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ACADEMIE DU VINすっきりワインの代名詞「ソーヴィニヨン・ブラン」
その魅力と代表的なワインを徹底解説

Lifestyle

爽やかでフレッシュな味わいが最大の特徴である「ソーヴィニヨン・ブラン(以下、SB)」。長い時間寝かせる必要がなく、また手頃な価格で手に取りやすいワインです。今回はSBの造り方や産地ごとの代表的なワインをご紹介。産地によってどのような味わいになるかも解説します。また、マリアージュのコツや合わせるグラスなども明らかにします。SBがもっと身近になり、明日の食卓に取り入れてみたくなるはずです。

際立つ個性とわかりやすい味わいで愛される品種に

ソーヴィニヨン・ブラン(SB)というと、爽やかなアロマにクリスピーな酸味、フレッシュな味わいを思い起こすのではないでしょうか。SBの特徴は、わかりやすい品種特性にあります。ブラインドテイスティングでも、SBは比較的ジャッジしやすいといえます。

シャルドネは「白ワインの王者」ですが、シャルドネとSBの決定的な違いはこのわかりやすさにあります。シャルドネといっても栽培地や作り手で大きくスタイルが異なりますが、SBはどれを選んでも、香りや味わいが想像しやすいのです。そのため、ワイン初心者にもおすすめできます。一方で自己主張も強いので、好き嫌いが分かれるところです。

家系図を辿ると、Sauvignon Blanc × Cabernet Franc = Cabernet Sauvignonと、カベルネ・ソーヴィニヨンの片親でもあります。もともとはボルドーを含む南西フランスとロワールに由来し、そこから世界中で栽培されるようになりました。

SBは単体ではすっきりと辛口のワインになることが多いですが、甘口ワインの原料になることもあります。他の品種とブレンドしたり、樽を使い重厚なスタイルに仕上げたりすることもあります。

冷涼な気候ではフレッシュな香りに、
温和な気候では華やかな香りに

SBは比較的芽吹くのが遅く、春の遅霜の被害を受けにくい品種です。SauvignonはSauvage(ソバージュ)=野生という意味で、樹勢は強く葉が勢いよく伸びるため、造り手は栽培管理にやや苦労するものの、比較的育てやすいといわれます。栽培面積も約12.3万ヘクタールと、高級品種のなかではシャルドネに次ぐ広さです。

生育期は比較的短いため、冷涼~温和な産地での栽培に適しています。ある程度日照量がありながらも酸味をキープできる環境がベスト。冷涼な気候だと、青草やレモン、青リンゴなどフレッシュな青さを伴う香りが出やすく、温和な気候だと、熟した柑橘やパッションフルーツといった華やかな香りを発するようになります。

SBの香り成分のなかで代表的なのが、「3MH(3-メルカプトヘキサノール)」というチオール系物質。パッションフルーツやグレープフルーツの皮のような柑橘系フルーツの香りの正体です。この香り物質を発見したのは日本人。名門ボルドー大学でワインのアロマの研究をしていた故・富永敬俊氏で、この発見はSBのワイン造りに大きな影響を与えました。

熟成に樽を使わないことで
生まれるメリットがある

一般的なSBは、樽なしでさっぱり、軽快な味わいです。この場合は発酵や熟成をさせるのに樽を使わず、酸素をできるだけシャットアウトした嫌気的な環境で醸造します。また香り成分を引き出すため、「スキンコンタクト」という低温で果皮を果汁に漬ける工程も行われます。

このスキンコンタクトを広めたのが、ボルドー大学のドゥニ・デュブルデュー教授。SBの品質を高めた人物であり、温度管理ができるステンレスタンク、樽熟成などの醸造手法を導入し、ボルドーに白ワイン革命を起こしたことで知られています。

これは裏話ですが、樽を使わないということはワイナリーのセラーで長期熟成をする必要がなく、早く出荷できるということ。つまり、よいキャッシュフローにつながり、製造コストが安くなるというメリットがあります。消費者にとっても、さっぱりとした味わいは万人に愛されるものであり、比較的安価であるため手に取りやすいのです。早飲みできるのも気軽さにつながっています。SBは消費者にも造り手にも嬉しいブドウなのです。

