Harmony 2017年9/10月号
日本ドライブ紀行 岡山県倉敷

倉敷の“美”にふれる旅

文・高瀬由紀子 写真・蛭子 真

1642(寛永19)年に天領となって以降、物資の集積地として繁栄した岡山県倉敷。川沿いに白壁土蔵が建ち並ぶエリアは「倉敷美観地区」と呼ばれ、往時の姿を今にとどめている。そこには日本初の私立西洋美術館や、国内2番目となる民藝館など貴重な文化施設がある。なぜ、倉敷に——。この問いを胸に町を逍遥すると、倉敷人に通底する思いが見えてきた。

  • かつては物資を運ぶ舟で賑わった倉敷川。現在も観光用の川舟が運航され、町の風情を味わえる。

    かつては物資を運ぶ舟で賑わった倉敷川。現在も観光用の川舟が運航され、町の風情を味わえる。

  • 小谷真三氏の長男・小谷栄次氏が作る倉敷ガラスは、館内ショップで購入も可能。吸い込まれそうな青色が美しい。

    小谷眞三氏の長男・小谷栄次氏が作る倉敷ガラスは、館内ショップで購入も可能。吸い込まれそうな青色が美しい。

  • オーダージーンズで培った技術と経験を活かした、大人向けの既製品ブランド「DENIM WORKS」も好評。

    オーダージーンズで培った技術と経験を活かした、大人向けの既製品ブランド「DENIM WORKS」も好評。

  • ロビー正面のテラスから、全長約12,300mの瀬戸大橋を望む。土日はライトアップされ、その美しさもまた格別だ。

    ロビー正面のテラスから、全長約12,300mの瀬戸大橋を望む。土日はライトアップされ、その美しさもまた格別だ。


アクセス
倉敷美観地区へは、岡山空港から山陽自動車道経由で約40分、JR岡山駅からクルマで約35分。美観地区から児島、吉備津神社まではそれぞれ約30分、TEORIまで約20分。倉敷川沿いの道は時間帯によって車両進入禁止のため、近隣のコインパーキングなどにクルマを停めて散策を。
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天領地の面影をとどめる風情あふれる町並

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倉敷の町を巡るなら、まずは川舟に乗るのがおすすめだ。美観地区と呼ばれる古い町並の中心部を流れる、倉敷川の舟着場がスタート地点。小さな木舟に乗り込み、柳並木の緑が映り込む水面を進むと、両岸に軒を連ねる白壁の蔵が次々と目に入る。

風情豊かな町並が広がる倉敷だが、かつては辺り一面が遠浅の海だった。10〜14世紀にかけて、河川の上流から少しずつ土砂が運ばれて干潟となり、近世以降の干拓によって陸地に姿を変えていったのだという。新しい地にまず植えられたのは綿花。干拓されたばかりの土地は塩分が多く米作りには適さないため、塩に強く、塩分の吸収作用もある綿花栽培が盛んになっていった。

この一帯が格段の発展を遂げるのは、江戸時代に入ってから。天領、つまり幕府の直轄地となったことで代官所が置かれ、周辺の天領地を統括する政治の中心地となる。商業面でも、備中地方の物資が集積し、上方への輸送中継地として大いに発展した。こうした物資の一時保管所を“蔵敷地”と呼んでいたことが、“倉敷”の地名の由来といわれている。

瀬戸内海に面する児島湾につながる運河として整備された倉敷川の周辺には、商人の蔵や屋敷が建ち並び、綿などを扱う問屋や仲買人で賑わった。さらに商人は、領地の支配体制を固めるために協力を求めてきた代官所から、新田開発の権利を与えられる。こうして、米の流通も担うことになった商人は勢いを増し、幕末には巨富を築いた商家が数十家にも及んだという。

倉敷アイビースクエア

倉敷アイビースクエア

1973(昭和48)年、クラボウの旧工場を改修して生まれた複合施設。赤煉瓦と蔦が印象的な建物には、ホテルやレストラン、土産物店などがあり、敷地内には倉紡記念館も佇む。

