Harmony 2016年11/12月号
日本ドライブ紀行 高知県

土佐の気っ風にふれる旅

文・高瀬由紀子 写真・大井成義

黒潮と清流を有する自然豊かな高知県。豪快で気さくな高知人気質もまた、そのおおらかな風土に根ざすものだ。高知市〜中土佐、気っ風のいい人びとと絶品のカツオに出会う旅へ。

日本屈指の水質の高さを誇る仁淀川。欄干のない沈下橋も高知らしい風景。

高知は、黒潮と清流を有する水の国にして、日本一の森林率を誇る木の国でもある。全国屈指の日照時間と降水量も相まってこの地は多彩な食材を産する。そして、豪快で気さくな高知人の気質もまた、そのおおらかな風土に根ざすものだ。高知市〜中土佐をゆく旅は、気っ風のいい人びととの出会いの旅でもあった。

高知 ~ 仁淀川

土佐特有の「おきゃく」文化

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なんという豪快さ、なんという華やかさ! 伊勢エビに鯖の姿ずし、あおさのりの天ぷら、ウツボの煮こごり……。大皿に惜しげもなく盛られた海の幸の迫力に、気分が高揚せずにはいられない。

これぞ、土佐の宴会になくてはならない「皿鉢(さわち)料理」。前菜から甘味まで一皿に盛り付け、客は好きなものを自由に自分の小皿にとる。堅苦しいルールに縛られず、大勢で賑やかに楽しむことをよしとする、高知人ならではのスタイルだ。

「余るぐらいたっぷりお出しするのが、土佐流のおもてなし。豪快な気質は、やはり太平洋の荒波を見ながら育っているからでしょうか」

にこやかに語ってくれたのは、濱口賀世(かよ)さん。高知を代表する料亭「濱長(はまちょう)」の大女将だ。70年以上もの歴史を誇る名店は、格式と親しみ深さを兼ね備え、「おきゃく」文化にふれるには恰好の場。高知では宴会のことを「おきゃく」と呼び、冠婚葬祭や季節の祝い事など、何かにつけて開かれる。親戚や友人だけでなく、知らない人が加わることもしばしば。そんなざっくばらんな場の中で、誰とでも分け隔てなく交流するために欠かせないのが「献杯」「返杯」と呼ばれる流儀だ。

「一緒にやってみましょうか」

大女将に誘われ、まず自分の杯に酒を注いで呑み干す。その杯を大女将へ渡して酒を注ぐのが「献杯」、呑み干した大女将が、自分に杯を返してお酒を注ぐのが「返杯」。これを繰り返すうち、場が自然とほぐれていく。同じ杯で差しつ差されつというのが開けっぴろげでいい。

「高知の女性は、とにかく呑みますね。『しょうしょう呑める』と言うたら、『二升(升升)』のことっていうくらい(笑)」

大女将いわく、呑めない女性もサービス精神が旺盛で、おきゃくが大好き。場を明るく盛り上げることに長けているから、いつでもお座敷に出られる素養があるのだとか。

  • 太平洋を見渡すように立つ龍馬像。桂浜にて。

  • 高知流お座敷遊びの「可杯(べくはい)」に使う盃。

  • 台詞を掛け合いながら、お互いが出す箸の合計本数を当て合う「箸拳」。

  • “仁淀ブルー”と称される美しい風景を求めて安居渓谷へ。足をつけると清々しいまでの冷たさが体中に行きわたる。

はちきん芸妓のもてなし術

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ここ「濱長」は、高知で唯一、芸妓を抱えた料亭であり、おきゃく文化の華であるお座敷遊びが楽しめるところ。満を持して登場したのは、芸妓の琴魚(きんぎょ)さんとかつをさん。艶やかな出で立ちと明るい笑顔に、場がぱっと華やぐ。

ふたりに手ほどきしてもらう土佐のお座敷遊びは、底抜けに楽しい。たとえば、お面の形をした3つの杯と独楽を使う「可杯(べくはい)」。“べろべろの神様”という唄を歌いながら独楽を回し、止まったら独楽が指す方向にいる人が、出た絵柄の杯で酒を一気に呑み干さないといけない。おかめ、ひょっとこ、天狗の順に杯が大きくなり、酒好きには“当たり”がうれしい遊びだ。呑めない人や、“当たり”が続きすぎて限界な人も心配ご無用。「張り切りすぎて喉が渇いたき、私にも一杯いただけますか?」というふうに、さり気なく芸妓さんが助けてくれる。

ほかにも、土佐版ロシアンルーレットの「菊の花」、ふたりで箸を出し合いながら合計本数を当てる「箸拳」など、ついつい熱くなる遊びが盛り沢山。さらに、手拭いのお面を被り、ユーモラスな民謡に合わせて皆で輪になって踊る「しばてん踊り」で、宴もたけなわに。とことん気持ちのいい時間が過ごせたのは、「私たちも本気で遊びつつ、お客さまの心を察して臨機応変に場を盛り上げるようにしています」という、琴魚さんとかつをさんのサービス精神のおかげだ。

高知の女性は「はちきん」と呼ばれるが、勝ち気でさばさばしているという意味だけではなく、男勝りな中にもちゃんと人を立てる気遣いのある女性が、真のはちきんなのだとか。この日の体験は、そのことを実感させてくれた。

アマルフィイ デラセーラ

城西館

1874(明治7)年創業。皇族や政財界の要人を迎えてきた老舗旅館だ。特に2代目女将と吉田茂との交流は深く、それを物語る品々が残る。館内には、迫力あるわら焼き実演が見られる工房も併設。観光コンシェルジュが常駐し、仁淀川遊覧などの観光情報も教えてくれる。

住所:高知県高知市上町2-5-34
電話:088-875-0111
チェックイン:15:00
チェックアウト:10:00
アクセス:高知自動車道・高知I.C.から約20分、JR土讃線「高知駅」よりクルマで約10分
駐車場:70台(有料)