樽を使い複雑なスタイルにするには、樽の仕入れや熟成コストがかかってくるので、価格に上乗せされます。そのぶん熟成ポテンシャルも上がり、また違った楽しみも増えることになります。

元祖・生みの親である
ボルドーに対抗する、世界各地のSB

それでは、SBの主な産地を見ていきましょう。

●ロワール
SBの故郷はフランスですが、なかでもロワール川上流にあるサンセールとプイィ・フュメは伝統的な産地。ロワールは北緯47度とフランスの中でも冷涼な気候なので、ハーブやホワイトペッパーなどが香る、気品ある辛口白ワインになります。日照量が多く華やかで明るいニュージーランドのSBと比較すると、その奥ゆかしさや繊細さは際立っています。

ロワール川の土壌は、石灰質土壌や牡蠣殻の化石を含んだキンメリジャン土壌、シレックス土壌といった特徴的な土壌で、これがワインの味わいに影響を与えます。シャブリにも似たミネラル感や火打石の香りをはっきりと感じられることも。火打石の香りを産むといわれるシレックス土壌を名前に冠したディディエ・ダグノーの「シレックス」というワインは歴史的な1本で、樽を使って熟成させた粘性の高い濃密な味わいは、ロワールのSBのイメージを塗り替えました。価格も約3万円と高級です。

ディディエ・ダグノー氏は“ロワールの鬼才・天才・異端児”などと称されましたが、2008年に飛行機事故に遭い52歳でこの世を去りました。以降は息子さんが跡を継いでいます。

●ボルドー
樽を使って熟成し、他の品種とブレンドするという製法をとっているのがボルドーです。特にボルドー左岸のペサック・レオニャン&グラーヴ地区は高級辛口SBの名産地。SBをセミョンとブレンドし、時に新樽を使いながら、樽発酵・樽熟成をしてコクのあるボリューミーなスタイルに仕上げます。そうして仕上がったSBは、白桃やパッションフルーツの華やかな香りに上品な樽香が融合した極上のアロマが特徴。味わいも優美です。

一方でボルドーの右岸、ガロンヌ川とドルドーニュ川に挟まれたアントル・ドゥー・メール地区のSBはタイプが異なります。単体でも、セミョンやほかの品種とブレンドすることもありますが、ステンレスタンクで短期間熟成された、すっきり爽やかな辛口タイプが主流になります。ボルドーは牡蠣が名産であり、フレッシュなSBに牡蠣を合わせるのは定番です。

ボルドーのSBは、世界最高峰の甘口貴腐ワイン・ソーテルヌにもひと役買っています。ソーテルヌの主原料は、セミョンという白ブドウ品種。このブドウは香りが華やかで粘性のあるワインを生みますが、いかんせん酸味が低いのがマイナスポイント。ここでSBの高い酸味と爽やかな香りが加わると、絶妙なバランスになるのです。

●ニュージーランド
南島にあるマールボロ地区が、NZ産SBの中心地。SBが初めて根付いたのが1973年と、歴史はまだ浅いのです。しかしNZ産のSBが知られるきっかけとなったのが、かの有名なクラウディ・ベイのSBでした。1985年に発売されるや否や、これまでのSBになかったトロピカルフルーツの香りと青いアロマが同居するという鮮烈なスタイルが、世界のワイン市場をあっと驚かせ、「世界がその白に目覚めた」とまでいわれました。

クラウディ・ベイのSBはマーケティング手法の巧みさもあり、爆発的なヒットに。今ではNZにおける全栽培面積の62%をSBが占めています。一方で生産者の間では、SBに頼りすぎる生産体制に疑問の声も。NZは自国のワイン消費が少なく、8割を輸出に頼っている国です。もしSBが飽きられてしまったら、NZのワイン業界はどうなるのでしょうか。