住所:岡山県倉敷市本町7-2
電話:086-422-0011
時間:施設により異なる。詳しくはHPへ。
定休日:施設により異なる。詳しくはHPへ。
駐車場:175台
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)
※一部施設のみ

町の再興を担った大原一族の信念

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天領として繁栄を極めた倉敷だが、明治維新によってその機能は失われ、勢いを急速に失ってしまう。町の将来を憂えた若者達は、地元の有力者に働きかけ、この地で採れる綿花を活かした紡績業の立ち上げを提案する。こうして、1888(明治21)年に設立されたのが倉敷紡績所、現在のクラボウ(倉敷紡績)だ。初代社長に就任したのは、倉敷を代表する豪商だった大原家の主・大原孝四郎。工場が建てられたのは、かつての代官所跡だった。代官所に代わり、紡績所が新たな時代の発展を担うこととなったのだ。

孝四郎の跡を継いだ息子の孫三郎の代に、業績は大きく飛躍する。彼の偉業は、事業を軌道に乗せたことにとどまらない。労働者の環境改善、孤児院への援助、最先端の総合病院や農業研究所の設立——。昭和初期には、世界恐慌などの影響で本業が危機に瀕した時期もあったが、福祉事業や後に述べる文化事業から、決して手を引くことはなかった。

孫三郎の奉仕の精神を感じさせる場所のひとつが、煉瓦造りの建物群「倉敷アイビースクエア」。クラボウの旧倉敷本社工場がホテルやミュージアムなどの複合施設として生まれ変わったもので、外壁を覆い尽くす蔦(アイビー)の存在感が圧巻だ。「これも、従業員の労働環境を改善したいという孫三郎の信念の一環なのです」と、代表取締役の小林清彦さんは語る。西日を防いでくれる蔦は、夏は茂り、冬は落葉することで工場内の温度調節機能も果たした。「ほかにも、換気塔や井戸水を循環させる冷房を設置するといった、さまざまな配慮が施されていました」

さらに孫三郎は、女子工員のための寄宿舎を、従来の非衛生的な大部屋タイプから、分散式と呼ばれるゆったりした造りに改良。貧しい家庭出身の工員のために、教育施設の設立も惜しまなかった。

こうした彼の功績を含むクラボウの歴史は、敷地内の「倉紡記念館」で、じっくりと辿ることができる。原綿倉庫を改造した建物も、歴史を感じさせる趣深い空間だ。

大原美術館

工芸館の建物の中でも、芹沢銈介の展示室は、べんがら色の壁がとりわけ印象的。

大原美術館

1930(昭和5)年、大原孫三郎によって設立された日本初の私立西洋美術館。世界でも名だたる名画のほか、後年、息子の總一郎が増やした著名作家の工芸品なども多数コレクションし、倉敷のシンボル的な存在となっている。

住所:岡山県倉敷市中央1-1-15
電話:086-422-0005
時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:月曜(祝日・振休の場合は翌日休み。10月無休)、年末年始
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)

地方都市に誕生した日本初の私立西洋美術館

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倉敷アイビースクエアをはじめ、倉敷には明治期以降に建てられた洋館も点在する。中でも圧倒的な存在感を放つのが「大原美術館」。ギリシャ神殿風の建物は、日本初の私立西洋美術館として名高い。孫三郎が手がけた文化事業の代表格である。

「作品収集は、社会貢献の一環として始まりました」と語るのは、主任学芸員の𠮷川あゆみさん。洋画家の児島虎次郎と出会い、彼の画才とひたむきさに惚れ込んだ孫三郎は、留学などを全面支援。帰国後の児島から、本物にふれる機会がない日本の人びとのために、西洋美術の収集をすべきと提案されたのが発端だった。

