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「気になるトヨタ車」開発者に聞くヤリス クロス、オキテ破りの社内SUVバトルをどう生き抜く!?

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大人気の新型ヤリスをベースに作られ、まるで成功が約束されたような新型コンパクトSUV「ヤリス クロス」。だが、ざっと思い付くだけでも似たサイズのSUVにライズ&C-HR、上級SUVにハリアー&RAV4と強力なライバルは多い。ヤリス クロスは今後どう社内バトルを生き抜くのか? チーフエンジニアの末沢泰謙氏に小沢コージ氏が迫った。

末沢泰謙 Yasunori Suezawa

トヨタ自動車株式会社TC製品企画ZPチーフエンジニア
1991年入社、エンジニアを経験した後、2001年より製品企画部門担当として3年間渡欧。ヤリスやアイゴといった欧州トヨタのA、Bセグメント車に携わる。帰国後、オーリス、ヴィッツ、アクア、新型ヤリスなども担当。2016年より現職。

ハイブリッドのさらなる進化がヤリス クロスを生んだ

小沢

注目の新型コンパクトSUV「ヤリス クロス」ですが、今、気になってるのがトヨタの社内SUVバトルの行方なんです。同じコンパクトSUVにライズとC–HRがあり、少し大きいところにハリアーとRAV4、海外にはカローラクロスもあって、レクサスを見てもUX、NX、RX、LXとSUVだらけ。燃費もいいし、スタイルで攻めてますが、その中でヤリス クロスはどう生き抜くのかと。

末沢

実は僕、ハーモニーに出させていただくのは3回目なんですが、8年前のオーリスの時も「ところで末沢さん、オーリスはゴルフに勝ったんですか」からはじまってるんです。

小沢

すいません、失礼な質問ばかり。

末沢

今回はそこからですかと(笑)。確かに「今SUV、たくさん増えてきてますよね」なんですけど、世界的にSUVって普通のカテゴリーになりつつあると思うんですよ。

小沢

実際、北米や欧州では乗用車全体の約4〜5割がSUVって話で(「2019年米国市場レポート」、「2019年欧州新車販売台数レポート」(ともにJATO Japan Limited)による)。

末沢

SUV自体が昔のセダンやハッチバックに近い形になったり、メインストリームでたくさん売れるカテゴリーになってます。

小沢

そうだと思います。

末沢

昔のSUVは燃費面で不利だったんですが、各社さんパワートレインが進化して唯一の欠点がなくなってきたのも大きいです。とはいえコンパクトSUVは少なく、特にライズクラスはあんまりなくて。

小沢

確かに全長4m以下は少ない。こういったクルマの最初は1997年の初代ハリアーだったと思いますが、まずはミディアムサイズで、次はラージサイズになってコンパクトはその次に出た。

末沢

2010年くらいに日産のジュークが出ました。

小沢

トヨタはその時?

末沢

ラッシュと、それから進化の途にあったイストがありましたね。

小沢

イストか! 懐かしい。

末沢

元々コンパクトハッチのヴィッツの派生車種として生まれ、タイヤを強調したら結構売れた。あれがいわゆるヤリス クロスの前身。

小沢

そうか。実は突然変異のコンパクトSUVではなかったんだ。

末沢

当時はタイヤを大きくすると燃費が一気に悪くなったり、回転半径が大きくなったりしました。

小沢

SUV化することで、ネガティブ面がたくさん出てたんですね。

末沢

技術が追い付いてなかったし、値段も上がっちゃってましたね。

小沢

なるほど。つまり今回のヤリス クロスは、ヤリスシリーズに載せた1.5L新世代ハイブリッドのすごい進化あればこそという?

末沢

そうです。車重が増えても1.3tぐらいだし、ヤリス クロスに載せてもパワー的にも燃費的にもまったく問題ない。空気抵抗も含め、自慢できるユニットを開発してきましたので。今回、ヤリス クロスのユニット開発はハッチバックのヤリス(以下ヤリス)と同時ですし。

小沢

そうか! これはトヨタの最新ハイブリッド戦略のひとつなんだ。実際このクラスに燃費で対抗できるライバルっていないですよ。

末沢

そうかもしれません。

小沢

事実ヤリスが実燃費で約30km/L、ヤリス クロスが約25km/Lが見えるってハンパじゃないです。ってことはこのコンパクトサイズは燃費面でも必要だったと。

末沢

大きくできなかったですね。燃費だけでなくこれ以上大きくするとC-HRになっちゃうんで。

小沢

そうか。でもC–HRもハリアーもサイズの割に燃費がいいし、これで超絶低燃費のトヨタSUVシリーズが完成した気がしますね。

世界で戦える実力。2021年は大躍進の年!?

小沢

ヤリス クロスは特にヨーロッパで売れる気がするんです。

末沢

ヨーロッパには2021年導入予定です。激戦区ですがしっかりと戦っていきます。

小沢

北米では大人気のトヨタもヨーロッパでは苦戦気味ですよね?