しかし、NZの生産者たちも工夫を重ねています。野生酵母で発酵させたものや樽発酵・樽熟成したものを作ってみたり、スパークリングワインに挑戦してみたりと、さまざまなSBを造り飽きさせない工夫を凝らしています。

●チリ
チリではSBが白ブドウの栽培面積トップを占めます。シャルドネに勝るというから驚きです。豊富な日照量に恵まれた地中海性気候であり、霧や海風、高い標高により昼夜の気温差が大きいため、SBの栽培に適しているのです。

沿岸部のカサブランカ・ヴァレーは上質なSBの名産地。特に冷たい海風が吹きつけるサン・アントニオの小地区レイダ・ゾーンは、「レイダといったらSB」というくらい有名です。

実は、1990年代にチリで植えられていたSBはソーヴィニヨン・ヴェール(ソーヴィニョナス)というアロマの乏しい変異種だったことがわかり、世界を驚かせました。19世紀にボルドーから苗木を輸入したときに一緒に持ち込まれ、混ざって植えられてしまったのが原因だといわれています。

●南アフリカ
南アフリカというと、まずシュナン・ブランが思い浮かぶという方もいるかもしれません。しかし、実はSBも栽培の歴史が古く、1880年代にはすでにコンスタンシアの畑に植えられていました。生産量もシュナン・ブラン、コロンバール(安ワイン用)に次ぎ第三位。しかもここ数年栽培量が年々増えており、コロンバールを抜きそうな勢いです。

南アフリカは、気温は高いのですが、冷たいベンゲラ海流と海風がブドウを冷やしてくれる気候が、SBに向いています。特にケープタウン地区のコンスタンシアやダーバンヴィルがSBの名産地として有名。標高が高く冷涼なエルギンも、プレミアムSBの産地として注目を浴びています。

●カリフォルニア
温暖な地中海性気候であるカリフォルニア。果実味豊かなSBを多く産出しています。

カリフォルニアのSBの歴史を変えた1本といえば、1967年、ロバート・モンダヴィがリリースした「フュメ・ブラン」です。熟成に樽を使い、アメリカ人好みの果実味あふれるふっくらクリーミーなスタイルに仕上げました。モンダヴィのマーケティングの才が光るのが、そのネーミング。「ソーヴィニヨン・ブラン」では覚えにくいと踏んだモンダヴィは、フュメ・ブランと命名。覚えやすく、かつフレンチらしいアクセントを加えた名前も功を奏し、アメリカで大流行したのです。

牡蠣だけでなく、
和食・エスニック料理とも相性抜群!

すっきり爽やかタイプのSBは、何年も寝かせて飲み頃まで待つ必要がありません。フレッシュでフルーティーな味わいは年月とともに失われてしまうため、むしろ早めに飲んだほうがよいのです。一方で、樽を使った複雑でコクのあるタイプのSBは熟成にも向きます。甘口ワインも熟成ポテンシャルが高く、極上の貴腐ワインなどは、なんと100年持つものも。

合わせるグラスはどうでしょうか。すっきり系のSBならば、小さめのスタンダードな白ワイングラスでOK。低め(7~10度)の温度できりっと爽やかに楽しみましょう。コクのあるタイプは、ボウル部分の大きいシャルドネグラスがおすすめ。温度も低めだと苦味が出てしまうので、10~13度程度が最適です。

マリアージュの基本は、地元の料理に地元のワインを合わせるということ。ボルドーの章で紹介した通り、SBと牡蠣は定番の相性です。「牡蠣にはシャブリ」というイメージがある方も多いかもしれませんが、シャブリ地区近くの、ミネラル感豊富なサンセールも牡蠣とよく合います。繊細な味わいのフランスのSBは、和食との相性も抜群! また、生春巻きのような野菜たっぷりのエスニック料理とも相性がよいです。フロマージュならば、ロワールのヤギのチーズ「シェーブル」がおすすめです。

味の選択肢が豊富で、さまざまなシーンで楽しめるSB。ぜひいろいろと飲み比べてみて、お気に入りのワインを見つけてみてください。


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