再び渡欧した児島は、エル・グレコの「受胎告知」を筆頭に、数々の優れた作品を収集していく。モネの「睡蓮」やマティスの「マティス嬢の肖像」など、自ら画家のアトリエを訪ねて手に入れたものも多い。児島の審美眼の確かさは、後に満州事変の際、国際連盟から派遣されたリットン調査団の団員が、コレクションの質の高さに驚嘆したと伝えられるほどだ。美術館は、児島が若くして病没した後の1930(昭和5)年に、彼の業績を記念して設立された。現在、本館に入って真っ先に出迎えてくれるのは、児島の代表作「和服を着たベルギーの少女」である。

戦後になって、孫三郎の跡を継いだ息子の總一郎は、美術館をさらに飛躍させる。本業においても、倉敷レイヨン(現在のクラレ)で、日本初の合成繊維であるビニロンの工業化を成功させた總一郎は、新進気鋭の精神を文化面でも発揮。「孫三郎の志を受け継ぎつつ、“美術館は生きて成長するもの”という信念から、現代美術をはじめ、コレクションの幅を広げていったのです」と𠮷川さんは語る。外国の作家だけではなく、日本の近現代作家の絵画や、民芸運動に携わった作家の工芸作品も積極的に収集され、分館や工芸館、東洋館など、展示施設も拡大。総合博物館へと進化した大原美術館は、世界的にも評価を高めていった。

美術館の対岸に建つのが、大原家の旧別邸「有隣荘」。周りの白壁の建物とは趣を異にする玉子色の外壁に、緑色の瓦屋根という外観がひときわ目を引く。当初は小規模な住まいを建てる計画だったが、皇族や貴賓を迎える宿泊施設の役割も果たしてほしいとの周囲の要望を受け、迎賓館を兼ねた大邸宅になったという。アールデコ調の洋間、端正な書院造りの和室といった和洋折衷のデザインが見事に調和し、昭和天皇をはじめ、数多くの貴賓がここでもてなしを受けた。倉敷随一の名士だった大原家の威信を感じさせる佇まいだ。

倉敷民藝館

館内の窓には古い時代のガラスが。独特の“ゆらぎ”が味わい深い。

倉敷民藝館

東京の日本民藝館に次ぎ、1948(昭和23)年開館。江戸後期の米蔵という古い建物を再生利用した倉敷初の事例で、以降、町並保存を象徴する存在に。古今東西の民芸品、約15,000点を所蔵する。

住所:岡山県倉敷市中央1-4-11
電話:︎086-422-1637
時間:9:00〜17:00(入館は16:45まで)、12〜2月は〜16:15(入館は16:00まで)
定休日:月曜(祝日の場合は開館。8月無休)、年末年始
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)※ショップのみ(一部商品を除く)
美術館中庭の池に浮かぶ睡蓮は、2000年に、フランスのジヴェルニーにあるモネの庭から株分けされたもの。

美術館中庭の池に浮かぶ睡蓮は、2000年に、フランスのジヴェルニーにあるモネの庭から株分けされたもの。

町並保存を象徴する倉敷民藝館を訪ねて

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孫三郎と總一郎の美意識が一致して、共に情熱を注いだのは民芸の分野。暮らしの中の工芸品に“用の美”を見出した民芸運動の提唱者、柳宗悦に共鳴し、東京の日本民藝館設立の資金援助をしたのは孫三郎だった。大原親子は、河井寛次郎、濱田庄司、棟方志功、芹沢銈介など、柳と志をともにする作家達と交流を深め、總一郎が設けた大原美術館の工芸館に、敬意を込めて各作家の作品を展示している。

總一郎は、日本で2番目の民藝館となる「倉敷民藝館」の設立にも尽力。初代館長には、牧師をしながら民芸運動に携わっていた外村吉之介が招かれた。「民藝館の役目は、誰でも何時でもできる“美しい生活”をひろめること」と明言した外村は、国内外の民芸品を幅広く集めて展示。館内には、英国のウィンザーチェアや日本の水屋箪笥、北欧の籠など、国も年代も異なる美しき無名の品々が、しっくりと調和している。

