでフワリと広がる風味を楽しむ。

アイピーエー(IPA)

「インディア・ペールエール」の頭文字。19世紀初頭、英国からインドに海上輸送するビールの腐敗防止のため、ホップを強めた製法が元になっている。

フルーツビール

ビールに果実や果汁を加えたり、麦芽に果汁を加えて一緒に発酵させたりして、さまざまな風味をもたせたもの。酒税法により「発泡酒」と表記されるが、諸外国ではビールの1ジャンル。

スタウト

「黒ビール」とも呼ばれる。大麦を色付くまでローストして原料に用いている。苦味、酸味、香味が名称通り「強く」表現できるビールでじっくり味わうことができる。

ヴァイツェン

「白ビール」とも呼ばれる。大麦ではなく小麦を使用。苦味が少なく、柔らかな舌触り。濾過を抑えて酵母を残した白濁したものもある。

クラフトビールを飲むにはグラスにもこだわりたい

ビールグラスと言えば「小口少量」が定番だが、これは冷たいピルスナーをぬるくならないようグイと飲み干すためのもの。香りと味わいの豊かなクラフトビールをゆっくり味わうには大口でゆったりしたグラスで楽しむといいだろう。

クラフトビールに合うつまみ

しおざわ ゆうじ◎1966年、神奈川県生まれ。SSI認定の利き酒師・焼酎利き酒師。酒を地域文化・食文化の側面から着目し、その中に伝統の継承と革新の可能性を探求中。