Island Hopping今こそ、知られざる秘境へ
バーチャルアイランドツアー

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梅雨が明け、空高く広がる入道雲の間から太陽が照りつける季節が到来しました。いまだパンデミックが収まらない中、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界遺産に登録され、バケーションの旅先として島の人気が高まっています。そこで今回、数多ある日本の島の中から、なかなか訪れることができない秘境の名にふさわしい島々を、旅行した気分に浸れる写真とともにご紹介。いつかは行ってみたい旅先候補として、ぜひ目にとどめておきましょう。

多様な海に囲まれた島国ニッポン

原始の自然に生きる動植物のプリミティブな姿に出会える世界自然遺産、知床半島から望み、冬には幻想的な流氷の銀世界が広がるオホーツク海、打ちよせるダイナミックな波に詩情を感じる日本海。そして世界最大の海洋に雄大なロマンを感じる太平洋、透き通る海と水平線に沈む夕陽に心を奪われる東シナ海――。それぞれ四季折々で表情を豊かに変える大海に囲まれた島国、日本には6852もの島があります。

幻想的な朝焼けの利尻島

その中から、眺めているだけでも涼感と旅心を喚起し、世界に平穏が訪れた際には、一度は足を運んでみたい個性豊かな島を紹介します。

一度は訪れたい個性豊かな日本の島5選

エメラルドグリーンの海が輝く“奇跡の無人島”
[沖縄県/ナガンヌ島]

サマーバケーションの旅先として定番である沖縄の離島の中で“奇跡の無人島”と呼ばれているのが、ナガンヌ島です。那覇市から西に約40kmの東シナ海に点在する、大小20余りの島々からなる慶良間諸島。その入口にあるチービシ環礁の一番大きな島であるナガンヌ島は、珊瑚や貝のかけらでできたコーラルサンドで形成され、水道や電気などのライフラインのない、まさに原始の島です。日本の最南端にある秘境とは、果たしてどんなところでしょうか。

その魅力は、なんといっても世界有数の透明度と称されるエメラルドグリーンの海。白砂の海岸から広がる神秘的な翡翠色の海面は青く澄みわたる空とグラデーションをなし、日が沈む時間にオレンジサファイヤを思わせる夕陽が一面をドラマティックに彩る光景は、息をのむほどの美しさ。

島内にはモンバリキやヤシ、アダンなどの亜熱帯植物が自然のままに自生し、稀少な夏の渡り鳥、紅アジサシをはじめとした海鳥やウミガメ、砂浜に生息するオカヤドカリなどの生き物が豊かな生態系をつくっています。また、周辺海域では珊瑚礁に群がるエキゾチックな熱帯魚が生息し、シュノーケリングやダイビング、オーシャンウォークでその世界に没入できます。

日本有数の透明度を誇るオクシリブルー
[北海道/奥尻島]

北海道の南西端に位置し、「向こうの島」を意味するアイヌ語「イクシリ」に由来する奥尻島は、手つかずの大自然が広がる離島。とりわけ水深25mの透明度を誇り、オホーツク海を臨むコバルトブルーの望洋たる美景は“オクシリブルー”と称され、国内外のトラベラーを魅了しています。海上から反り立つ岩山は人を寄せ付けない荘厳な雰囲気が漂い、秘境のムードを盛り立てます。

奥尻島の歴史は古く、7000年前の縄文時代にまでさかのぼる

周囲84kmにも及ぶ島の周囲には奇岩や岩礁が多数あり、その中でもシンボルとされているのが「鍋釣(なべつる)岩」。悠久の昔、自然の浸食によりユニークなアーチ状になった奇岩は、夜にはライトアップされ、陽が昇る時間帯には神々しい姿が鑑賞できます。

奥尻島は毎年5月1日が“島開き”が行われ、観光シーズンがスタート。海岸線を自在にゆったり楽しめるシーカヤックをはじめ、心地良い風を体感するウィンドサーフィン、ロマンティックな夕景にとけこむSUP、そして島全体が好釣り場であり磯、陸、丘、船とあらゆるスタイルで満喫できるフィッシングなど、多彩なマリンレジャーが楽しめるのも見逃せません。

シーカヤックなどで島めぐりをするアイランドホッピングも昨今の流行

“東洋のガラパゴス”の中で最も美しい秘境
[東京都/南島]

東京都から約1000km離れた南南東の太平洋上に位置し、はるか太古から独自に進化した生態系があることから“東洋のガラパゴス”といわれている小笠原諸島。構成する30余の島々の中で、南島はアクセスが困難なことから島旅フリークの間でも秘境と呼ばれています。約5000万年前から2000万年前にかけての海底火山噴出物と、それに伴う砂岩や石灰岩などの堆積層から構成される小笠原諸島の中でも、南島は世界でも珍しい沈水カルスト地形が形成され、島自体が国の天然記念物に指定されています。