展示品の中には、地元倉敷の民芸品も少なくない。温かみのある倉敷ガラス、い草や綿で織られた緞通、織物の研究者でもあった外村の指導で生まれた、ノッティングと呼ばれる厚手の敷物。どれもが今も作りつづけられており、民芸の精神がこの地に受け継がれていることを物語る。

特筆すべきは、江戸時代の米蔵を活用した民藝館の建物。倉敷において歴史的建造物を再生利用した最初の事例だ。1948(昭和23)年の設立当時は、伝統的な町並を保存するという意識は一般的でなく、むしろ壊して新しい町を作ろうという動きが主流だった。

昔ながらの風景に歴史的価値を見出して、きちんと保存していこうと提唱したのは、總一郎を中心とする有志達。民藝館館長の外村も、周囲の家を一軒一軒訪ねて、町並保護の重要性を誠実に説いて回った。こうして賛同者は徐々に増えていき、總一郎が亡くなった直後の68(昭和43)年に、倉敷中心部は市の条例により、「美観地区」として保存されることが決定した。今に残る美しい町並は、郷土を愛する人びとの思いが実を結んだ結果なのだ。

有隣荘

襖の引き手には、児島による龍の意匠が施されている。孫三郎が辰年生まれであることにちなんで考案したそう。

有隣荘

大原孫三郎が病弱な妻を気遣い建てた別邸。緑の瓦屋根をもつ屋敷の内装はシンプルなデザインながら、全体的に貴重な材を用いるなど、そのこだわりぶりがうかがえる。春と秋の年2回一般公開され、今秋は10月6日(金)〜22日(日)。

住所:岡山県倉敷市中央1-3-18
電話:086-422-0005
時間:10:00〜16:30

倉敷その他のおすすめスポット

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林源十郎商店

林源十郎商店

倉敷の老舗薬店を改装して作られた、衣食住それぞれを扱う8店舗が集まる“生活デザインマーケット”。1934(昭和9)年築の3階建ての木造建築を活かした造りとなっており、屋上のテラスからは倉敷の町並を見晴らせる。館内には、老舗の歴史を伝える記念室も設けられている。

住所:岡山県倉敷市阿知2-23-10
電話:店舗により異なる。詳しくはHPへ。
営業時間:店舗により異なる。詳しくはHPへ。
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休み)
カード: TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)※一部店舗を除く
夢空間はしまや

夢空間はしまや

明治初期に創業し、町屋様式の建物が倉敷市の重要文化財に指定されている呉服店の、米蔵を改装したカフェ。倉敷の多くの古民家再生に携わる、建築家の楢村徹氏が改装を手がけた。今年リニューアルし、手作りのフォカッチャやスイーツなど、さらに充実したメニューが好評だ。

住所:岡山県倉敷市東町1-20
電話:︎086-451-1040(カフェ専用ダイヤル)
営業時間:11:00〜18:00
定休日:火曜
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)
森田酒造

森田酒造

1909(明治42)年の創業以来、昔ながらの槽(ふな)搾り法で、じっくり時間をかけた丁寧な酒造りを行っている。当代の森田昭一郎さん(左)が商品化した「荒走り」は、槽に圧力をかけずに採れる最初の段階の酒で、業界では掟破りだったが大ヒットし、現在も全国的に高い人気を誇る。

住所:岡山県倉敷市本町8-8
電話:︎086-422-0252
営業時間:8:30〜17:30
定休日:土・日曜、祝日
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)
平翠軒

平翠軒

森田酒造の森田昭一郎さんが、全国からの選りすぐりを集めて販売する食料品店。酒の肴、総菜、調味料など、約1,500点にも及ぶ商品は、森田さんがものづくりの現場に直接足を運び、自らの舌で味わって選んだものばかり。料理人やベテラン主婦と開発した、プライベートブランド商品も多い。

