吉田直樹の『アイアンショット・バイブル』
VOL.1 ボールを上げようとしていませんか?

Lifestyle

主に地面の上から打つことが多く、ライや芝の状況などにショットの成否が左右されやすいクラブがアイアン。でも、ボールに対してしっかりコンタクトするテクニックを身につければ、ミスが激減し、グリーンをとらえる確率も飛躍的にアップします。谷原秀人プロ、上井邦裕プロ、小祝さくらプロ、脇元華プロといったショットメーカーを指導する吉田直樹コーチが、あなたに理想のアイアンショットを伝授します!

撮影協力/アクアラインゴルフクラブ(アコーディア・ゴルフ)





「ボールを上げたい」気持ちは不要

アマチュアの方にとってアイアンショットを難しくしている原因は、ボールを高く上げたいという思いが先行していることです。
その結果、手の動かし方だったり手のポジションだったり、スイングの動作がプロとアマチュアでは大きく変わってしまいます。

基本的に、“ボールを上げたい”というマインドがアマチュアの方は非常に強いと思います。上がらないから悩み、さらに上げにかかってさらにひどくなる……こうした悪循環にも陥りがちです。また、上には上がるけど、前に行かない(=飛ばない)と嘆く方も少なくないようです。

典型的なケースが、池越えやバンカー越えの状況です。明らかに上げにかかってダフる、あるいはトップ、またはうまく上がっても距離が足りず、池やバンカーにつかまってしまう……。アマチュアの方によくあるパターンです。

目の前にバンカーがあると、越えようとしてボールを上げたくなってしまうマインドが、結果としてミスを招く

インパクトでロフトが寝るから飛ばない

女子プロよりも力が強いのに、成人男性のほうが飛ばないという事実があります。なぜだと思いますか?
女子プロが56度のウェッジで100ヤード飛ばすのに対し、成人男性が60〜70ヤードくらいしか行かないのは、当たり方や効率の違いにあります。

56度で100ヤード飛ばすには、ロフトを立てて当てなければいけません。56度でも、実際のインパクトでは46度くらいで当たっているわけです。一方、アマチュアの場合は56度のままで当たっている場合もあるし、あるいはインパクトロフトが58度とか60度に寝ている可能性もあります。

ラウンドレッスン中のことです。その生徒さんは普通のシチュエーションではちゃんと当たり、ボールも上がっていました。バンカー越えや池越えの状況になり、「課題は何ですか」と聞くと「こうやることです」と正しく答えてくれます。「じゃあそれだけ集中してやってくださいね」と私は念を押すのですが、その方はスイングに入った瞬間にもう忘れているんですね。そして、ボールを上げに行って、バンカーや池に入れてしまうのです。

私が「今、何考えました?」と確認すると、「いや、越えようと思ってました」。いざそういう状況になると、やるべき課題を忘れ、上げることを最優先に考える。アマチュアの方はそれくらい、プロに比べて「マインドセットが弱い」のです。

女子プロはロフトをインパクトで立てるので、56度のウェッジで100ヤード飛ばせる
アマチュアは逆にインパクトでロフトが寝てしまうため、同じ56度のウェッジでも60〜70ヤードくらいしか飛ばせない

クラブを「扱える」体勢を作ろう

プロとアマチュアの違いを簡単に言うと、プロは左足体重のアドレスで、ハンドファーストに構える。一方、アマチュアのほとんどの方がハンドレートに構えて、体重も右寄りになっています。

自分が先にいないと、モノを扱うのは難しい。キャリーバッグを持って移動する場合を想像してください。自分が前を歩いて、キャリーバッグを引くと歩きやすいですよね。でも、キャリーバッグを自分が後ろから押しながら歩く人はあまり見かけません。

このように、扱いたいモノよりも自分が先に行っていたら、モノを扱うことができる。ゴルフも一緒で、クラブよりも手が先行し(ハンドファースト)、重心も前に行く(左足体重)ことで、クラブを効率よく扱うことができるのです。

体(右寄り体重)も手(ハンドレート)もクラブより後ろにある構えでは、クラブを「扱う」のは難しい

次回からは、理想のアイアンショットについて詳しく解説していきます。

吉田 直樹(よしだ なおき)

幼少期から過ごしたアメリカ・ニューヨークでゴルフを始める。オーストラリアの大学で5年間、オーストラリア女子ナショナルチームのコーチに師事。その後、アジア、日本、アメリカでプロツアーを転戦しながら世界のトップコーチからレッスンを受ける。2014年、兵庫県芦屋市にインドアゴルフ練習場『ゴルフ ラ・キンタ』をオープン。現在は谷原秀人、上井邦裕、小祝さくら、脇元華など男女ツアープロを指導している。





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