PHEV DEBUT王座は揺るがず。
ハリアーの歩んだ25年を最新のPHEVで振り返る
Text:小沢コージ
Photo:奥隅圭之、トヨタ自動車
SUVという言葉すら耳に新しかった1997年、高級クロスオーバーSUVとして誕生したトヨタ ハリアー。その存在は瞬く間に支持を集め、以来4世代に渡ってマーケットをリードする傑出したモデルとなった。はたしてその軌跡とはどんなものだったのか。ハリアー登場25年目にして導入されたPHEVモデルのステアリングを握りながら、モータージャーナリストの小沢コージが振り返った。
プレミアムSUVを「発明」したハリアー
そもそもハリアーはトヨタ開発陣の希有な企画力が生んだ奇跡の都会的クロスオーバーSUVだ。初代は、まだまだトレンディ風ドラマも残りし1997年にデビューし、翌年、北米でレクサスRXとして発売された。
ハリアーの登場以前、乗用車用プラットフォームを使い、乗り心地が良くて内装が上質で、あえて武骨さを省いたスタイリッシュSUVなどなかった。いい意味でこういうナンパな「背高グルマ」は、他の日本メーカーには発想すらなかった。
2003年には2代目へとバトンタッチ。独自の流麗デザインは正常進化し、新たにハイブリッドや先進安全機能、エアサス仕様までが選べるようになった。
本来ならばハリアーは、この2代目を期にレクサスRXと統合されるはずだった。ところが思わぬ奇跡が起きる。一足先に、3代目レクサスRXがマッチョなワールドサイズのSUVに進化したため、他にない端正で扱いやすい2代目ハリアーが国内で支持され続けたのだ。
結果、2代目は2013年まで販売を延長することとなる。当時は「若者のクルマ離れ」が囁かれていた頃。トヨタ自身も「ハリアーの魅力とは?」「なぜここまで若い人を惹きつけるのか?」を本気で考え始め、本来ならば消滅するはずだったハリアーの再開発が決定する。
こうして2013年、日本向けに復活したのが3代目ハリアーだ。横幅を1.8mチョイ超えに抑え、ダウンサイジングターボや進化したハイブリッドを載せただけじゃない。チーフエンジニアは「都会のイケてる男女がシャンパングラスを片手に…みたいな」とあえて日本のトレンディさを意識。独自の端正な水平基調デザインを「ハリアーネス」と規定した。
25年目の到達点PHEVモデルを試す
2020年に生まれた4代目もユニークだった。グローバルSUVのRAV4と共通骨格で設計されただけじゃない。3代目のハリアーネスをグローバル化させつつ受け継ぎ、国内1ヶ月で集めた受注は、いきなり目標の14倍以上となる4万5000台。当時の佐伯禎一チーフエンジニアは「いい男に見られたい、ひと回り大人に見られたい、そういう方達が多くいらっしゃったということでしょう」と冷静に分析した。やはりハリアーの本質は変わってない。
一方で、時代に合わせて電動化を進め、本格的にプラグインハイブリッド化させたモデルも登場する。2022年秋のマイチェンで登場した新型ハリアーPHEVだ。
今回ひさびさにハリアーとして乗ってみたが、安心するのはもはや磐石のハリアーネスだ。グリルを始め、基本はクリーンな水平基調で3代目の正常進化。ハデな変形ライトや過剰なコークボトルラインは使わず、あくまでも端正さをキープ。PHEVには専用のピアノブラックフロントグリルを採用し、ハリアーらしさをそのままに、絶妙に上質感が増している。
さらに安心するのは上質な乗り心地であり加速感。ベースのハリアーハイブリッドからしてそうだが、そもそもPHEVはフル充電状態からなら完全にEVとして振る舞う。その発進加速の滑らかさ、静けさはハリアーの魅力をさらに引き立てる。これはもはやSUVというより、高級電動サルーン並みの走りの質感だ。
そもそもハリアーは輸入SUVにはない日本らしいおもてなし感に満ちた日本独自の都会派プレミアムSUV。PHEVはそれをさらに研ぎ澄まし、エコロジー性能も上げている。単純に電動PHEV化しただけじゃない。ある意味、25年目にしてたどり着いた、ハリアーの完成形とも呼べる出来映えかもしれない。