住所:岡山県倉敷市本町8-8
電話0120-334833
営業時間:10:00〜18:00
定休日:月曜
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)

旅館くらしき

“倉敷らしさ”を受け継ぐ河畔の名宿にて

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倉敷の魅力をさらに体感するなら、ぜひ「旅館くらしき」に滞在してみたい。1957(昭和32)年に、江戸時代から続く老舗砂糖問屋の蔵屋敷を改築して生まれた宿だが、その背景にも、町並を守りたいという總一郎らの願いがあった。

「後継者が途絶えたところを、總一郎の後押しで、地元で牡蠣料理店を営んでいた先代女将が旅館として再出発させたのです」と、当代の女将を務める中村律子さんは語る。建築家の浦辺鎮太郎が、昔の面影をとどめた改築設計を無料で請け負い、芹沢銈介がロゴデザインを手がけるなど、多くの力添えがあった。

暖簾をくぐると、砂糖問屋時代の土間を活かした重厚なロビーに始まり、江戸時代に建てられた蔵を改装した部屋、小径を経由する離れタイプの部屋など、間取りも趣向も異なる5つの部屋がある。歴史を感じさせる空間の中では、河畔の賑わいが嘘のように静かな時間が流れていく。

これらの部屋が、籠もることを楽しむ空間だとすれば、今春新たに誕生した「ゆの間」「西の間」「乾の間」の3部屋は、外の眺望を楽しむ空間。倉敷川に面した座敷部分を改装したもので、どの部屋の窓からも川のある風景を間近に見渡せる。

椅子の上に置かれたノッティングや地元の窯元の急須や湯呑みなど、部屋や館内のしつらえに、倉敷の現代の手仕事をさりげなく溶け込ませているのも風流だ。「美しい町並を保存していく精神とともに、ものづくりの精神もこの町に息づいていることを知っていただければと思っています」。女将の言葉に頷きつつ、ここは倉敷の歴史と文化が凝縮された希有な宿なのだと、改めて実感した。

旅館くらしき

旅館くらしき

住所:岡山県倉敷市本町4-1
チェックイン:15:00
チェックアウト:11:00
アクセス:山陽自動車道・倉敷I.C.および瀬戸中央自動車道・早島I.C.から約20分、JR山陽本線「倉敷駅」から徒歩約15分
駐車場:4台
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)
吉備津神社

吉備津神社

童話、桃太郎のモデルといわれる鬼退治伝説が伝わる山陽道屈指の社。詳しい創建年代は不明だが、『続日本後紀』の847(承和14)年の条にはすでにその名が記されている。注目は、「比翼入母屋造」と呼ばれる全国唯一の建築様式をもつ本殿・拝殿。かつての航路や旧山陽道にその威容を向けて建てられているという。

住所:岡山県岡山市北区吉備津931
電話:086-287-4111
時間:8:30〜16:00
駐車場:400台

国産デニムの聖地で世界にひとつのジーンズを

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今春、倉敷市が文化庁から「日本遺産」に認定されたことをご存じだろうか。日本遺産とは、地域の歴史的特色や文化財に関するストーリーを国が評価するもので、倉敷市の認定は「綿花から始まる繊維産業発展の物語」。そこには「国産ジーンズ発祥の地」という物語も含まれる。

舞台は、倉敷市の南東部にある児島。足袋や学生服の生産で培った技術を活かし、1965(昭和40)年に、国内初のジーンズ生産を開始した地だ。その後、地元発ブランドも次々生まれ、児島は日本のジーンズの聖地と言われるまでになった。

「ベティスミス」も、そんな児島発ブランドのひとつ。62(昭和37)年創業。70(昭和45)年、国内初のレディースジーンズを展開し、デニム業界に進出。アウトレット、縫製工場、体験工場、ジーンズミュージアム——。時代のニーズに合わせて拡大していったという多彩な建物群が、敷地に点在している。

