深くて広い“ギアの世界”に最適解堀越良和の「クラブ選び、もう迷わせません」vol.3
~14本のクラブセッティングについて~
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スウィング向上とともに、スコアアップに欠かせない「自分に合ったクラブ選び」。とはいえ、巷には新製品があふれていて、正解にたどり着くのが難しい。また、各メーカーが特長に挙げるクラブ用語についても、一般アマチュアは知っているようで実はあまり知らなかったりする。クラブに精通する堀越良和プロにわかりやすく解説してもらい、「自分に合ったクラブ選び」をマスターしよう。
撮影協力/クレアゴルフフィールド
100ヤード以内をどう攻めるか
ルール上、ラウンドに使用できるクラブは14本以下と定められています。
そこで重要になるのが「14本のセッティングをどう考えるか」です。
「ドライバーを他人より飛ばしたい。とにかくグリーンのそばに行かせたい。スコアはその日のボールの気分次第」というような方は上のほう(フェアウェイウッド【以下、FW】やユーティリティ【以下、UT】)が厚くなる(本数が多くなる)のでしょうが、ゴルフの本質は自分が計算したところに止めるスポーツですから、そうするとグリーン周りから遡って考えていく。上手になればなるほど「グリーン・トゥ・ティー(ラウンドにおいてティーショットは14回しかないので、スコア向上にはパーオン率やアプローチの精度を高め、パット数を減らすことを最重視すべき)」なのです。
エンジョイゴルファーであれば「ティー・トゥ・グリーン」でいいのかもしれませんが、スコアを1打でも削ろうと思ったら、まずグリーン周りのことを考える。そうすると下の番手、ウェッジを何本入れるのかが重要になります。
自分の回るコースがどういう状況が多いか。砲台グリーンだとか、逆に河川敷のようなフラットなコースだとか。フラットなコースなら長いクラブが多いほうがグリーンのそばまで行くという可能性ももちろん出てきますが、結局そこからはグリーン周りなので、100ヤードから何打で上がれるかをまず考えてセッティングするのが、スコアアップの決め手だと思います。
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バウンスにも変化をつける
基本的なウェッジのセッティングとしては、ストロングロフトのピッチングウェッジ(PW)が44度前後なので、4度ピッチ(刻み)で48度、52度、56度になります。
考慮すべきはロフトだけではありません。
フェアウェアが硬いゴルフ場であれば、ソールのバウンスの少ないウェッジが有効ですし、砂がフカフカなバウンスが多いサンドウェッジもほしい。
ホームコースがある方も他のゴルフ場を回ることもあるでしょうし、そうすると柔軟に富んだウェッジのバリエーションは必要だと思うので、ローバウンスとハイバウンスを1本ずつ入れたい。
バウンスを同じ数字で揃えようとする方がいます。56度が12度のバウンスだったら、52度、48度もハイバウンスで行こうとするのですがそうするとロフトが変わるだけなので、いろいろなシチュエーションに対応できにくくなってしまいます。
なので、例えば1番ロフトのあるクラブが58度で、14度のハイバウンスとします。
そうすると、58度の次の54度はミッドバウンスの8〜10度を入れてみる。50度くらいになってくると6度とか8度くらい。サンドウェッジ、ロブウェッジと言われているクラブは、「ミッドバウンスとハイバウンス」もしくは「ローバウンスとハイバウンス」というように、バウンスにちょっと階段をつけたほうがいいです。
そのゴルフ場の砂が硬めの砂だったらローバウンスのほうがバンカーから出しやすいし、柔らかめならハイバウンスのほうが楽に出る。ロフトだけでなく、バウンスでも使い分けられるので、100ヤード以内のゲームの組み立てがしやすくなると思います。
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FWか、それともUTか
ウェッジの上にくるアイアンについては、最近の女子プロは減らしていて、5番まで入っている選手はあまりいません。それだけFWやUTの重要度が高まっているといえます。
FWとUT、どちらを入れるべきか。一概にはなかなか言えない難題です。
UTといってもアイアン型があれば、FWの縮小版みたいなモデルもあります。
一般論で言うと、同じロフト21度のFWとUTがあったとすると、長さはUTのほうが1インチは短い。だからといって、「FWが苦手だから短いUTで捕まえていこう」という単純な話ではなくてどちらが絶対的にミスに強いのかといえば、FWのほうなのです。
ミート率は短いほうがいいかもしれませんが、長いほどヘッドスピードも上がるわけですから、FWはフェースとボールがコンタクトさえしてくれれば球が上がってくれます。
球が上がるということが1番重要なので、試打するときには同じロフトだったらまずFWから打ってみてください。
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番手選びについては、「よく行くゴルフ場」を基準にするのもいいでしょう。210〜220ヤードの長いパー3があったとして、ドライバーの飛距離が250ヤードくらい出る方であれば、16.5度とか15度の3Wでグリーンに乗る可能性があります。乗らないと池に入ってしまうとか、キャリーが出れば何とかなるのであれば、そのホール対策で1本入れることは十分あり得るわけです。
また、シャフト重量も重要な問題です。FWやUTのほとんどが、プロパーのシャフトは50グラム台です。
それだとスプーンもUTも50グラム台になってしまうので、スウィングの安定性が損なわれるという弊害があります。
例えばドライバーが50グラム台だったらFWは60グラム台、5番とか7番ウッドは70グラム台、UTが70〜80グラム台といった感じにちゃんとシャフトの重さの階段を作りましょう。
「FWは得意だけどUTは…」(その逆も)という方、実はシャフトのフローを無視していることに原因があることも少なくありません。一度チェックしてみることをおすすめします。
FWとUTのセッティングは、ここに挙げた情報も頭に入れながら、「何が必要か」という観点で考えたほうがいいと思います。
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堀越良和(ほりこしよしかず)
某ゴルフ雑誌社で四半世紀にわたり試打企画を行っており、「キング・オブ・試打」のニックネームを持つ。ゴルフスウィングと人体に関する研究に特化した世界有数の教育機関である「TPI(タイトリスト・パフォーマンス研究所)」の最高位「ゴルフレベル3」を取得。クラブメーカーの開発に携わった経験もある。(公社)日本プロゴルフ協会会員。クレアゴルフフィールド所属。