Local efforts in Kyoto 01国内外からの移住者が
新しい文化・伝統を"編む"京都へ
【PART1】
Text:Haruko Hamahori
Photo:Shinichi Kimura

Travel

日本の伝統文化が脈々と息づく国際都市・京都市。この地に魅せられ移住した人びとがムーブメントを起こす新スポットを、自身もまた10年前にUターンして以来、京都のまちづくりやコミュニティづくりに関わる地域プロデューサー・田村篤史さんが訪ねました。

巡る人
地域プロデューサー
田村篤史さん

1984年京都府生まれ。2012年にUターンし、2015年ツナグムを設立。移住促進やまちづくり、コミュニティづくり事業を展開。2020年、京都信用金庫と共同出資で新会社Q’sを設立し、コミュニティキッチン「美食倶楽部」などの事業を開始。

全国の茶農家を訪ね集めた
オーガニックな茶を伝承

京都府のなかでも神社仏閣や風情ある街並み、伝統産業が多く受け継がれる京都市。待機児童が8年連続ゼロを達成(2021年4月1日現在)など住みやすい街としても注目され、ふるさと納税を活用した電子ポイント「電子感謝券」の導入など、交流人口増加にも積極的だ。
この京都市を拠点に活動する地域プロデューサー・田村篤史さんがまず訪れたのは、2020年8月に烏丸通沿いにオープンした日本茶専門の「茶ノ実鶴園」。遠州流茶道の師範であり、ベルギー人初の日本茶インストラクターでもある茶人・ティアス宗筅(そうせん)さんが、日本茶体験や抹茶の点て方レッスン、茶会などから国産オーガニック茶葉の取り扱いまでを提案している。

右上から時計回りにワイルドかぶせ茶(京都府加茂町)、べにふうき緑茶(奈良県月ヶ瀬)、宇治田原有機玉露(京都府宇治田原町)、べにふうき和紅茶(福岡県八女市)。

ベルギー人茶人が探究する茶乃湯文化を
京都から国内外へ発信

「日本文化の集まっている地が京都だと思い、2008年に日本へ留学して以来、ずっとこちらです」。ティアスさんは母国ベルギーで剣道を習っていた10代の頃、師範に薦められた宮本武蔵の小説に感銘を受け、来日を決意。その後は武道や能楽などさまざまな日本文化に触れ、茶道にたどり着いたという。
「茶道は衣食住をはじめとした日本文化が凝縮しています。ひとつ新しいことを学ぶと、10のわからないことが生まれます。そのような茶乃湯は、まるで日本文化の小宇宙です」

気になる茶葉は奥のテーブル席で試飲も可。

ティアスさんは日本茶の歴史や栽培についても造詣が深く、全国の茶農家を訪ね歩いては、自然栽培や無農薬栽培を生産地で学び、有機栽培においても育て方の違いや気候風土などを見極めるようになったという。その学びを伝えるべく、茶道の師範としてオンライン講座でも世界各地に生徒を抱え、茶乃湯文化の魅力を広く、正しく、長く後世に伝えたいという熱き思いを胸に活動を続けている。

店舗2階の茶室では、未経験者も参加できる茶乃湯プライベート茶会(完全予約制)を実施。

ティアスさんのお茶を味わった田村さんは、「美味しい。お茶処京都の価値を再発見でき、日本人が忘れている心に気付かされたひとときです」と頷いた。

文献で見つけた「茶ノ実鶴」の紋様をロゴに採用。町家を改装した建物は、京都の街並みに調和する。
施設情報
茶ノ実鶴園

住所:京都府京都市上京区春日町424-2
定休日:日~水曜 
https://www.the-tea-crane.com/jpn/

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