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New Crown Report本当に“クラウン”なのか?すべてが変わったクラウン維新を試す Text:Koji Ozawa
Photo:Yuichiro Higuchi

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7月に開催されたワールドプレミアにて、豊田章男社長自らが「明治維新」と表現した新型クラウンは、本当に“クラウン”と呼べるのか? 公道試乗が許された最重要トヨタ車、クラウン クロスオーバーを自動車ジャーナリスト、小沢コージが実走インプレッションする!

“想像を遥かに超えた”新型クラウンの試走レポート

本当にびっくりした。そして想像以上だった。それが、7代目にお目見えした16代クラウンこと新型クラウンクロスオーバーに乗った率直な印象だ。

2年前、すでに次期型クラウンのSUV化はリークされていた。地元新聞がすっぱ抜いたのだが、正直信じられなかったし、ピンとこなかった。何故なら、クラウンは平成初めからこの世界にいる自動車ジャーナリストにしてみれば、ある種アンタッチャブルな存在。「神聖にして侵すべからず」で、基本変わらないクルマと思い込んでいたのだ。もしくは、クルマ業界の聖域でもあったのかもしれない。

事実、クラウンは1955年に初代が生まれて以来、67年間も名前は変わっていないし、王冠マークも改良されどそのまま。なにより長らく続いた不文律的なものがあった。フロントにエンジンを縦置きし、リアタイヤを駆動するFRレイアウトであること。王道の3ボックスセダンボディであること。全幅1.8mを決して超えないことだ。それがクラウンをクラウンらしいものとし、長年ファンの心を摑み続けた。FRレイアウトはステアリングフィールを生々しいものにし、適正な前後重量配分とクッションでしっかりした乗り心地を確保。3ボックスのフォルムは3つ揃いスーツのように定番感と安心感を与えて、1.8m以下の全幅は日本での扱い易さを保証したのだ。

しかし、クラウンのもう一つの本質は「革新と挑戦」。初代でアメリカ車ライクだったボディデザインは、徐々に欧州車テイストになっていったし、ガソリンエンジンはガソリンハイブリッドシステムへと置き換わった。結局不文律はなかったということなのだ。

4つの驚きを秘めた16代目クラウン

それを具現化したのが、まさに新型16代目クラウンで、大きく4つの驚きが隠されていた。まず、噂通りにボディがクロスオーバーSUV化したこと。そして、骨格がエンジン横置きFFレイアウト化したこと。今後スポーツ、セダン、エステートと全部で4種のボディタイプを備えること。事実上ほぼ日本専売車だったのが、今後世界40の国と地域で販売されることだ。

ただし、2つ目のFFレイアウト化は半分当たっておらず、今後出るセダンはFRレイアウトを踏襲するとの噂あり。本当になんでもありで決まりなし! クラウンは、一般に思われているほど頑固ではなかったのだ。

新生クラウン第一弾「クロスオーバー」

いよいよ今回、9月発売の新生クラウン第一弾たるクロスオーバーの公道初試乗が許されたのだが、改めてそのスタイルを見て驚いた。「本当にこれクラウン?」と言いたくなるフォルム。全長全幅全高はすべて変わり、15代目に比べて2cm長くて、4cm広くて、8.5cmも高い。特に、高さはSUV化の象徴であり、スタイルは今までの面影まったくナシ! 未来的スペースシップのような流線型で、和装から洋装に変わったぐらいのイメージチェンジ。

正直、「CROWN」のエンブレムが付いてなければ、そうとは思えないほどだ。だが、小沢は逆に安心した。現代的なSUVフォルムに、かつてのクラウンのような台形グリルが付いていたら、かえってアンバランス。この過去との決別ぶりこそが新型クラウンの白眉なのだ。新型クロスオーバーを見て違和感を覚える人はいるだろうし、これはクラウンじゃないと思う人もいるだろう。だが、すべてを丸く収めるモデルチェンジはない。

新型クラウン クロスオーバーの注目ポイントとは

しかも新型クラウンは、冷静に見ると横幅拡大で狭い道での扱いこそ厳しくなっているが、よくなっている部分も多い。スタイリングは好みにもよるが、素直にイマ風にカッコよくなった。ここが最も予想外。個人的に、クラウンらしいフロントグリルを残したままSUV化してカッコよくなるわけがないと思い込んでいたら、顔つきごと新しくなってしまった。

一番の恩恵は室内の広さで、ボディ拡大とスペース効率に優れたFFプラットフォームの採用により確実に広くなった。

特にリアシートの拡大は顕著で、身長176cmの小沢がフロントに座ったシート位置でもヒザ前にコブシが2つ以上入る。ラゲッジスペースも凸凹が増えた分、フルサイズのゴルフバッグ4つは収納できなくなったが、容量は74リッター拡大して450リッターと広くなった。

