YAMAHA E01YAMAHA E01に見る
二輪車業界のカーボンニュートラルへの道
Text & Photo:Daisuke Katsumura

トヨタ自動車とも協業関係にあり、二輪車業界の中でも力を入れてカーボンニュートラルを目指しているヤマハ発動機が、電動スクーターE01を発表しました。今後、YAMAHAはE01を使った実証実験を通じて電動スクーター普及への課題を探しつつ、カーボンニュートラルを目指しています。今回はカーボンニュートラル実現への先駆けとなる電動スクーターE01を紹介しましょう。
最新の電動バイク事情を知るためにE01に試乗

トヨタ自動車は、カーボンニュートラルへの道を策定し、その実現に向けて大変革を続けている最中です。一方、同じモビリティ業界の二輪車はどうなっているのでしょうか。先日発表されたYAMAHAの最先端電動スクーターE01の説明会&試乗会に参加し、YAMAHAが考える二輪車にとってのカーボンニュートラルへの道を探っていきます。
通勤・通学に最適な
原付二種クラスの電動スクーター

今回発表されたYAMAHAのE01は、市販モデルではなく将来の電動バイク普及環境を見据えた実証実験を展開するための車両です。実際に広くユーザーの意見を集めることを目的に、世界6地域で実証実験が行われます。日本では応募のあった一般ユーザーに期間限定で有償リースをする実証実験を7月から行われる予定となっています。
ちなみに日本の法規に照らし合わせると、E01は分類上「原付二種」となりますが、二人乗りが可能な電動バイクとなります。加速性の良いモーターを搭載し、4.9kWhとパワーのあるリチウムイオンバッテリーを搭載したE01は、満充電で104km(60km/h定地性能)の走行が可能です。また最高速度100km/hと都市圏での通勤、通学に最適なスペックになっていることが分かります。

メーター周りは両脇に各種のインジケーターが並び、中央は大きくスピードとバッテリー残量などが分かりやすく表示される液晶ディスプレイ。特に中央に配置されたバッテリーの残量表示は大きく、走行中にも識別しやすくなっています。
車両にはeSIMとGPSが搭載されており、リース期間中は位置情報や走行データが3G/LTE回線を通じてサーバーへと収集、各種データの分析が行われ、今後のEV開発へフィードバックされるそうです。
シート下には大きな収納スペースを確保

これは自動車の世界でも共通して言えることですが、電動バイクにおいても、バッテリーの搭載位置や容量は大きな課題となっています。スペースに限りのある二輪車にバッテリーを搭載するためには、容量を大きくするだけでは解決とはならず、パフォーマンスと航続距離、そして車体重量などのバランスが非常に重要になります。
E01は電動でありながら、シート下にヘルメット収納スペースを確保。さらに長距離移動の際にはこのスペースを活用して、上の写真のように100V電源のポータブル充電器を車載することも可能です。これによって普段の通勤や通学ではヘルメットや荷物を収納し、長距離のツーリングでは充電器を収納するといった具合に、用途に合わせた使い分けができるのです。

こうした収納スペースを確保するために、E01ではバッテリーを車体中央のフレーム内に、そしてモーターを後輪直前に配置することで、収納スペースを生み出しているのです。またこのレイアウトは比較的重量物であるバッテリーやモーターを前後車輪の間の低い位置に配置することで、低重心化に貢献しています。
実際に試乗した際にも非常に扱いやすく、そしてモーターのパワーの出方も唐突ではなく、エンジン車のように非常に滑らかです。乗車姿勢や運転操作も含めて、大型スクーターの運転経験があれば違和感なく運転できるでしょう。
充電インフラの拡充と
二輪独自の充電規格の策定などが課題

発表会の現場で開発に携わったヤマハ発動機GB統括部イノベーショングループの野村靖さんにお話を伺ったところ、「目下の課題は車両本体よりも充電インフラの拡充や二輪車用充電機の規格統一などである」とのこと。
公表された内容によると、バッテリーの充電に関しては、車両に付随する100Vのポータブル充電器を使用してもフル充電(0→100%充電)に約14時間を要します。有償リースによって自宅に設置できる200Vの普通充電器はフル充電を5時間で完了できますが、持ち運びはできません。そして今後ディーラーなどに上の写真のような急速充電器を設置予定で、こちらを使用すると1時間で90%の充電が可能となります。とはいえ急速充電器が設置される場所はその設置箇所も含めて現在未定となっているそうです。
実際に乗ってみても車両の完成度はかなり高いため、充電インフラさえ整えば多くのユーザーに受け入れられそうな印象でした。自動車の世界とは異なる課題を抱える二輪車の世界もまた、カーボンニュートラルへ向けたチャレンジを続け日々進歩を続けているのです。