Harmony 2015年5/6月号
日本ドライブ紀行 岩手県

新緑の三陸海岸ドライブ

文・石田 治 写真・戸澤直彦

青森、岩手、宮城の3県にまたがる沿岸エリア、三陸。今では、「三陸復興国立公園」として観光客を迎えている。美味な海の幸をいただきつつ緑も海も冴え冴えと美しい新緑の三陸海岸を北上した。


アクセス
スタートの釜石までは、東北自動車道・花巻JCTから釜石自動車道・宮守IC経由で約1時間45分。釜石市から浄土ヶ浜までもほぼ同じ。浄土ヶ浜から龍泉洞、龍泉洞から小袖海岸まではそれぞれ約1時間30分。震災後の復旧工事で一部ナビにない道もあるが、案内看板が出ているので迷わず目的地に向かうことができる。
Googleマップ


青森、岩手、宮城の3県にまたがる沿岸エリア、三陸。
リアス海岸や、“海のアルプス”と呼ばれる断崖が広がり、今では、「三陸復興国立公園」として観光客を迎えている。
訪れることでささやかな思いを届けたい……。
世界三大漁場のひとつ、三陸沖で獲れる美味な海の幸をいただきつつ緑も海も冴え冴えと美しい新緑の三陸海岸を北上した。

Harmony 2015年5/6月号より

宮守IC──釜石市

「三陸」の基礎知識

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1868(明治元)年のこと。戊辰戦争の戦後処理として、それまで東北地方をふたつに区分していた「陸奥国(=太平洋側)」と「出羽国(=日本海側)」が、7つの「令制国」に分割された。このとき「陸前」「陸中」「陸奥」という、現在の宮城県、岩手県、青森県に(ほぼ)相当する3つの国が誕生する。いずれも「陸」の字を冠したことから、この地方は「三陸」と総称された。

96(明治29)年、この三国(三県)の海岸を大津波が襲った。その悲劇は「明治三陸大津波」という呼称で報道され、このとき、三陸という地名と場所が多くの人に知れ渡ることとなったようだ。

1933(昭和8)年には「昭和三陸大津波」が、さらに2011(平成23)年3月には「東日本大震災」が発生。海辺の街や風景はそのたびに姿を変えてきた。しかし、それでも人びとは前へと歩み出す。ふるさとの新しい姿を未来へ伝える創造が今また始まっている。

震災のあと「陸中海岸国立公園」は「三陸復興国立公園」と名称を変え、エリアも宮城県牡鹿半島から青森県八戸市にまで拡大。海沿いの道を辿れば走行距離は約500キロ以上となる。今回は「ハリアー」を駆って、表情を違えるふたつのパート──浦風そよぐリアスの入り江と、海崖連なる“海のアルプス”──を訪ねて約190キロをドライブした。

出発地は釜石市。ここは明治維新の10年も前、西洋人の手を借りることなく東洋初の近代製鉄がスタートした地であり、また、昭和50年代、日本選手権で7連覇を達成した新日鐵釜石ラグビー部(現・釜石シーウェイブス)のホームタウンでもある。「鉄のまち・ラグビーのまち」だ。

今年3月には2019年開催のラグビーW杯の開催地にも選ばれ、明るい話題が市民を元気づけた。

鉄の歴史館

鉄の歴史館

鉄の町として有名な釜石市。製鉄業の発展に貢献した偉人の紹介や、現存する日本最古の洋式高炉の復元模型などが展示され、身近な素材の“鉄”について理解を深めることができる。

住所:岩手県釜石市大平町3-12-7
電話:0193-24-2211
時間:9:00〜17:00(最終入館16:00)
休み:火曜、12/28〜31
料金:一般500円、高校生300円、小中学生150円(いずれも税込み)
駐車場:100台

釜石市──山田湾──宮古市

箸が止まらぬ“宝の海”の恵み

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ドライブ前半のパートはリアス海岸だ。丘陵や山地が海に没して、尾根が半島に、谷が入り江になったノコギリの歯のようなギザギザの「沈降海岸」である。釜石市から宮古市にかけての南部には、そんな典型的なリアスの風景が広がっている。

めまぐるしく入れ替わる山と海の景色。新緑とマリンブルーが交錯する。国道45号にはトンネルも多い。だからここは寄り道ドライブが楽しい。岬を探しながら半島の森の道へ入り込んでみた。岸に沿う小刻みなカーブ、アップダウン。でも、「ハリアー」の走りはエレガントだ。コーナリングの荷重もマイルドに吸収し、身体をしっかりホールドするシートも好もしい。

