Harmony 2018年11/12月号
日本ドライブ紀行 岐阜県

山と湯と匠の飛騨路

文・和田達彦 写真・星 武志

名峰連なる北アルプスに抱かれた岐阜県飛騨地方。この地を旅すれば、山がもたらす恵みの豊かさを実感することだろう。登山者を魅了する山容の美、秘湯・名湯、匠の技が光る豪壮な木造建築……。奥飛騨、下呂、高山へ、木の香漂う飛騨路をめぐる。

北アルプスの絶景を望む山岳リゾート

奥飛騨温泉郷

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憧れの名山に近づく空中散歩

乗客を乗せたゴンドラは、「ゴウン」という音や振動とともに駅を離れると、尾根の上空を滑るように上っていく。山の斜面に生い茂る木々が斜め下方に流れ、それまでいたふもとが小さくなっていくにつれて、下から見上げているときには把握しづらかった周囲の山々の配置や姿形が手に取るように見えてくる。

新穂高ロープウェイは、飛騨山脈、通称北アルプスにある穂高連峰西側の千石尾根に敷設されているロープウェイ。第1ロープウェイと第2ロープウェイがあり、合わせて全長3200メートル、標高差は1039メートルに及ぶ。終点の西穂高口駅は屋上が展望広場となっていて、標高2156メートルの位置から、穂高連峰を始め、槍ヶ岳や焼(やけ)岳、笠ヶ岳といった北アルプスの名峰をぐるり眼前に望むことができる。天候によっては山々の頂が雲に覆われて隠れてしまったり、時には自分も雲中に身を包まれることになる場合もあるが、それもまた一興。本来ならば容易にはたどりつけない高所にいるということを実感させてくれる。

高山市街からクルマで1時間強。新穂高ロープウェイがある新穂高温泉を含む、北アルプス西側の懐に抱かれた一帯が奥飛騨温泉郷だ。最奥にある新穂高地区は、北アルプスの各山々への登山道の起点となっている。穂高連峰を挟んで東の長野県側にあるのは、世界的なリゾート地として有名な上高地。安房(あぼう)トンネルを経由すれば、奥飛騨温泉郷の入口にある平湯から30分ほどで行き来できる。上高地は通年マイカー規制が行われているので、奥飛騨温泉郷は岐阜県側の中継拠点としての利用も多い。しかし奥飛騨温泉郷自体にも、ロープウェイを始めとして見どころや楽しむべきポイントは数多くある。腰を落ち着けてじっくり楽しみたい。

新穂高ロープウェイ

第1ロープウェイ(新穂高温泉駅〜鍋平高原駅)毎時00分・30分発、約4分
第2ロープウェイ(しらかば平駅〜西穂高口駅)毎時15分・45分発、約7分

時間:時期により異なるのでHPを参照

奥飛騨最奥の湯で自然と一体化する喜びを

新穂高温泉

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日本屈指の露天風呂天国

奥飛騨温泉郷の最大の魅力。それはもちろんその名の通り温泉だろう。同温泉郷は、5つの温泉地から構成されている。高山から国道158号を長野方面に走ると、安房トンネルの手前、国道471号との分岐付近にあるのが平湯温泉。そこから高原川(平湯川)沿いに471号を行くと、左手に福地温泉、その先右手に新平湯温泉があり、高原川と蒲田川の合流付近で栃尾温泉に行き当たる。さらに蒲田川沿いに上流へ向かうと新穂高温泉だ。

5つの温泉地の総湧出量は毎分約4万リットル。これは別府温泉、由布院温泉に次ぐ日本第3位の規模だ。源泉がたくさんあるので、さまざまな泉質の湯が楽しめる。この豊富な湯量を背景に、温泉郷内にはじつに約170カ所に及ぶ露天風呂が存在する。

平家の落人伝説が残る歴史ある温泉から、昭和になって源泉が発見された新しい温泉まで、温泉地ごとに特色があり、また深い森の中の渓流沿いにしつらえられた秘湯、見晴らしのよい高原にある湯などバリエーションも豊富。四季折々の眺めも魅力で、これからの季節なら、燃えるような紅葉と新雪を抱き始めた北アルプスの峰々とのコントラストが楽しめる。

日帰り入浴施設や足湯なども点在しているので、宿泊する宿の湯をじっくり堪能しつつ、ビュースポットを訪れるついでに、さまざまな温泉をめぐってみたい。

つるりと滑らかな肌触り“美人の湯”の心地よさ

下呂温泉

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ゆかしき“日本三名泉”の湯どころへ

野趣あふれる露天風呂もいいが、古きよき温泉街の風情も味わいたい。ならば、飛騨地方南部の下呂温泉も訪れたいところだ。かつて富山方面から海産物を運んだことから“鰤街道”とも呼ばれた飛騨街道沿いにあるこの温泉街は、飛騨川(益田(ました)川)に沿って約70軒のホテルや旅館が建ち並ぶ。

約1100年の歴史をもつ下呂温泉は、室町時代の京都五山の僧、万里集九(ばんりしゅうく)や、江戸時代初期の儒学者、林羅山によって、有馬温泉、草津温泉とともに“日本三名泉”として紹介されている。

先人がそう称えた最大の理由は、その泉質だ。ほのかに硫黄の香りがする無色透明の湯は、まるで石鹸水のように滑らかな肌触り。それもそのはず、下呂温泉の湯のpH値はほぼ石鹸と同じなのだ。古代から万病に効く湯として知られるが、肌の古い角質を落とし、新陳代謝を促す働きがあるため、近年は“美人の湯”としても名高い。じっくり浸かって、旅の疲れを癒すこととしよう。

水明館

WHERE TO STAY IN GERO
水明館

1932(昭和7)年開業の老舗旅館。1万余坪の敷地内に山水閣、飛泉閣、臨川閣、離れの青嵐荘の4棟が連なる。各棟に個性ある温泉が備わり、湯めぐりの楽しさは格別だ。臨川閣には、さまざまな作家による日本画、陶壁画などの美術品の他、茶室や能舞台もあり、心洗われる。

住所:岐阜県下呂市幸田1268
電話:0576-25-2801
チェックイン:14:00
チェックアウト:11:00
駐車場:200台
カード:TS CUBIC CARD(Visa、MasterCard、JCB)