南島は入島制限で島の自然が守られている。

小笠原諸島の玄関口、父島からさらに船に乗って辿り着く無人島への上陸は、必ず東京都の認定ガイドの同行が必要。島に上陸できるのは11月〜2月以外の期間で1日100人まで、滞在時間は最大2時間という厳しいルールが設けられています。

島のみどころは、中央にある入り江の扇池。ターコイズブルーに輝く景観は風光明媚なことこの上なく、忘れられないシュノーケリング体験ができます。タヒチのビーチを思わせる砂浜の丘にはアオウミガメの産卵場所があり、ミズナキドリやカツオドリが営巣するなど、貴重な生き物たちが観察できることも。また、1000〜2000年前に絶滅したヒロベソカタマイマイの半化石がちりばめられた不思議な光景に、太古の歴史が感じられます。

知られざる無人島の異世界
[和歌山県/友ヶ島]

友ヶ島は、和歌山県と兵庫県淡路島の間の紀淡海峡に浮かぶ沖ノ島、地ノ島、虎島、神島の総称。4つの小さな島からなる無人島群は、知る人ぞ知る南国の別天地として近年コアな人気を集めているスポットです。その情報の少なさから、秘境トラベラーですら、まだ訪れた人が少ない島でもあります。

その中でも、旧日本軍の軍用地として使用されていた第二次世界大戦後まで一般人が立ち入ることができず、1990年代初頭まで電気を自家発電でまかなっていた沖ノ島は、まさに未開の地。6ヶ所の砲台跡や軍馬舎、将校官舎など往時の面影を色濃く残した情景は、ファンタジー映画の世界そのもの。鮮やかな緑の森に覆われた煉瓦建の要塞を眺めながら島内に張り巡らされた軍用道路をトレッキングしていると、中世ヨーロッパの異国に迷い込んだような気分が味わえます。

砲台跡の中でも最大規模の第3砲台跡

世界遺産のインダストリアルな異空間
[長崎県/端島]

長崎半島沖に浮かぶ端島は、島のほとんどが埋め立てによって造られた人工島。島全体が大正時代に長崎の三菱重工造船所で造られた戦艦「土佐」に似ていたことから“軍艦島”と呼ばれるこの無人島は、「明治日本の産業革命遺産である製鉄・製鋼・造船・石炭産業」という世界文化遺産に登録された産業遺産群のひとつであり、平成の時代にフォトグラファーの間で巻き起こった廃墟ムーブメントの聖地とされています。近年は映画のロケ地になったりと、メジャーな島の印象もありますが、圧倒的な規模感と廃墟の雰囲気が独特で、秘境トラベラーから愛されている島でもあります。

島に降り立つと目の前に広がるのは、ハリウッド大作の舞台のようなインダストリアルな異空間。明治維新直後に炭坑で栄えた端島は、当時の東京23区の9倍にも及ぶ、世界で最も人口過密なコミュニティが形成され、大正時代には国内初の鉄筋コンクリートの高層住宅群や小中学校、映画館まで建設された最先端の都市でした。

重化学工業の主要エネルギーが石炭から石油に変わったことで衰退し、1974年に炭坑が閉鎖され住民は島を去りましたが2000年代に日本近代化の遺構として注目を集め、現在は観光上陸が可能になり、文明開化の足跡を圧倒的な建築群で伝え続けています。

新しい日本の世界遺産が誕生

数ある日本の島の中でも、マングローブをはじめとした亜熱帯の原生林に覆われ、数多くの絶滅危惧種が独自の生態系を形成している沖縄の西表島と鹿児島の奄美大島。その二島に徳之島、沖縄島北部を加えたエリアが2021年に、国内24件目の世界遺産として登録され再び注目を集めています。

マングローブの森が広がる西表島の海

島の90%が亜熱帯の森が覆い、イリオモテヤマネコやカンムリワシ、セマルハコガメなど天然記念物が生息する“日本最後の秘境”西表島、そして多様性と稀少生を併せ持ち、世界に誇る豊かさを持つ森と美しい珊瑚礁が広がる奄美大島は、ダイビングをはじめ、カヤックでのジャングルツアーやウミガメと遊泳するシュノーケリング、原生林を体感できるトレッキングなど、多彩なアクティビティで幻想的な世界が堪能できます。

海外に行かずとも満喫できる、日本ならではのバラエティ豊かな島々を訪れ、ひと夏の思い出をつくってみてはいかがでしょうか。

【スポット情報】

●沖縄県/ナガンヌ島
http://nagannu.com/index.php

●北海道/奥尻島
http://unimaru.com

●東京都/南島
https://www.ogasawaramura.com

●和歌山県/友ヶ島
https://www.wakayamakanko.com/sightseeing/nature2.html

●長崎県/端島
https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/51797

●沖縄県/西表島
https://iriomote.com/top/

●鹿児島県/奄美大島
https://www.amami-tourism.org

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