さらに、燃費性能だ。新型クロスオーバーは2つのハイブリッドパワートレインを持ち、1つは従来型の進化形である2.5リッターエンジンのTHS2方式。もう一つは、今回新開発された2.4リッターターボと6速ATを組み合わせたデュアルブースト方式だ。

まず、前者からしてほぼ同じシステム出力を持つハリアーやRAV4よりモード燃費は上がってるし、後者は新作ハイブリッドなので比較は難しいが、ほぼ350psの高出力にしてリッター15.7kmのモード燃費も素晴らしい。

もう一つは、コストパフォーマンス。かつて上限700万円台だったのが約50万円から100万円のレベルで購入価格が下がり、435万円から640万円の範囲で買えるようになった。伝統のフォーマットを捨てたこと自体は、ほぼいいことづくしなのである。

まさに“想定外”な走りを見せてくれたクロスオーバー

しかも、クラウンがかつての伝統をすべて捨てたかというとそうでもない。一番の驚きは乗ってわかった走り味だ。クラウンは長年FRレイアウトならではのナチュラルなハンドリングであり、ステアリングフィールを根本的な魅力としていた。走り始めて10m、いや5mでわかるしっとりとした乗り心地とキレ味のよいステアリング。どれもFRレイアウトでしか得られない、伝統的な走りのフィーリングと思っていたがどうやら違っていた。

小沢は、眉唾モノで新型クラウンの2.5リッターハイブリッド、クロスオーバーG アドバンストに乗った。シートポジションは従来型クラウンより明らかに高く、コクピットの作りも違う。フロントノーズが長く、足を潜り込ませるようなかつての着座姿勢とは違う包まれ感。メーター&ディスプレイとして大型12.3インチの横長モニターが2つ並び、イマドキのデジタルコクピットを形成している。それだけにシャープだが、少々味気のないイマドキのSUVフィーリングを予想してステアリングを切り込んだら違う! 何故か、いつもと同じクラウンらしい手応えを感じるのだ。

想定外!? まるで大豆ステーキを食べたときに、いつもの牛肉の味がしたような不思議な感覚。出足もいつものトヨタハイブリッドより数割増しの鋭さ。驚くほどかつてのクラウンの走り味に近づいている。しかも、そのままハイウェイに突入するとかつてのクラウン以上の高速安定性がある。

私はキツネにつままれたような気分で試乗を終え、トヨタ開発者の待つミーティング会場に戻って質問をぶつけまくった。何故FFレイアウトベースのクラウンなのに、かつてのFRレイアウトのクラウンの味がするのか?

古典芸能の味わいを最新技術で再現したような名車

すると、徐々にわかってきた。確かに新型クラウンは、現行ハリアーやRAV4と基本共通のGA-Kプラットフォームを使っている。しかし、ボディ剛性やサスペンション取り付け部剛性を本気で上げているのはもちろん、今回から新世代の電動4駆システムやトヨタ言うところのDRS=4輪操舵のダイナミックリアステアリング技術を投入。そのほか、ボディ各部の静電気の帯電を打ち消す除電スタビライジングプラスシートもほぼ全車標準装備。

結果、かつてのクラウンらしい走り味を取り戻しているのである。まず効いているのが4輪前後トルク制御で、今まで以上にごく低速領域からリアタイヤに駆動力を配分することにより、フロントグリップを余らせ、かつてのFR車的フィーリングを演出している。同時に4輪操舵=つまり通常のフロントタイヤに加えてリアタイヤを操舵する技術だが、この制御も走り出しであり、コーナリング冒頭で効果的に使う事により、切れ味のよいハンドリングを得ることに成功している。

さらに、除電スタビライジングプラスシートは、コーナリング中はもちろん、発進時から減速時まで全域で動きのキレのよさに貢献。まさしく複合的技術の結集で、クラウンらしくかつ現代的な走行フィールを実現しているのだと。

いわば古典芸能の味わいを、最新デジタル技術で再構築し、再現してみせるような技法。つくづく今の自動車技術は凄い。こんな時代がくるとは思ってもみなかった。

クラウンは世界でも類を見ないほど、長く続いている自動車銘柄である。単一車名として60年以上、途切れないのは同じトヨタのランドクルーザーぐらいしかない。カローラですらまだ生まれて56年しか経ってないのだ。名車は1日にしてならず。涙ぐましいほどの継続であり、伝統を繫ぐ努力を感じた次第である。

メーカー希望小売価格(税込み)
4,350,000円~6,400,000円

価格は、一部の地域で異なります。リサイクル料金は、別途必要となります。

クラウン クロスオーバーの情報はこちら
https://toyota.jp/info/crown_brand/crossover/

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2022 Autumn

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