とりわけ熱い支持を集めているのが、2003年から始めたオーダージーンズ。綿密なフィッティングからパターンを作ってデザインを起こすという、きめ細かなフルオーダーは業界初にしておそらく唯一。「わざわざ児島までお越しくださるお客さまのために、専門の職人達が心を込めてお作りします」と、常務取締役の西山一二(かずじ)さんは語る。世界にひとつのマイジーンズは、忘れられない旅の思い出になることだろう。

ベティスミス

今春オープンしたショールームショップでは、ジーンズからデニム小物まで幅広い商品を展開している。

ベティスミス

住所:岡山県倉敷市児島下の町5-2-70
電話:086-473-4460
時間:9:00〜18:00
定休日:年末年始
駐車場:10台
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)

奥深き手染めの「藍」の美しさに魅せられて

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繊維の町・児島には染工場も多いが、中でも手染めにこだわり、奥深い色の藍やクリアな青のインディゴで、美しい品々を生み出しているのが「高城染工場」だ。

「同じように染めても、季節や天候によって微妙に色が違ってくる。そこが難しくもあり、おもしろいところです」と語るのは、4代目の角南(すなみ)浩彦さん。もともとレディースのパターンを学んでいたことから、レディースウェアを中心に、暖簾や小物などを一つひとつ染め上げている。工房の隣にはショップが併設され、シンプルで着心地のよさそうな洋服がずらり。「着ているうちに、少しずつ色落ちする変化も楽しめますよ」

続いて、工房での染め作業を見せていただいた。長い布地を折り紙のように畳み、自転車用のゴムチューブで数カ所を縛るという独自の絞り染めだ。藍の液に浸した後に水にさらすことで、均一に空気が入りムラなく仕上がる。水からあげて広げられた布には、濃淡の藍の模様が鮮やかに現れていた。魔法のような手業に、ただただ感嘆。「広げて干すたび、色が本当にきれいだな、と。この仕事に就けて幸せだと思う瞬間です」と語る角南さんは、商品以外の服の染め直しにも応じてくれるという。

ていねいな手仕事、使い手へのきめ細かな配慮。倉敷の日本遺産のストーリーが意義深いのは、背景にこうしたものづくりの精神が息づいているからなのだろう。

高城染工場

高城染工場

住所:岡山県倉敷市児島下の町7-2-6
電話:086-472-3105
時間:13:00〜17:00
定休日:不定休
駐車場:2台
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)
倉敷せとうち児島ホテル

行き交う船や、刻一刻と変わる風景を眺めながら浸かる露天風呂は至福のひととき。早朝の鳥のさえずりも心地よい。

倉敷せとうち児島ホテル

瀬戸内に面する高台に佇む、児島唯一のホテル。館内の至る所から、瀬戸大橋や多島美の風景を朝に夕に眺められるロケーションが自慢で、ゆったりとした時間が流れる。海の幸、山の幸を豊富に使ったレストランでの美食も好評で、国内外からリピーターも多い。

住所:岡山県倉敷市下津井吹上303-53
チェックイン:14:00
チェックアウト:11:00
アクセス:瀬戸中央自動車道・児島I.C.から約3分、JR瀬戸大橋線「児島駅」からクルマで約10分、「児島駅」より送迎あり(無料、要予約)
駐車場:100台
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)

岡山地元のおすすめアイテム

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TEORI

商品がゆったり配されたショールーム。間伐材の竹を利用した塗料や入浴剤も商品化されている。什器や床の一部にも竹の集成材が使われ、竹の表情を存分に堪能できる。

TEORI

しなりに強く強靱な竹の特性を活かし、集成材にすることで、より強度を高めた製品づくりを行っているブランド。ショールームでは、家具やインテリア雑貨などのほぼ全商品が展示されている。清々しさの漂う質感や滑らかな手触りの心地よさを、実際の商品に触れて体感したい。

