WEC TOYOTAWEC開幕戦
セブリング1000マイルリポート
Text: Daisuke Katsumura

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2022年3月18日にWECの開幕戦となったセブリング1000マイルレースが行われました。TOYOTA GAZOO RACINGはハイパーカーと呼ばれるGR010HYBRIDで参戦。2位の好成績を獲得しました。この開幕戦のリポートとともに、トヨタ車が活躍するWECの魅力に迫ります。

WECとは? 最新技術が詰まった
WEC参戦マシンGR010HYBRIDとは?

モータースポーツに詳しくなくても、毎年フランスで開催されるル・マン24時間というレースは聞いたことがあるのではないでしょうか。F1やGT選手権など、2時間程度で競い合うスプリントレースと違い、ル・マン24時間レースは、ドライバーの交代や燃料補給などを伴う、長距離、長時間の耐久レースです。このル・マンを含めた、世界を転戦するシリーズ戦を争うのがWEC(世界耐久選手権)です。

このWECの2020年シーズンにLMH(ル・マン・ハイパーカー)という新たなトップカテゴリーが新設されました。TOYOTA GAZOO RACING(以下「TGR」)は2021年シーズンより“GR010HYBRID”という専用のレースマシンを使用してLMHカテゴリーに参戦しています。GR010HBRIDは、680PSを発生する3.5リッターV6ツインターボエンジンと、272PSを発生するハイブリッドシステムを搭載し、ユニット最高出力は952PSという驚くほどパワフルなマシンです。

LMHカテゴリーでの初シーズンとなった2021年はTGRが全戦で優勝するという快挙を成し遂げました。2022年シーズンも引き続きGR010HYBRIDでの参戦となりましたが、今シーズンより採用された100%再生可能燃料へ対応するために小変更を施しています。

TGRはこのWECの2022年シーズンに昨年同様ワークスマシン2台体制で臨んでいます。ゼッケン#7は、昨年に引き続きマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスがドライバーを担当。ゼッケン#8は、昨年同様セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレーの2名と、昨年までドライバーを務めた中嶋一貴に変わって平川亮が担当。また小林可夢偉がチーム代表を兼ねる新体制でレースに臨みました。

波乱の予選からスタートした
2022年シーズン

WEC2022年シーズンの開幕戦となったのは3月18日に開催されたセブリング1000マイルです。アメリカのフロリダ州にあるセブリング・インターナショナル・レースウェイは、かつての軍用飛行場跡地に作られたサーキットで、アメリカではレースの聖地として人気のあるサーキットです。一方で全長6.019kmのコースはコンクリート舗装で荒れた路面が多く、このサーキット専用のサスペンションセットアップが必要となるほど、独特なコースでもあります。

レースは前日に行われた予選から波乱の展開となりました。今シーズンよりマシン間の性能差による戦力の不均衡を是正するためのBoP(Balance of Performance:性能調整)の対象範囲が拡大し、高性能なGR010HYBRIDには苦しいスタートとなりました。ブミエ、ハートレー、平川がドライブする8号車は4番手、コンウェイ、小林、ロペスがドライブする7号車は7番手となった時点でLMP2車両のクラッシュによってレッドフラッグ(セッション中断)となり、最終のアタックは不成立のまま予選終了となってしまいます。

4番手、7番手からスタートした決勝では序盤で首位を走るゼッケン#36のアルピーヌA480を追いゼッケン#8が2位、ゼッケン#7が3位までポジションをアップし首位を猛追しますが、4時間が経過する直前に7号車のロペスが周回遅れのGTクラス車両と接触してスピン。その後ピットへと戻る最中にコースアウトしてしまいリタイアとなってしまいました。

残った8号車はアルピーヌを猛追するも、レース終盤に天候が悪化し、落雷の危険があるとして走行停止となり、その時点での2位という順位でレースは終了。GR010HYBRIDは参戦開始以来100%の勝率を誇っていましたが、今回優勝を逃したことによって連続優勝記録6で途絶えてしまいました。とはいえ、今年から参戦の平川選手にとっては初戦で表彰台という嬉しい結果となりました。

首位奪還を目指して
TGRのチャレンジは続く

レース後にTGRチームオーナーの豊田章男社長は「ハイパーカーでの2年目の挑戦が始まりました。可夢偉がチーム代表となり臨んだ初戦は、彼自身も乗る7号車がクラッシュ、8号車は最後まで走り続けましたが勝つことはできず試練の船出となりました。勝利を目指して、これを乗り越えようとすればそこに技術や技能の進化が生まれます。このレースの現場でも、もっといいクルマづくりを続けていきましょう」とコメントしました。

次戦からはステージをヨーロッパへと移し、5月7日にベルギーのスパ・フランコルシャンで6時間レースが行われます。また9月11日には、昨年新型コロナウイルス蔓延の影響で中止となってしまった富士6時間レースも行われる予定です。首位奪還を目指して新たなチーム体制で臨むTGRのチャレンジに今後も注目ですね。

TGR WECページリンク: https://toyotagazooracing.com/jp/wec/

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