末沢

そんなことないですよ。ヤリスクラスだと販売全体の6%ぐらい行きますし、たまに月間2位とか。

小沢

それは先代ヤリス、日本ではヴィッツと呼ばれた時代からですか。

末沢

そうです。

小沢

ってことは新型ヤリスに余計期待じゃないですか。燃費がますますよくなり、走りも電動感がすごい。

末沢

ヤリスは1Lエンジンからあってレンタカー需要も多いんですけど、ハイブリッドの四駆もあって本当に幅広い。

小沢

昔、ヨーロッパでハイブリッドは売れないといわれましたが……。

末沢

今やハイブリッドが半分以上です。今後欧州ではCAFE(企業別平均燃費基準)規制があって、ハイブリッドを売らなければいけなくなる。2021年以降は全体の3分の2近くがハイブリッドになるかと。

小沢

そう考えると今後、トヨタはヨーロッパで大躍進するのでは?

末沢

頑張りますが地場メーカーとの競走は厳しさを増しています。

絶対印象に残るフロントフェイス

小沢

ところで今回、デザインは結構思い切ったと思ったのですが。特に顔が大胆ですよね。

末沢

以前、特撮ヒーローと(笑)。

小沢

そう、宇宙人や特撮ヒーローのような個性的な顔。だから走り、質感、燃費ともバッチリですけど、エクステリアだけは冒険かなと。

末沢

特撮ヒーローは嫌いですか?

小沢

サイドにしろリアにしろ、ぶっちゃけ一番簡単なのはジープみたいに角張ったマッチョデザインにすることだと思うんですよ。それだけで無骨な4WD車に見えるし。でもヤリス クロスは都会派へ見せるためあえて角張らなかった。それは結構なチャレンジだと思います。

末沢

そうですね。

小沢

最初にデザインを見た時、まさかこのまま量産化するとは思わなかったんです。だって表情が生き物みたいじゃないですか。それでいて小動物っぽい。これはやはりこのクラスのライバルがみんなデザインで攻めてるからですよね。

末沢

なんだかんだで日産さんは攻めてますね。

小沢

ジープ・レネゲードなんかも相当デザインで頑張ってます。やはりこのクラス、ハッチバックの車高をちょっと上げて、みたいなボディデザインではもはや許されない?

末沢

それはないです。足とエンジンと車体はヤリスと一緒ですけど、それ以外の外観は全部違う。

小沢

そういう意味では結構なチャレンジをしてるんですね。僕はてっきり、今SUVブームだし、ヤリス クロスはヤリスを抜くくらいの勢いかと。

末沢

それはキツイと思います。ヨーロッパでもまだハッチバックの方がSUVの倍ぐらい売れてますから。

小沢

そうか。アメリカではセダンがSUVに完全に食われてますけど、欧州じゃハッチバックは食えない。

末沢

30万〜40万円安いですから。廉価なところは残りますよね。お客さまが違うと思います。

小沢

一方、日本は2020年月販トップをライズが何回か取りました(一般社団法人日本自動車販売協会連合会「乗用車ブランド通称名別順位」による)。それに続きヤリス クロスがトップとか?

末沢

その分ヤリスが売れててトップを取れるとありがたいです。

小沢

じゃ、ヤリス クロスが、他の4.1m台SUVの中で勝ってる部分は。

末沢

ハイブリッドSUVとしてはもっとも小さいことです。

小沢

確かに。ラゲッジ容量は?

末沢

ライズより広いですが、逆にリヤシートでは少し負けてます。

小沢

やはり身内が一番のライバルじゃないですか。ライズっていう。

末沢

コンパクト市場はお客さまも迷われるし、みんなライバルですよ。

小沢コージ Koji Ozawa

神奈川県横浜市出身。自動車メーカー勤務を経て1990年に二玄社に入社し、自動車情報誌『NAVI』の編集に携わる。1993年にフリーランスとして独立後、現在は「バラエティ自動車ジャーナリスト」という肩書きも持つ。

サイズ
全長4,180mm×全幅1,765mm×全高1,590mm
乗車定員
5名
燃料消費率

ガソリン車 X 2WD
20.2km/L(WLTCモード)国土交通省審査値

ハイブリッド車 HYBRID X 2WD
30.8km/L(WLTCモード)国土交通省審査値

エンジン

ガソリン車
 型式:M15A-FKS
 総排気量:1.490L
 最高出力(ネット):88kW(120PS)/6,600r.p.m.
 最大トルク(ネット):145N・m(14.8kgf・m)/4,800〜5,200r.p.m.

ハイブリッド車
 型式:M15A-FXE
 総排気量:1.490L
 最高出力(ネット):67kW(91PS)/5,500r.p.m.
 最大トルク(ネット):120N・m(12.2kgf・m)/3,800〜4,800r.p.m.

モーター
ハイブリッド車
2WD フロントモーター
 型式:1NM
 最高出力:59kW(80PS)
 最大トルク:141N・m(14.4kgf・m)
メーカー希望小売価格

ガソリン車
179万8千円〜244万1千円(税込み)

ハイブリッド車
228万4千円〜281万5千円(税込み)

詳しい情報・お問い合わせ

トヨタ自動車株式会社 お客様相談センター
TEL:0800-700-7700 (全国共通・フリーコール)
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