ギザギザの歯を回り込むと、雑木の森に包まれた小さな浦浜にいくつも出合う。森に降る雨水は腐葉土に染みて、大地の栄養を海に運び、複雑な岩礁に多様な命を育む。リアスの海は、恵み豊かな海でもある。沖合は、カナダ・ニューファンドランド島沖、ノルウェー西沖と並ぶ世界三大漁場のひとつ。黒潮(暖流)と親潮(寒流)がぶつかり合う潮目に、多種多彩な魚が集まる、地球上でも希な宝の海なのだ。初夏ならば、ホヤ、ウニ、カキ、ホタテ、そしてイカナゴ、サワラ、スズキ、マグロ、マスノスケ、キチジ、アイナメ……。書ききれない。

磯浜の幸を楽しむなら、中村家名物の「海宝漬」が食せる「まんぷく食堂」へ。だまし煮という独自の調製を経た柔らかなアワビ、そしてイクラやメカブなどを秘伝のタレに漬けたもの。アツアツのご飯にのせてかき込めば箸が止まらなくなる。

森と海の豊かさを物語る大粒のカキも食べ逃せない。カキ小屋はGW頃までの営業だけれど、蒸しガキやフライなら、6月中は沿岸の飲食店で味わえる。旬の海鮮を食べ尽くしたいという向きは宮古市の「蛇の目本店」 へ。15種超もの海の恵みが「これでもか!」と盛り込まれた「上ちらし」、出盛りを迎えた「生うにごはん」に舌鼓を打とう。

海辺のワインディングロード。窓を開け放つとウミネコの声も聞こえてくる。箱崎、吉里吉里、船越などの半島へ立ち寄り、“海の十和田湖”山田湾を右手に見ながら宮古市へ。市街地手前の津軽石周辺は隠れた夕陽スポットだけど、この日は重茂半島の「月山」を訪ねてみた。標高約456メートルの山頂からは、宮古湾や浄土ヶ浜、日出島、真崎など、地図で見るリアスの地勢がそのままの形で見晴らせる。でかい。広い。

山の彼方に陽が沈んでいく。茜射す夕べの風に初夏のにおいがした。

  • 山田湾に浮かぶカキやホタテの養殖筏。

  • まんぷく食堂の「海宝漬定食」(左)と、蛇の目本店の「上ちらし/生うにごはん」(右)。

  • 浄土ヶ浜。

  • 静寂の中でゆらめく浄土ヶ浜の奇岩。

月山──浄土ヶ浜

白き浜と青き海の別天地

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宮古湾北東の名勝・浄土ヶ浜の眺めは、バラエティに富む三陸の海景色の中でもとりわけ個性的だ。かつてこの浜に辿り着いた僧侶が、海岸にうち続くこの世ならざる佳景に心を奪われ「さながら極楽浄土のごとし」とつぶやいたことがその名の由来という。

海辺に明るい月が昇ったら、夜の浄土ヶ浜を訪ね、青白い月影に浮かぶ妖しく静寂な眺めに、命名者の心象を想ってみるのもいい。もちろん夜が明けたなら、改めてその大観を楽しみたい。

白い小石の浜辺から翠緑色の江を隔てた対岸に、風浪に浸食された白い流紋岩の群れが居並ぶ。シルエットは一つひとつ違って、背びれを立てた白龍のようにも、巨大なカメやトド達が鼻を突き上げて渚にはい上がろうとしているようにも見える。

岩塊の外海側には遊覧船も運航しているが、入り江側では、磯辺の漁に使う“サッパ船”を使って崖下の洞窟へ潜り込む青の洞窟ツアーが人気だ。水色の光に満ちる青い空間が美しく、淵辺から深江へ青みを変えて行く海の色、岩上の緑陰やツツジやシャクナゲの紅色が揺れる様も、船上からは格別の眺めだ。青海、白砂、奇岩、花葉。あらゆる自然色と造形が、海辺を明るく飾る。

なお、岩塊の外海側には「剣の山(針の山)」「賽の河原」「血の池」などと名付けられた荒々しい見どころが隠れている。一変する様相が背中合わせだ。

そして、ドライブ風景も宮古以北で一変。ここからいよいよ“海のアルプス”が始まる。

浄土ヶ浜パークホテル

浄土ヶ浜パークホテル

国指定の名勝・浄土ヶ浜を望む高台に位置し、太平洋や宮古湾も見渡せるホテル。四季折々の三陸の海の幸、里の恵みを使った料理も魅力。スタッフが宮古市魚市場や浄土ヶ浜に案内してくれる体験プログラムも。

住所:岩手県宮古市日立浜町32-4
電話:0193-62-2321
チェックイン:15:00
チェックアウト:10:00
料金:1泊2食付き、1室2名さまご利用時の1名さま料金18,700円(税・サ抜き)〜
駐車場:70台