住所:岡山県倉敷市真備町服部1807
TEL:086-698-4526
営業時間:9:00〜17:00
定休日:日曜、土曜(不定期)
引両紋

引両紋

「岡山県産のお茶を、地元の人にもっと消費してもらいたい」という思いから開発され、88円〜という低価格を実現したペットボトルの「瀬戸内茶」が昨年大ヒット。以降、岡山や広島のスーパーに販路を絞り、日常使いのお茶というコンセプトで展開されているティーバッグや茶葉も人気だ。

問い合わせ:HP内のメールフォームからお問い合わせください。

たかせ ゆきこ◎富山県生まれ。ライター。インテリア雑誌編集部を経てフリーランスに。デザインやカルチャー、旅、食の分野をメインに活動中。

えびす しん◎1969年大阪府生まれ。写真家。京都精華大学芸術学部テキスタイルコース卒業。工芸、料理などの手仕事や人物撮影を多数手がけ、雑誌や広告などで活動中。

岡山を一緒に旅したいクルマ

ヴィッツ ハイブリッド

文・日下部保雄(モータージャーナリスト)

ヴィッツ ハイブリッド

ヴィッツ ハイブリッド

コンフォタブルな一台で、倉敷の風情ある美観地区へ

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「ヴィッツ」は1999年に発表されて以来、世界約80カ国で700万台以上が愛用されつづけている人気車だ。現行の「ヴィッツ」は3代目。今年、大きなマイナーチェンジを受け、待望のハイブリッドが加わってますます注目されている。

その「ヴィッツ ハイブリッド」を駆って心和む岡山を旅しよう。低燃費で定評のある「アクア」のパワートレインをベースとして、1.5ℓ74PSのガソリンエンジン+169N・mのモーターに改良を加えている。大きなハイブリッドバッテリーはリアシートの下に置かれ、キャビンや荷室は削られていない。つまり「ヴィッツ」の使い勝手の良さはそのままだ。

吉備津神社は、凛としていながら優しげな佇まいが印象的な大社。お参り後、かつての物資集積の町、倉敷に向かう。狭い道が続くが、コンパクトな「ヴィッツ」なら対向車とのすれ違いも楽々だ。

倉敷川近くの本町・東町エリアなどでは散策を楽しむ人びとに遠慮して、ハイブリッドならではのモーター走行でしずしずと進む。クルマを近隣のパーキングに駐車させてから倉敷川沿いを散策し、風情ある店を覗き、大原美術館の静謐な空気に身を置くと、心落ち着くひとときが過ごせる。

「旅館くらしき」で真心あるもてなしをうけた翌日は、「ヴィッツ」の機動力を活かして児島エリアへ。コンパクトながら適度な広さを備えるのが「ヴィッツ」の魅力のひとつ。加えてJewelaグレードに設定されている赤茶色系のインテリア、マルサラは一味違った「ヴィッツ」を演出してくれる。また多彩なポケットは何かと増える小物の置き場に困らない。さらにトランクは2段式で、上下を仕切ったり、つなげて背の高いものを積み込むことも可能。いろいろと買い込んでも収納能力は高く、用途に合わせて高さが変えられるのもうれしい。ベティスミスで念願のマイジーンズをオーダーしたら、眺望の素晴らしい「倉敷せとうち児島ホテル」まで足を延ばす。

ボディと足腰が強化された「ヴィッツ」は郊外路を気持ちよく走り、たまに現れる上り坂もハイブリッドらしいトルクの強さを活かし、ストレスのないドライブだ。さらにトヨタの衝突回避支援パッケージである「Toyota Safety Sense C」をほぼ全グレードに標準装備している点も心強い。

日本で生まれ、世界の道を走る「ヴィッツ」。磨きがかけられ、さらに魅力的になっていた。


ヴィッツ ハイブリッドの詳しい情報・お問い合わせはtoyota.jpへ

Harmony 2017年9/10月号より