ゴルフメカニクス研究所大谷翔平の「目標シート」にも通じる、良いパフォーマンスを出すための「メンタルマネジメント」
ゴルフに関する様々な理論に精通するインストラクター・大庭可南太が、ゴルフでより良いパフォーマンスを発揮するための「メンタルマネジメント」について紹介する。
みなさんこんにちは。ゴルフインストラクターの大庭可南太です。さて先日はジョン・ラーム選手がLIV Golfへの移籍を発表し、来期はPGAツアーの主催競技には参加しない見込みとなりました。
一方、同時期に日本で話題となったのがMLB大谷翔平選手のドジャーズへの移籍です。
共通点はどちらも巨額のマネーが動いているということですが、こうしたトップレベルのアスリートがどのように考え、行動しているのか、またそれが実際のプレーのパフォーマンスにどのように結びついているのかについて、アメリカで研究されている内容について紹介したいと思います。
大谷翔平の「目標シート」
まず昨今「X(旧ツイッター)」などでも話題になっている、大谷翔平選手の「目標シート」なるものがあります。
中央に最終的な目標を挙げ(大谷選手の場合は「高校3年時に、8球団からドラフト1位指名を受ける」)、それを達成するための要素を8つに分解し、さらにそれを達成するためには何が必要かを考えるというものです。
いわゆる自己分析シートのようなもので、就職活動などのときに同じようなチャートを作って自己PRや志望動機を考えたという方は多いでしょう。ただ大谷選手の「目標シート」で興味深いのは、野球の技術面に関することだけではなく、「人間性」にまつわる要素が多く取り上げられている点です。つまり野球一辺倒の人間になっては行けないという戒めが込められています。
このスポーツのプレーのパフォーマンスに、それ以外の要因(人間性や生活環境)がどの程度関係してくるのかについて、アメリカではかなり広範なスポーツで研究がされているわけです。
サークル・オブ・パフォーマンス
今回紹介する「The Winning the Battle Within」という本は、ゴルフのみならずアメフトやバスケなどの団体スポーツも含め、トップアスリートがどのようにパフォーマンスを上げるための努力をしているかについて研究をしているもので、つまりメンタルタフネス寄りの内容です。
それによれば、高いレベルの選手がどんなことを重視して生活しているかを調べると、以下のような項目の「サークル」、つまりピザのような内容になったというのです。
ざっとその要素について紹介していきます。
(1)価値観
何を重視して、どのようなプレーヤーになりたいのか。あるいはなぜゴルフをするのか。
(2)装備・用具
どのような道具を使用し、その選択は目標達成に向けて合理的か。
(3)テクニック・スキル
目標達成に向けて、習得・鍛錬が必要な技術的目標が明確になっているか。
(4)食事・栄養
目標を達成するための体作りに向けて、必要な栄養を過不足なく摂取できているか。
(5) 学校・会社
自分の所属している学校や、会社などの組織において、要求される役割を果たしているか。また組織における他者との関係はどうか。
(6) メンタルゲーム
一つ一つのプレーに向けてのコミットメントをしっかり行っているか。集中力の欠如、あるいは無謀な目標設定を行っていないか。
(7)リカバリー
プレーをしていない時間に、休息や身体のケアを行うだけではなく、リフレッシュするための方法を持っているか。
(8) 関係性
近親者、あるいはパートナーとの関係性はどうか。支えてくれている近しい人物に対して、感謝と信頼などの感情を共有できているか。
(9)フィジカルコンディショニング
目標を達成するための体作りに向けた、効率的なトレーニングを継続して行えているか。
(10) 練習の品質(クオリティ)
限られた時間で最大の効果を出すために、練習の質と量についてどのように考えているのか。
(11)インナーゲーム
出た結果によって一喜一憂するのではなく、その結果が出るまでのプロセスをどのように評価するか。またそれを継続できているか。
(12) 指導者・インストラクション
すべての分野において、自分一人では考えが及ばない、あるいは結果が思わしくない場合に、適切な指導を受けることが可能か。あるいはどのようにしてそうした協力者を見つけるか。
重要なのは常に「バランス」について考えること
どうでしょう。表現は違うのですが大谷選手の「目標シート」となんか似ていると思うのは私だけでしょうか。
多くのスポーツでは、半年などのシーズン期間を通して安定したパフォーマンスを発揮しなければなりませんので、プレーをしていない時間の過ごし方も非常に重要になってきます。食事やトレーニングもそうですし、リフレッシュの方法も重要です。
さらに言えば、プロスポーツの選手といえども、そのスポーツ以外のことは何もわからないということになると、その人生そのものに不安を覚える場合だってあるでしょう。
つまり有限の時間を、「どのような『バランス』で過ごしながら自分の目標に近づくのか」を常に考え続ける能力がトップアスリートには必要であり、またそうしたことから実際のプレーにおけるメンタルの強さが生まれてくる……ということが統計上わかってきたというのです。
そのように書くと、とてもレベルの高い話のように感じるのですが、こうした「バランス」の感覚というのは一般アマチュアでも当てはまるところがあるように思います。
例えば日曜日がゴルフならば、土曜日は家族との時間を多めに取るとか、前日早く就寝するために金曜日に飲み過ぎないとか、そういったことを考えることで安定してゴルフを続けることができるということはおおいにあり得ます。
あるいは目標とするスコアに向けて、ショットとパットがどのようなバランスになるのか、そこでロングゲームとショートゲームとパッティングの練習比率はどのようにあるべきかといった、技術面を各要素に分解して考えるというのも良いでしょう。
「自分はメンタルが弱くて練習通りの結果が出せない」という方は、闇雲に練習するだけではなく、生活における様々な要素について考えて見るのも良いかも知れません。