吉田直樹の『アイアンショット・バイブル』
VOL.4 正しいテークバックについて(2)
主に地面の上から打つことが多く、ライや芝の状況などにショットの成否が左右されやすいクラブがアイアン。でも、ボールに対してしっかりコンタクトするテクニックを身につければ、ミスが激減し、グリーンをとらえる確率も飛躍的にアップします。谷原秀人プロ、上井邦裕プロ、小祝さくらプロ、脇元華プロらを指導する吉田直樹コーチが、テークバックの”正解”を2回にわたってお伝えします!
撮影協力/アクアラインゴルフクラブ(アコーディア・ゴルフ)
クラブを真っ直ぐ引こうとしない
VOL.3では、テークバックにおける体の動かし方を説明しました。
そして今回は、テークバックでの腕の使い方をお話ししていきたいと思います。
「ボールの延長線上にクラブを真っ直ぐ上げる」というレッスンを聞いたことがある方もいると思います。実際にそのように動かしてみると、写真のように手よりクラブヘッドが前方(ボール側)にあることになります。
そうではなく、手よりもヘッドが後ろ(背中側)にあるイメージを持ってください。そうすると、切り返した時にシャフトが綺麗にオンプレーン上に来るのです。
両腕を時計回りに回す
では、腕をどのように使えば、手よりもヘッドが後ろ(背中側)にくるのか。それには、腕を旋回、回旋させるのです。
下の写真を見てください。1枚目がアドレス、そして2枚目めがトップ。テークバックでの腕の動きはこれがすべてです。
両腕を上げながら、左腕も右腕も時計回り(自分から見て)に回す。この回旋だけの動きで、右肘は胸の前からほぼ動きません。
みなさんにとっては慣れない使い方だと思うので、ドリルをご紹介します。
まず、クラブをベルトの高さで構えます。右肘は胸の前に固定します。
そこから両腕の位置を上げ、腕を回してシャフトを地面と平行にします。
このとき、手首の動きは右手の甲が甲側に折れるのみで、「左手の縦コック」などを入れる必要はありません。
あとは、前回お伝えした体の動かし方を加えると、レイドオフになった正しいトップのポジションが完成します。
右肘のポジションが重要
このように腕を使うと、常に体の正面にあります。「ボールの延長線上にクラブを真っ直ぐ上げる」意識では、腕は体から外れてしまいます。
右肘は常にパンツの右ポケットよりも外(飛球線後方側)、かつ、セーターのシーム(前身頃と後ろ身頃の縫い目)よりも前(胸側)にある。これが正しいポジションです。
ところが、腕を大きく動かす人の右肘のポジションは、右ポケットよりも内側(飛球線前方側)に入り、そしてシームよりも後ろ(背中側)にきます。
このトップの形からダウンに移ると、体はインパクト手前まできても、体から離れた腕が遅れるので、クラブをキャスト(アーリーリリース)してボールに合わせるしかない。だからタメができず、すくいうちになってしまうのです。
一方、トップで右肘が正しいポジションにあれば、ダウンで同じように体を動かすと、自然にプロのようなタメができます。
多くのアマチュアの方は、腕が動いているぶんだけクラブも動いています。でも正しい使い方をすれば、クラブは大きく動いているけれど、手はあまり動いていない。テコの原理が発生し、効率がいいのです。
アマチュアのほうがよほど頑張って腕を振っているのに、軽く打っているプロはなぜあんなに飛ぶのか。その理由は、アマチュアは腕は走っているけどヘッドが走っていないから。効率が悪く、テコの原理を利用できていません。
キャストの動きが出るとすくい打ちになりますが、正しい動きであればハンドファーストで当たり、プロのようなロフトの立ったインパクトが可能です。
意識しなくても右肘は曲がる
右肘については、ポジションとともに曲げる角度も大切です。
ほとんどの方は、トップで90度曲がった右肘を目指すと思いますが、スイング中に勢い、遠心力がつくため、実際には60度だったり40度だったり、曲がりすぎてしまいます。
だから、150度とか160度くらい、少しだけ曲げるイメージを持ちましょう。それでも実際のスイングではきちんと90度になっているもの。最初から90度のイメージを持つと、遠心力でもっと鋭角になってしまいます。
吉田 直樹(よしだ なおき)
幼少期から過ごしたアメリカ・ニューヨークでゴルフを始める。オーストラリアの大学で5年間、オーストラリア女子ナショナルチームのコーチに師事。その後、アジア、日本、アメリカでプロツアーを転戦しながら世界のトップコーチからレッスンを受ける。2014年、兵庫県芦屋市にインドアゴルフ練習場『ゴルフ ラ・キンタ』をオープン。現在は谷原秀人、上井邦裕、小祝さくら、脇元華など男女ツアープロを指導している。