CROWN GR PARTS自動車評論家、小沢コージさんが語る
新型クラウン・GRパーツの魅力
Text:Koji Ozawa
67年ぶりの大改革を受けた新型16代目クラウンクロスオーバー。本体の変わりぶりも驚くが、登場と同時に生まれたディーラーオプションパーツのGRパーツもまた興味深い。トヨタのモータースポーツ部門である「TOYOTA GAZOO Racing」の頭文字が付けられたこのパーツ。どこにこだわり、どう新型クラウンの性能を引き出すのか。その詳細に迫る。
そもそもGRパーツとはなんなのか?
「そもそもGRパーツはGR(ガズーレーシング)がプロデュースする本気のカスタムチューニングパーツです。GRがモータースポーツで培ったノウハウを落とし込んであり、自動車用アフタパーツを本格的かつ気軽に楽しんでいただくのが狙いです」。(企画担当:平野氏)
GRがプロデュースするGRと名の付く商品群は大きく4段階あり、最もカスタム度が高くそのままモータースポーツでも使えるレベルの商品が「GRMN」というコンプリートモデル。台数限定でエンジンからボディからパーツまでつくり込んであり価格も本格的だ。
その次が「GR」モデルでこれまたクルマに総合的に手が入れられた操る歓びを日常的に実感できる本格スポーツモデル。 続くのが「GRスポーツ」であり言わば「GR」のエントリー版。簡単な足回りであったりエアロチューンがメインだったりする。
最後が今回の「GRパーツ」。文字通りパーツ単体で発売され価格も求めやすい。開発もトヨタグループ傘下のTCD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)で行われている。それだけに“手軽”さはある。ただしGRの名が付くだけに絶対にスタイルだけの「なんちゃって」商品にはならない。足回り等の機能部品はもちろん、エアロパーツも「本当に空力的に効く」のがポイント。どれもGRカンパニーの承認を受けなければ販売できない“本格派”なのだ。
クラウン用GRパーツに関してもしっかりした狙いとコンセプトが練り込まれている。
「ご存知クラウンは1世代前まではセダンでした。今回SUVモデルも発表されましたが、それでもクラウンという名に相応しい快適性であり総合性能は持たせなければならない。そこには気を使いました」。(企画担当:平野氏)
また現在クロスオーバー用カスタマイズパーツには、今回のGRとモデリスタの2ブランドがあり、狙いとイメージは分けられている。前者が機敏、スマート、性能に気を使ったスマート&パフォーマンスを追求した商品なのに対し、後者は輝かしさ、優雅さをモットーとするブリリアント&エレガンスを追究したワンランク上のパーツ。
なにより驚くのはTCDにパーツ開発専任デザイナーや、動力性能や空力性能を評価する専任テストドライバーが存在すること。
しかもトヨタ自動車本社の開発者やデザイナーと直に連絡を取り、意識を共有している。
例えばパーツの空力やカラーを決めるデザイナーによれば
「具体的にはサイドにレールのような空力パーツを付けて上下移動を抑制する方向に。カラーリングも新型クラウンは黒を大胆に使ったバイカラーにしているのでそれを生かすようにしました」。(デザイン担当:山﨑氏)
それを評価するテストドライバーのコメントもまた頼もしい。
「GRと名が付くからには絶対カタチだけのモノにしてはならない。実際GRパーツを購入されるお客様は走りも性能も分かっている方が多いです。山﨑の言うサイドスカートは本当にロールが抑えられますし、GRのアルミホイールひとつ入れただけでステアリングの微少舵角域でのレスポンスが変わりますから」。(テストドライバー:小林氏)
カッコイイだけのパーツは要らない。手軽かつ本物の性能を持つ商品だけをお届けする。それがGRパーツ開発陣の心意気なのだ。
GRフロントスポイラー
トヨタのデザイナーと連絡を取り、クロスオーバー本来のデザインを生かしたスポイラー。外観的にはセンター1ピース、サイド2ピースの3ピース構造。センターピースはフードから来るブラックを意識してブラックアウトさせるだけでなく、必要以上に車高を落とさず、車両下面に積極的に空気を取り込む形状となっている。サイドは短い飛行機の羽のような形状でこちらはボディ同色。これまたリフトを抑えるのと同時にLEDヘッドライトとの相似形に。前からは見えないが追加アンダーカバーもあり、純正アンダーカバーのエアロスタビライジングフィンを効果的に活用する形状としている。
GRサイドスカート
単なるお飾りのようにも見えるサイドスカートだが、なんと片側4ピース構造。ドア前後にも細かくパーツを配し、長めのレールのような空力効果を発揮。これによりコーナリング中のロールが抑えられ、それはテストドライバーが体感できるレベルだという。
GRリヤバンパースポイラー
元々リヤの浮き上がり(リフト)を抑えるディフューザー形状の新型クラウン。しかしGRパーツはその効果をさらに高めたより造形の深いディフューザー形状を発揮。フロア下の空気の流れを跳ね上げ、ボディを下に押しつけている。こちらはベース車バンパーからの交換式で1ピース構造となっている。
GRリヤトランクスポイラー
ルーフから来る空気の流れを跳ね上げるトランクスポイラー。こちらは1ピース構造だが効果的にリヤを上から地面に押さえつけるだけでなく、下部のバンパースポイラーと連動し、下の空気の流れをさらに引き上げる効果を持つ。まるで飛行機のフラップのようだ。リヤバンパースポイラーと連動する事で、フロント側のダウンフォースを向上させる効果もある。
GRパフォーマンスダンパー
空力パーツとは全く違う機能部品であるパフォーマンスダンパー。フロントフロアの左右サイドメンバーの変形やねじれ、振動を抑え、路面段差乗り越え時のショックが確実に減る。同時にサスペンションの動きが良くなり、体感的には軽い力でスッと路面を切るように曲がれる。
GR21インチ鋳造アルミホイール&タイヤセット
新型クロスオーバーは純正用品でも21インチが選べるがGRの同サイズ鋳造アルミホイールはひと味違う。軽量なのはもちろん複数あるスポークを敢えてほぼ同一の太さにして剛性アップ。結果ステアリングの微少舵角領域でのレスポンスが確実に良くなる。色にもこだわりアルミの切削部分に黒を混ぜたクリアを塗り、より高級感を高めている。
新型クラウンの魅力を引き出すGRパーツ。その魅力をぜひ、体感してもらいたい。
小沢コージ/Koji Ozawa
自動車メーカー勤務を経て1990年に二玄社に入社し、自動車情報誌『NAVI』の編集に携わる。1993年にフリーランスとして独立後、現在は「自動車ジャーナリスト」という肩書を持つ。