元プロコーチ&ゴルフ記者
“二刀流”中村修が見た女子ツアー最前線Vol.6
~2025年 女子ツアーで見た新作ギア~

昨シーズン、年間を通じて桑木志帆のコーチを務め、さらには「みんなのゴルフダイジェスト」特派記者も務める「二刀流」のプロゴルファー、中村修プロ。2023年オフから指導した桑木は、24年6月の資生堂レディスでツアー初優勝を挙げ、8月のニトリレディスで今季2勝目、さらにツアー最終戦のリコーカップでは3勝目とメジャー初制覇も成し遂げた。2025年シーズンは特派記者として国内女子ツアーで活動する中村に、女子ツアーで目にした最前線の話題を伝えてもらう。
海外ブランド3社 新作ドライバーたちの存在感
25年開幕戦のダイキンオーキッドレディス、第2戦のVポイント×SMBCレディスを取材してきました。
選手たちがどのようなクラブで新しいシーズンに臨んだのかについてレポートしたいと思います。
ドライバーでは、「ELYTE(エリート)」(キャロウェイ)、「Qi35」(テーラーメイド)、「G440」(ピン)と今年モデルチェンジした3社のニュークラブを手にする選手が目につきました。それに加えて、「GT」(タイトリスト)シリーズを使う選手も、去年から引き続き少しずつ増えてきています。
外ブラばかり並びますが、スリクソンは昨年ニューモデルを出していて、多くの選手が昨年の段階で変更済み。ブリヂストンもアイアンのリリースは昨年なので、「オフの間に新しいモデルを試して25年シーズンに投入」という意味ではテーラーメイド、ピン、キャロウェイの3社が中心になります。
テーラーメイドでは新垣比菜選手、山路晶選手などが新しい「Qi35」を使っていました。フェアウェイウッドもユーティリティも替えているので、多くの選手が前のモデルからスムーズに移行しているようです。
スタンダードモデルを使う新垣選手のコメントです。
「本当に操作性がよくて、でも操作性がいいわりにやさしくまっすぐ飛んでくれる」
新垣選手は基本ドローなんですが、コースではフェードを打つこともあります。「フェードも打てる」とも言っていたので、本当にやさしいクラブなんだと思います。

Qi35は、ソールの手前と後ろにあるウェートを調整できるようになっていて、調整の仕方は聞くと人それぞれ。前側を重くする選手もいれば、後ろ側を重くする選手もいます。
例えば、後ろ側を重くすると、ちょっとロフトがつきやすくなるので、それを使って球を上げたい選手はそのように調整します。
また、ロフトの多いヘッドを選んで前側を重くすることで、ロフトで球を上げながらスピン量を減らしたいと考える選手もいます。
契約外選手も続々とPING「G440」にチェンジ
ピンのG440も、ドライバーは鈴木愛選手も替えていましたし、フェアウェイウッドも替えている選手も多いです。
G430シリーズも好評でしたが、パッと替えるくらいニューモデルがさらにいいということなのでしょう。
ピンというメーカーはもともと、「前作を超える性能じゃないと出さない」という方針。会社が上場していないため、ステークホルダーを気にせず、自分たちのやりたいようにやれるという強みがあります。
「新製品を毎年出せ」みたいに要求されることもないからこそ、こだわったもの作りができるのです。
そのピンが昨年のG430 MAX 10Kに続いてG440を今年出してきたのは、よほどいいものができたという自信の現れでしょう。
特長としては、「曲がらない」「やさしい」印象があるピンですが、さらに打感が少し柔らかくなったこと。また、ややフェースが薄くなったりして、飛距離も訴求しているところが大きいと思います。
契約外では、藤田さいき選手や蛭田みな美選手がG440を使っていましたし、ほかにもG430からG440に替えていた契約外の選手がいました。
蛭田選手は、ピンの契約なんじゃないかというくらい、ほぼ全部ピン。アイアンもウェッジもピンで、パターだけはテーラーメイドの「スパイダー」を使っていました。

エリートに関しては、もっともスピンが少ない「◆◆◆(トリプルダイヤモンド)」というモデルが、実はツアーではさらに4種類あります。
スピンが少ないトリプルダイヤの中でも「◆◆◆ MAX」「◆◆◆ TD」「◆◆◆ T」など、慣性モーメントが大きいもの、小さいもの、ディープフェイスのもの、ちょっと小ぶりのものがあって、選手たちはその中からチョイスしています。
使用率でいうと、契約選手の数でスリクソンがやはり多いと思いますが、その中でピンとタイトリストは徐々に増えてきている印象です。

スコッティキャメロンが女子ツアーに浸透中
パターで注目を集めたのは、スコッティキャメロンの「スタジオスタイル」(タイトリスト)です。
キャメロンは去年から女子プロにもパターの提供を始めています。「サークルT」のような、ツアー用にキャメロン氏が自分で作ったものではなく市販モデルですが、新しく今回発売された「スタジオスタイル」を、多くの選手が手に取ってテストしていました。
「インサートが変わったキャメロンが今週から女子ツアーで手渡されて、練習日に打った感触がすごくよかったのでそのまま使うことにしました」
と話していたのは青木瀬令奈選手。Vポイントの練習日から変更し、初日は首位スタートでした。
今まで、キャメロンといえばステンレスの削り出しでしたが、今回はフェースに軟鉄をインサートしています。
それにより打感がステンレスよりも少し柔らかくなりました。
「もともとキャメロンは打感が硬めなので、打った感じはとてもいいんですけど、『あっ、ちょっと待って!』って感じでボールがグングン転がって行ってしまっていたので……。インサートを変えることで初速が抑えられてゆっくり転がってくれて、今週のグリーンに合うなと思いました」(青木)
スリクソンでいうと「Z-STAR XV」、タイトリストなら「V1x」、ブリヂストンの「TOUR B X」。ちょっと硬めのボールを使っている選手は、打感がすごく柔らかくなって、感触がよくなったと感じているようです。
デザイン的には、シルバーと黒のコントラストが入ったモデルもありました。視覚的な効果もしっかりあるみたいで、「構えやすい」という声も聞きました。


中村修(なかむらおさむ)
1968年、千葉県出身。26歳でゴルフを始め、2005年に日本プロゴルフ協会(PGA)入会。PGAティーチングプロB級会員。桑木志帆のコーチとしての実績を持つ傍ら、「みんなのゴルフダイジェスト」特派記者としても活動する。
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