浮世絵の醍醐味を知る展覧会NHK大河ドラマ『べらぼう』で空前のブームに! 浮世絵の魅力と2025年おすすめ展覧会

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「東都名所 二丁町芝居図」歌川広重

浮世絵は江戸時代(17~19世紀)に日本で発展した大衆向けの木版画や絵画の様式。「浮世」とは「現代風」「当世」を意味し、人びとの日常生活や美意識を映し出した芸術として隆盛を極めました。海を渡った浮世絵は、19世紀後半に欧州で「ジャポニズム」ブームを巻き起こし、ゴッホやモネなど印象派の画家たちにも多大な影響を与えています。

Text&Edit:Fumihiro Tomonaga

創意あふれる手法が際立つ江戸のタイムカプセル

浮世絵の真髄といえば、まずはその鮮烈な色彩と独創的な構図です。特に「ベロ藍」と呼ばれる鮮やかなブルーや、自然由来の繊細な色合いは圧巻。さらに葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」に代表されるダイナミックな画面構成は、当時の西洋絵画には見られない革新的な表現でした。

そして、これらの浮世絵は、版元・絵師・彫師・摺師による共創の賜物。特に多色刷りの「錦絵」は、色ごとに版木をつくり、紙の位置を微妙にずらしながら重ね刷りするという驚くべき技術の結晶なのです。

また浮世絵は、江戸時代の生活や風俗を生き生きと伝える貴重な歴史資料でもあります。美人画を見れば当時の理想の女性像や流行の着物がうかがえ、風景画には現在も残る名所や、失われた街並みが描かれており、江戸の空気を現代に伝えてくれます。

主なジャンルと有名作家たち

では浮世絵には、どのようなものが描かれているのでしょうか。
美人画:江戸の町で人気があった遊女や町娘を描いたもの。代表的な作家は喜多川歌麿。繊細な線と優雅な表情で浮世絵美人画の第一人者としてその名を知らしめました。


8.「婦女人相十品 ポッピンを吹く娘」

「婦女人相十品 ポッピンを吹く娘」喜多川歌麿筆 大判錦絵 寛政4~5(1792~93)年頃 東京国立博物館蔵
*特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」 前期(~2025年5月18日(日))展示

役者絵:人気歌舞伎役者を描いた、いわば現代のタレント写真やポスターのような存在。東洲斎写楽はわずか10カ月の活動期間ながら、役者の個性を鋭く捉えた「大首絵」(上半身クローズアップの構図)を残した謎多き天才です。


17.重要文化財「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」

重要文化財「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」東洲斎写楽筆 大判錦絵 寛政6(1794)年 東京国立博物館蔵
*特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」 前期(~2025年5月18日(日))展示

風景画:名所旧跡や旅の情景を描いたジャンル。「富嶽三十六景」シリーズの葛飾北斎と、「東海道五十三次」で旅情あふれる風景を抒情的に表現した歌川広重が有名です。

「富嶽三十六景 武州玉川」葛飾北斎
「東海道五拾三次之内 藤枝 瀬戸川歩行渡」歌川広重

武者絵:伝説の英雄や歴史的な合戦を題材にした作品。ダイナミックな構図とユーモアあふれる歌川国芳の画風は、現代の漫画やアニメにも通じます。

「相馬の古内裏」歌川国芳

今後、日本国内で開催予定の浮世絵に関する展覧会

今年は浮世絵の魅力を楽しめる質の高い展覧会が全国各地で開催されます。実際に目の前で作品を観ると、印刷物や画面では伝わらない色彩の深みや版木の質感を体感できるはず。浮世絵があなたの想像以上に刺激的で革新性に満ちた芸術であることに、きっと驚かれることでしょう。

特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」

会期:〜2025年6月15日(日)
東京国立博物館 平成館
*会期中、一部作品に展示替えがあります。
江戸時代の出版人・蔦屋重三郎の業績を紹介。彼が手がけた浮世絵や書籍を通じて、江戸の出版文化の躍動感あふれる魅力をリアルに体感できます。

「大坂新町東ノ扇屋 花扇太夫」栄松斎長喜筆 大判錦絵 寛政(1789~1801)中期頃
東京国立博物館蔵
*後期展示

大阪・関西万博開催記念 特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

会期:〜2025年6月15日(日)
京都国立博物館 平成知新館
弥生・古墳時代から、日本の美術が異文化交流を通じてどのように発展してきたかを探る展覧会。浮世絵を含む多彩な美術品から、日本文化の多様性と融合の歴史をたどります。

「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」 葛飾北斎画 江戸時代 天保2(1831)年頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵
*前期展示(後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示)

「五大浮世絵師展-歌麿 写楽 北斎 広重 国芳」

会期:2025年5月27日(火)~7月6日(日)
上野の森美術館
美人画や役者絵、風景画といった各分野で人気を博した、江戸時代の浮世絵界の5大スターの作品が集結。彼らの作品約140点を展示します。5者5様の個性あふれる魅力が面白い。

江戸を彩った5人の浮世絵師たちの競演は圧巻。
「冨嶽三十六景 五百らかん寺さざゐどう」葛飾北斎(部分)/「小子部栖軽豊浦里捕雷」歌川国芳(部分)

「諸国漫遊 ~浮世絵の旅~」

会期:〜2025年7月13日(日)
静岡市東海道広重美術館
*会期中、一部作品に展示替えがあります。
歌川広重の作品を中心に、浮世絵1,400点を収蔵する美術館。令和7年度第1回目の企画展は江戸時代の旅への憧れを乗せた各地の名所絵を紹介します。

小展示室では旅に関する版本や旅道具も紹介。
Ⓒ Shizuoka City Tokaido Hiroshige Museum of Art

「べらぼうな浮世絵師18人展」

会期:~205年7月13日(日)
大阪浮世絵美術館
葛飾北斎・歌川広重・喜多川歌麿のほか、大阪や京都ゆかりの浮世絵版画を間近で鑑賞できる美術館。現在は、同館所蔵の名品から18人の絵師による54作品を公開中。ミュージアムショップも充実。

喜多川歌麿の大首絵「青楼遊君合鏡 玉屋内小紫 花紫」など12点が同館初公開。

「イマーシブシアター 新ジャポニズム ~縄文から浮世絵 そしてアニメへ~」

会期:~2025年8月3日(日)
東京国立博物館 本館 特別5室
縄文土器から浮世絵、名作アニメまで、1万年にわたる日本文化のタイムトラベル。横浜流星氏をナビゲーターに、NHKの最先端技術を用いて日本の至宝を大迫力の映像で魅せます。

NHKの高精細映像と技術を結集した新たなアート体験。

「動き出す浮世絵展」

会期:2025年6月28日(土)〜2025年8月17日(日)
福岡・JR九州ホール(JR博多シティ9階)
有名な浮世絵作品300点以上を3DCGアニメーションやプロジェクションマッピングで再現。これまでに国内外4カ所で開催され好評を博した、浮世絵を没入型のデジタルアートとして体験する企画です。

浮世絵の世界をイマーシブに体感できる貴重な機会。

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